[PI-1-3] 明確な目標を持つ知的能力障害のある子どもと行ったCognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)の実践
【はじめに】
Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)は,課題指向型アプローチの一つであり,認知戦略の発見と使用を通じてスキルの習得を目指すクライエント中心の問題解決アプローチである(Polatajkoら,2004).発達性協調運動症(DCD)のある子どもに対する効果が多く報告されている一方,認知戦略を扱うための知的・言語レベルが対象者に求められ,知的能力障害を持つ神経発達症児に対する実践報告は少なく,国内における報告はほとんどない.
【目的】
今回,知的能力障害のある子どもに対してCO-OPを実施し,本児が目標とするスキルの習得に繋がったため報告する.発表者に開示すべきCOIはない.
【方法】
対象:中学校(支援級)に通う14歳の女子生徒.診断名は精神運動発達遅滞.WISC-IVは全検査IQ54.Vineland-IIは適応総合点が52点,領域別ではコミュニケーション44点,日常生活スキル66点,社会性77点,運動スキルにおける粗大運動が67/80点,微細運動が71/72点であった.適応水準に関して,コミュニケーションと日常生活スキルは“低い”,社会性は“やや低い”であった.制度面では療育手帳(軽度)を取得している.本児と母から学業に関する相談があり,本児は明確な目標を持ち言語によるやり取りを実用的に行えていたためCO-OPの適用が可能と判断した.なお,本報告に際して症例と保護者に同意を得ている.
介入:本報告では,1回(60分)の介入による症例の変化を示す.介入は3つの段階(準備段階,習得段階,検証段階)に分けられた.準備段階では,本児に対するCO-OPの趣旨説明,目標設定,初回評価を行った.目標設定では,本児との話し合いの結果,「数学のテストでコンパスを使って綺麗に円を描く」を目標とした.初回評価では,COPMとPQRSを実施した.習得段階では,CO-OPの特徴に基づき,本児の目標とするスキルの遂行に焦点を当て,認知戦略を用いながらスキルの習得と日常生活への般化,転移を目指した.介入では,本児の知的能力面(情報処理や言語理解の困難さ)への配慮として,イラストによる認知戦略の説明と遂行のチェックに動画(タブレット端末)を使用し認知戦略の思考過程を視覚化した.戦略の発見に向けたやり取りでは,端的な質問を多くし,複雑な思考が必要な場合は関連する内容の実体験を挟んでから質問した.また,習得したスキルの般化のために,発見した戦略をまとめ宿題として手渡した.検証段階では,COPMとPQRSを実施した.
【結果】
COPMは,介入前後で「数学のテストでコンパスを使って綺麗に円を描く」が遂行度3→10,満足度3→10となった.PQRSは,介入前後で5→9となり,介入から1週間後の数学のテストでもスキルの般化が確認できた.また,介入の中で本児がつぶやきながら遂行する場面や本児自身で認知戦略を導き出す場面がみられるようになった.
【考察】
今回,知的能力障害のある子どもとCO-OPを実施し,目標とするスキルの習得に繋がった.本児が明確な目標を持っていたこと,本児の情報処理や言語理解に合わせて認知戦略の視覚化と端的かつ実体験を踏まえたやり取りを行い認知戦略の発見と使用を促せたことがスキルの習得に繋がったと考えられる.適切な配慮を行うことで,知的能力面の困難さがある子どもに対してもCO-OPが有効な可能性がある.
Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)は,課題指向型アプローチの一つであり,認知戦略の発見と使用を通じてスキルの習得を目指すクライエント中心の問題解決アプローチである(Polatajkoら,2004).発達性協調運動症(DCD)のある子どもに対する効果が多く報告されている一方,認知戦略を扱うための知的・言語レベルが対象者に求められ,知的能力障害を持つ神経発達症児に対する実践報告は少なく,国内における報告はほとんどない.
【目的】
今回,知的能力障害のある子どもに対してCO-OPを実施し,本児が目標とするスキルの習得に繋がったため報告する.発表者に開示すべきCOIはない.
【方法】
対象:中学校(支援級)に通う14歳の女子生徒.診断名は精神運動発達遅滞.WISC-IVは全検査IQ54.Vineland-IIは適応総合点が52点,領域別ではコミュニケーション44点,日常生活スキル66点,社会性77点,運動スキルにおける粗大運動が67/80点,微細運動が71/72点であった.適応水準に関して,コミュニケーションと日常生活スキルは“低い”,社会性は“やや低い”であった.制度面では療育手帳(軽度)を取得している.本児と母から学業に関する相談があり,本児は明確な目標を持ち言語によるやり取りを実用的に行えていたためCO-OPの適用が可能と判断した.なお,本報告に際して症例と保護者に同意を得ている.
介入:本報告では,1回(60分)の介入による症例の変化を示す.介入は3つの段階(準備段階,習得段階,検証段階)に分けられた.準備段階では,本児に対するCO-OPの趣旨説明,目標設定,初回評価を行った.目標設定では,本児との話し合いの結果,「数学のテストでコンパスを使って綺麗に円を描く」を目標とした.初回評価では,COPMとPQRSを実施した.習得段階では,CO-OPの特徴に基づき,本児の目標とするスキルの遂行に焦点を当て,認知戦略を用いながらスキルの習得と日常生活への般化,転移を目指した.介入では,本児の知的能力面(情報処理や言語理解の困難さ)への配慮として,イラストによる認知戦略の説明と遂行のチェックに動画(タブレット端末)を使用し認知戦略の思考過程を視覚化した.戦略の発見に向けたやり取りでは,端的な質問を多くし,複雑な思考が必要な場合は関連する内容の実体験を挟んでから質問した.また,習得したスキルの般化のために,発見した戦略をまとめ宿題として手渡した.検証段階では,COPMとPQRSを実施した.
【結果】
COPMは,介入前後で「数学のテストでコンパスを使って綺麗に円を描く」が遂行度3→10,満足度3→10となった.PQRSは,介入前後で5→9となり,介入から1週間後の数学のテストでもスキルの般化が確認できた.また,介入の中で本児がつぶやきながら遂行する場面や本児自身で認知戦略を導き出す場面がみられるようになった.
【考察】
今回,知的能力障害のある子どもとCO-OPを実施し,目標とするスキルの習得に繋がった.本児が明確な目標を持っていたこと,本児の情報処理や言語理解に合わせて認知戦略の視覚化と端的かつ実体験を踏まえたやり取りを行い認知戦略の発見と使用を促せたことがスキルの習得に繋がったと考えられる.適切な配慮を行うことで,知的能力面の困難さがある子どもに対してもCO-OPが有効な可能性がある.