第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-9] ポスター:精神障害 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PH-9-2] 長崎市精神障害者ピアサポーター養成講座修了生の就労希望について

河野 知房1, 松尾 帆夏2, 丸田 道雄3, 田中 悟郎3 (1.NPO法人長崎のぞみ会のぞみ共同作業所, 2.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科, 3.長崎大学医学部保健学科)

1.序論
長崎市は,令和3年3月に公表した「長崎市第6期障害福祉計画・長崎市第2期障害児福祉計画」の中に「精神障害者ピアサポーター養成講座」を開催することを明記し,令和4年度よりNPO法人長崎のぞみ会に業務委託した.昨年度は24名の修了者を輩出し,その後も修了生同士の交流会を自主開催し,継続的にピアサポーターが集える場につながった.さらに本年度は,昨年度の修了生より新たなファシリテーターを起用し,より充実した講座の運営を目指して実施した.
本講座の目的は,「自らの当事者性を活かしながら他の精神障害者を支援するピアサポーターを養成するとともに,ピアサポーターの活用方法を理解した障害福祉サービス事業所等の従事者を養成することで精神障害者が地域で安心して生活できる体制の構築を図ること」とした.
2.方法
長崎市内の地域活動支援センター,就労支援事業所,自立訓練事業所,相談支援事業所の計126施設に本研究の目的や方法を記載した受講者募集要項を送付した.場所は,長崎大学医学部保健学科の講義室等で行った.講座の開催は新型コロナウイルスの感染対策を講じた上で,すべて対面型で行った.講座の最終日に,全課程修了生に対し就労に関する今後の展望について,アンケート調査を実施した.
3.結果
受講志願者は,24名【男性16名(67%)・女性8名(33%);精神疾患・障害の経験有19名(79%)・無5名(21%);福祉施設職員5名(21%)・福祉施設ピア職員7名(29%)・就労継続支援事業所利用者7名(29%)・その他福祉施設利用者1名(4%)・障害者雇用枠勤務者4名(17%)】であった.講座の講師・ファシリテーター等は,ピアサポーター経験者6名とピアサポーター雇用事業所職員2名に依頼した.講座内容は,厚生労働省の「障害者ピアサポート研修事業実施要綱」に示された標準的カリキュラム及びテキストに基づき,基礎研修,専門研修,フォローアップ研修について各3日間を実施した.19名が修了し(修了率79%),講座修了時のプログラム満足度調査では,「満足」14名(74%),「やや満足」5名(26%)だった.「人の痛みや,小さな幸せにも気付くことができて,とても良い学びでした」,「今後のピアサポートの盛り上がりにも期待できると思いました」などの感想があった.そして,就労に関する展望(複数回答可)については,養成講座のファシリテーターとして雇用5名(26%),ピアサポーターとして福祉施設に雇用12名(63%),一般雇用枠(ピアサポーター以外)3名(16%),障害者雇用枠(ピアサポーター以外)2名(11%),A型/B型就労継続支援の利用6名(32%),その他2名(11%)という結果となった.
4.結論
本講座は,昨年度と同様に参加者同士の協働及び対話などを通じ,自己の考えをしなやかに広げ深める「主体的・対話的な学び」を実現できるように努めた.その結果,講座の受講者の語りの中に講座の有効性に言及する内容を確認することができた.さらに,講座の修了生の約6割が障害福祉サービス事業所等でのピアサポーターの役割を活かした就労を希望しており,利用者のリカバリーに向けた希望獲得や地域生活の不安解消につなげることが期待されるが,同時にその受け皿となる福祉事業所を増やすための周知活動が今後の課題である.