[PH-8-2] 精神科作業療法士が統合失調症患者を対象に行う食事に関連した作業療法
【背景】
精神科病院の入院患者において精神科作業療法士(以下,OTR)の主たる患者である統合失調症患者は摂食嚥下機能障害を背景とした誤嚥性肺炎や窒息事故が多く,その原因には早食いや盗食などの特徴的な食行動が関連していることも報告されている.一方,精神科病院でリハビリテーション(以下,リハ)を担っているOTRによる調査,介入等の報告はほとんど見られない.
本報告は精神科病院に勤務するOTRを対象に行った調査である統合失調症患者を対象とした摂食嚥下リハの実施状況からその一部である統合失調症患者を対象とした食事に関連した作業療法の実施内容について分析したものである.
【目的】
精神科作業療法に従事しているOTRが統合失調症患者に対してどのような食事に関連した作業療法を実施しているのかを明らかにすることである.
【方法】
公益社団法人 日本精神科病院協会に加盟している病院・施設に勤務するOTRを対象にwebアンケートを実施した.分析対象とした質問内容は「統合失調症の方の食事に関連した作業療法,あるいは食事に関する家族への指導などの関りを実施していれば具体的にお答えください」とした.分析手法は記述統計と質的手法を用いた.テキストデータである「実施内容」については,共同研究者(10年以上の経験を有するOTR)とともに熟読し,類似した意味内容ごとにカテゴリー化を行った.尚,本研究の実施は文京学院大学保健医療技術学部倫理審査委員会の承認を得て行われた(承認番号 2021-0015).
【結果】
87名(100%)の回答中,実施内容の記載があった回答36件(41%),実施していない・回答無しが51件(59%)であった.実施内容では調理プログラムが最も多い27件,次いで栄養指導9件,口腔ケア・嚥下体操8件,食事場面への介入5件,その他3件と続いた.食事に関する家族への指導についての記載はなかった.調理プログラムはその記載内容から,楽しみとしての調理プログラム19件と退院支援としての調理プログラム8件に分けることができた.栄養指導については栄養士と協業している回答が多く,さらに退院支援と組み合わせていることが多かった.食事場面への介入に分類された回答中には詰め込み食べに対する食具の調整や一口大の調整,ゆっくり食べることの促しなど具体的な記載も見られた.
【考察】
約4割のOTRから食事に関連した作業療法の実施内容が得られた一方で,回答中の多くは楽しみや退院支援としての調理プログラムであり,精神科病院でのOTRの役割は摂食嚥下機能障害への介入というよりは入院が長期化しやすいことを背景とした楽しみの提供や退院後の生活を想定した簡単な調理方法の獲得が目的とされていることが示唆された.また,調理プログラムや栄養指導などは比較的摂食嚥下機能が低下していない患者を対象としていることが伺えた.今後,OTRは施設や他職種からの期待を考慮しながらも,統合失調症患者が抱える摂食嚥下機能障害にリハ専門職として関与していく方法を検討することが重要であると考える.
精神科病院の入院患者において精神科作業療法士(以下,OTR)の主たる患者である統合失調症患者は摂食嚥下機能障害を背景とした誤嚥性肺炎や窒息事故が多く,その原因には早食いや盗食などの特徴的な食行動が関連していることも報告されている.一方,精神科病院でリハビリテーション(以下,リハ)を担っているOTRによる調査,介入等の報告はほとんど見られない.
本報告は精神科病院に勤務するOTRを対象に行った調査である統合失調症患者を対象とした摂食嚥下リハの実施状況からその一部である統合失調症患者を対象とした食事に関連した作業療法の実施内容について分析したものである.
【目的】
精神科作業療法に従事しているOTRが統合失調症患者に対してどのような食事に関連した作業療法を実施しているのかを明らかにすることである.
【方法】
公益社団法人 日本精神科病院協会に加盟している病院・施設に勤務するOTRを対象にwebアンケートを実施した.分析対象とした質問内容は「統合失調症の方の食事に関連した作業療法,あるいは食事に関する家族への指導などの関りを実施していれば具体的にお答えください」とした.分析手法は記述統計と質的手法を用いた.テキストデータである「実施内容」については,共同研究者(10年以上の経験を有するOTR)とともに熟読し,類似した意味内容ごとにカテゴリー化を行った.尚,本研究の実施は文京学院大学保健医療技術学部倫理審査委員会の承認を得て行われた(承認番号 2021-0015).
【結果】
87名(100%)の回答中,実施内容の記載があった回答36件(41%),実施していない・回答無しが51件(59%)であった.実施内容では調理プログラムが最も多い27件,次いで栄養指導9件,口腔ケア・嚥下体操8件,食事場面への介入5件,その他3件と続いた.食事に関する家族への指導についての記載はなかった.調理プログラムはその記載内容から,楽しみとしての調理プログラム19件と退院支援としての調理プログラム8件に分けることができた.栄養指導については栄養士と協業している回答が多く,さらに退院支援と組み合わせていることが多かった.食事場面への介入に分類された回答中には詰め込み食べに対する食具の調整や一口大の調整,ゆっくり食べることの促しなど具体的な記載も見られた.
【考察】
約4割のOTRから食事に関連した作業療法の実施内容が得られた一方で,回答中の多くは楽しみや退院支援としての調理プログラムであり,精神科病院でのOTRの役割は摂食嚥下機能障害への介入というよりは入院が長期化しやすいことを背景とした楽しみの提供や退院後の生活を想定した簡単な調理方法の獲得が目的とされていることが示唆された.また,調理プログラムや栄養指導などは比較的摂食嚥下機能が低下していない患者を対象としていることが伺えた.今後,OTRは施設や他職種からの期待を考慮しながらも,統合失調症患者が抱える摂食嚥下機能障害にリハ専門職として関与していく方法を検討することが重要であると考える.