[PH-7-4] 心理教育によるセルフスティグマに対する効果
【はじめに】
偏見や差別的な態度のことをスティグマという.スティグマは,人々から軽視され社会に受け入れられないという特徴を持つ(山田,2015).精神障害に対するスティグマは深刻な社会問題であり,スティグマ低減のため障害者差別解消法,精神障害者雇用義務化,障害者権利条約の批准等により,精神障害者に対するスティグマ対策がなされてきた.これら社会的なスティグマに対し,精神疾患患者自身がもつスティグマはセルフスティグマと呼ばれ,患者自身の疾患回復の重大な妨害要因となる(Holmesら,1998).
治療の妨げとなるセルフスティグマであるが,これを低減させる方法として心理教育があげられる.これまで,心理教育による再発防止に向けた服薬アドヒアランスの改善報告は数多くみられるものの,2022年9月に検索した結果では,医学中央雑誌には5件と心理教育とセルフスティグマに着眼した報告は少ない.そこで,今回,入院中の統合失調症患者に心理教育を実施し,セルフスティグマの変化をみたので報告する.
【対象と方法】
対象は平成30年10月~令和4年8月までに医師の指示があった入院中の統合失調患者6名である.統合失調症の心理教育は『全家連「あせらずのんびりゆっくりと」当事者版テキスト』を参考にオリジナルのテキストを作成した.セッション1『病気の原因と回復について』『症状について』セッション2『薬の作用と上手な付き合い方』『薬の副作用について』セッション3『再発予防について』セッション4『障害とリハビリテーション』『よりよい生活のために』全4回を実施した.
統計処理ソフトはStat Viewを使用し,Wilcoxon符号順位検定を行った.対象者には,検査および研究の趣旨を説明,書面にて同意を得た.
本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認(2021-05-01)を得た.なお利益相反は無い.
【結果】
LINKスティグマ尺度の平均点は介入前32点,介入後27点で有意差がみられた(p<0.05).
【考察】
我々が実施した心理教育も正確な知識を提供することを前提として,その対象者の訴えや悩みを受容・共有する姿勢を心がけた.「幻聴のことをあまり言えなかった」や「薬を自己調整していた」など,これまで診察の場面や主治医には言えなかったという想いや言動を耳にすることができた.心理教育で疾病管理を行いつつ,自身の病気に向き合う機会と,それを受容するスタッフがいるクローズドな場が,これらの発言を生んだのかもしれない.対象者は感想として「話を否定せずに聞いてくれて嬉しかった」「病気と向き合えるようになった」と心理教育をポジティブに捉える意見が聞かれた.このような自身の想いを語る場がスティグマの軽減に繋がったと思われる.
偏見や差別的な態度のことをスティグマという.スティグマは,人々から軽視され社会に受け入れられないという特徴を持つ(山田,2015).精神障害に対するスティグマは深刻な社会問題であり,スティグマ低減のため障害者差別解消法,精神障害者雇用義務化,障害者権利条約の批准等により,精神障害者に対するスティグマ対策がなされてきた.これら社会的なスティグマに対し,精神疾患患者自身がもつスティグマはセルフスティグマと呼ばれ,患者自身の疾患回復の重大な妨害要因となる(Holmesら,1998).
治療の妨げとなるセルフスティグマであるが,これを低減させる方法として心理教育があげられる.これまで,心理教育による再発防止に向けた服薬アドヒアランスの改善報告は数多くみられるものの,2022年9月に検索した結果では,医学中央雑誌には5件と心理教育とセルフスティグマに着眼した報告は少ない.そこで,今回,入院中の統合失調症患者に心理教育を実施し,セルフスティグマの変化をみたので報告する.
【対象と方法】
対象は平成30年10月~令和4年8月までに医師の指示があった入院中の統合失調患者6名である.統合失調症の心理教育は『全家連「あせらずのんびりゆっくりと」当事者版テキスト』を参考にオリジナルのテキストを作成した.セッション1『病気の原因と回復について』『症状について』セッション2『薬の作用と上手な付き合い方』『薬の副作用について』セッション3『再発予防について』セッション4『障害とリハビリテーション』『よりよい生活のために』全4回を実施した.
統計処理ソフトはStat Viewを使用し,Wilcoxon符号順位検定を行った.対象者には,検査および研究の趣旨を説明,書面にて同意を得た.
本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認(2021-05-01)を得た.なお利益相反は無い.
【結果】
LINKスティグマ尺度の平均点は介入前32点,介入後27点で有意差がみられた(p<0.05).
【考察】
我々が実施した心理教育も正確な知識を提供することを前提として,その対象者の訴えや悩みを受容・共有する姿勢を心がけた.「幻聴のことをあまり言えなかった」や「薬を自己調整していた」など,これまで診察の場面や主治医には言えなかったという想いや言動を耳にすることができた.心理教育で疾病管理を行いつつ,自身の病気に向き合う機会と,それを受容するスタッフがいるクローズドな場が,これらの発言を生んだのかもしれない.対象者は感想として「話を否定せずに聞いてくれて嬉しかった」「病気と向き合えるようになった」と心理教育をポジティブに捉える意見が聞かれた.このような自身の想いを語る場がスティグマの軽減に繋がったと思われる.