[PI-10-1] 児童発達支援・放課後等デイサービスを利用する児童の感覚特性と困難さの関連
【はじめに】自閉スペクトラム症(以下,ASD)児をはじめとする神経発達症児は感覚の問題があることが報告され,生活の中で困難さを抱えている.近年,神経発達症の早期発見・支援の体制が整ってきており,支援機関の一つに児童発達支援・放課後等デイサービス(以下,児発・放課後デイ)がある.児発・放課後デイには神経発達症の診断の有無に関わらず,生活の中で困難さを抱える児童が通っている.生活の中で困難さを抱える児童として,神経発達症児の感覚特性や困難さに関する報告は見られるが,未診断の児童を含めた調査は少ない.そこで,児発・放課後デイを利用する児童の感覚特性と困難さの関連について検討することを本研究の目的とした.本研究は倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者に書面にて同意を得た.
【方法】対象は,児発・放課後デイ利用児童とし,研究協力へ同意が得られた児発・放課後デイ管理者から児発・放課後デイ利用児童および保護者へ研究協力依頼書,同意書,質問紙を配布した.研究協力に同意が得られた場合のみ無記名にて回答し,返送用封筒にて研究者へ返送してもらった.質問紙は基本シート(性別,年齢,発達指数,診断名など),感覚プロファイル(以下,SP),子どもの強さと困難さアンケート(以下,SDQ)で,保護者へ回答を求めた.分析は基本情報について集計し,SP得点(6セクション:聴覚,視覚,前庭覚,触覚,複合感覚,口腔感覚),SDQ得点(総合的困難さおよび下位尺度:情緒の問題,行為の問題,多動/不注意,仲間関係の問題)について基準値と比較した.Shapiro-Wilk検定にて正規性を確認後,SP得点とSDQ得点の相関分析(Spearman順位相関係数,有意水準p<.05)を行い,相関の強さの判定にはギルフォードの基準を用いた.解析ソフトはIBM SPSSver.25を用いた.
【結果】対象は男児41名,女児12名,平均月齢84.0±25.1ヶ月(範囲:42~150ヶ月),平均発達指数76.1±22.8,診断名は併存症も含め,ASD34名,注意欠如多動症11名,知的障害10名,発達の遅れ5名,発達性学習症4名,染色体異常症2名,発達性協調運動症2名,未診断9名であった.SP得点平均は聴覚15.9,視覚14.9,前庭覚16.9,触覚28.6,複合感覚12.3,口腔感覚17.6であり,聴覚は「平均的」,聴覚以外のセクションは「高い」の範囲だった.SDQ得点平均は総合的困難さ13.7,下位尺度は情緒の問題3.0,行為の問題2.2,多動/不注意5.1,仲間関係の問題3.4であり,行為の問題以外は基準値より高かった.相関分析はSP(6セクション全て)とSDQ(総合的困難さ)で弱い~中等度の相関を認めた(p=.347~.580,p<.01).SPとSDQの下位尺度について,中等度の相関を認めたのは,聴覚/視覚/触覚と情緒の問題(p=.428~.455,p<.01),前庭覚/複合感覚と多動/不注意(p=.565~.633,p<.01),聴覚/触覚と仲間関係(p=.478~.505,p<.01)であった.
【考察】分析の結果,児発・放課後デイ利用児童は,SP,SDQとも基準値よりも高い値を示したものが多く,同年代の児童よりも感覚の問題や情緒/行為/多動/不注意/仲間関係における困難さを抱えていることが示唆された.また,SPとSDQの相関分析では多くの項目間で弱い~中等度の相関がみられ,特に,聴覚,触覚は情緒/仲間関係における困難さと関連があり,前庭覚,複合感覚は多動/不注意と関連があることが示された.本研究の対象53名中34名(61.2%)がASDの診断であった.そのため,感覚の問題があるASDが多かったことが結果に影響している可能性が高いと考えられる.
【方法】対象は,児発・放課後デイ利用児童とし,研究協力へ同意が得られた児発・放課後デイ管理者から児発・放課後デイ利用児童および保護者へ研究協力依頼書,同意書,質問紙を配布した.研究協力に同意が得られた場合のみ無記名にて回答し,返送用封筒にて研究者へ返送してもらった.質問紙は基本シート(性別,年齢,発達指数,診断名など),感覚プロファイル(以下,SP),子どもの強さと困難さアンケート(以下,SDQ)で,保護者へ回答を求めた.分析は基本情報について集計し,SP得点(6セクション:聴覚,視覚,前庭覚,触覚,複合感覚,口腔感覚),SDQ得点(総合的困難さおよび下位尺度:情緒の問題,行為の問題,多動/不注意,仲間関係の問題)について基準値と比較した.Shapiro-Wilk検定にて正規性を確認後,SP得点とSDQ得点の相関分析(Spearman順位相関係数,有意水準p<.05)を行い,相関の強さの判定にはギルフォードの基準を用いた.解析ソフトはIBM SPSSver.25を用いた.
【結果】対象は男児41名,女児12名,平均月齢84.0±25.1ヶ月(範囲:42~150ヶ月),平均発達指数76.1±22.8,診断名は併存症も含め,ASD34名,注意欠如多動症11名,知的障害10名,発達の遅れ5名,発達性学習症4名,染色体異常症2名,発達性協調運動症2名,未診断9名であった.SP得点平均は聴覚15.9,視覚14.9,前庭覚16.9,触覚28.6,複合感覚12.3,口腔感覚17.6であり,聴覚は「平均的」,聴覚以外のセクションは「高い」の範囲だった.SDQ得点平均は総合的困難さ13.7,下位尺度は情緒の問題3.0,行為の問題2.2,多動/不注意5.1,仲間関係の問題3.4であり,行為の問題以外は基準値より高かった.相関分析はSP(6セクション全て)とSDQ(総合的困難さ)で弱い~中等度の相関を認めた(p=.347~.580,p<.01).SPとSDQの下位尺度について,中等度の相関を認めたのは,聴覚/視覚/触覚と情緒の問題(p=.428~.455,p<.01),前庭覚/複合感覚と多動/不注意(p=.565~.633,p<.01),聴覚/触覚と仲間関係(p=.478~.505,p<.01)であった.
【考察】分析の結果,児発・放課後デイ利用児童は,SP,SDQとも基準値よりも高い値を示したものが多く,同年代の児童よりも感覚の問題や情緒/行為/多動/不注意/仲間関係における困難さを抱えていることが示唆された.また,SPとSDQの相関分析では多くの項目間で弱い~中等度の相関がみられ,特に,聴覚,触覚は情緒/仲間関係における困難さと関連があり,前庭覚,複合感覚は多動/不注意と関連があることが示された.本研究の対象53名中34名(61.2%)がASDの診断であった.そのため,感覚の問題があるASDが多かったことが結果に影響している可能性が高いと考えられる.