第57回日本作業療法学会

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ポスター

精神障害

[PH-9] ポスター:精神障害 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PH-9-1] ADOCとみんチャレ(デジタルピア・サポート)の併用により健康行動の促進が図られた統合失調症の事例

金子 隆生1, 吉原 翔太2,3, 友利 幸之介4 (1.山形県立こころの医療センターリハビリテーション科, 2.エーテンラボ, 3.北里大学大学院医療系研究科, 4.東京工科大学)

【目的】精神障害者が望む生活を実現する為には目標設定が重要と考えられている.目標設定を支援するツールとして作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)があるが,ADOCは目標設定後の目標達成行動や行動変容まではサポートしていない.今回,精神科デイケア(DC)に通う統合失調の事例に対して,ADOC実施後にデジタルピア・サポートアプリの「みんチャレ」を活用し,継続的に健康行動を支援したので報告する.なお本報告に対し,事例へ十分な説明を行い,同意を得た.
【事例紹介】30歳代,女性,統合失調症.中学時より不登校,高校入学後は不安が増強し,幻聴もみられ統合失調症の診断を受け治療開始.当院DCと就労支援B型事業所を利用中である.ストレス耐性が低く,就労の事業所で不安なことがある,と頻回に相談があった.またBMIが肥満2度で,感染拡大期の行動制限にて増加する傾向にあったため,体重コントロールを目的にDC通所で管理栄養士から栄養指導も受けていた.
【初期評価】ADOCを用いた目標設定では,「今より痩せたい」という希望が聞かれ,その為に大事な活動として「ウォーキング・散歩」が選択された(満足度3).作業機能障害の種類と評価(CAOD:作業不均衡14点,作業剥奪14点,作業阻害7点,作業周縁化13点)は48点で,作業剥奪の傾向にあった.感染症拡大などによる環境の変化や不安などにより,減量の為に行動したい思いはあるが継続した行動に至っていなかった.
【介入ならびに経過】目標設定後に「みんチャレ」を利用し,5人1組のチームで目標としている行動を,オンライン上でメンバーに共有してもらった.さらにDC利用時には,作業療法士と目標としている行動やみんチャレの利用に関する振り返りを行った.事例自ら日々の目標歩数を掲げ,利用開始間もなく目標歩数を達成する様子が認められた.また,チーム内の他メンバーに対する励ましなども認められた.3ヶ月を経過すると,継続した運動によって体重の減少に繋がった.
【結果】4ヶ月後,みんチャレについては日頃のスタンプ獲得などが行動するモチベーションに繋がる発言が聞かれ,体重の減少も認められた.同時に,部屋の掃除や絵画など他の作業にも興味を示すようになってきた.再評価では,ADOCの「ウォーキング・散歩」の満足度は5になり,CAODは20点とそれぞれ改善した.
【考察】目標設定後にみんチャレを活用することで,健康行動が促進され,また相対的に事例の不安の減少や作業機能障害の改善にもつながった.ピアサポートは,地域生活移行において重要な支援として位置づけられ,精神症状や個人的な回復を促進することも報告されている1).今回,感染症拡大時の行動制限によって精神不調,肥満などの問題を抱えた本事例においては,ADOCとオンラインでのピアサポートツールであるみんチャレの併用による有用性が示唆された.
参考文献:
1)Smit D, Miguel C, Vrijsen JN, et al : The effectiveness of peer support for individuals with mental illness: systematic review and meta-analysis. Psychol Med, 1-10, 2022.