第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-10] ポスター:発達障害 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PI-10-4] 重心動揺を指標とした,マリンプログラム介入よるバランス機能の即時効果の検討

鈴木 啓, 吉田 慎吾 (発達支援センター ぎんばるの海)

【はじめに】
当施設では放課後等デイサービスにおいて,通常の療育プログラムと合わせ,希望者には沖縄の自然を活かしたマリンプログラム を実施している.マリンプログラムの主な内容は,スタンドアップパドルボート(SUP),シュノーケリング,マングローブカヤック, 海岸探索,遊泳釣り等がある.しかし,それらの独自のプログラムの身体的効果を定量的に評価できていない課題がある.その背景として,療育時間の制限や評価機器の不足,対象者への計測に伴った複雑な説明への理解が難しいことがあげられる.そこで,今回マリンプログラムが与えるバランス機能への影響について簡便で複雑な工程を除いた形で評価を用い即時効果を検討した.
【目的】
マリンプログラム療育前後でのバランス機能の即時効果を検討
【方法】
対象は,当施設マリンプログラム参加児童5名(自閉症スペクトラム症2名・ダウン症2名).平均月齢は144.4±30.4ヶ月.方法は90 分間のマリンプログラム療育の介入前後で重心動揺計を用い,開眼片脚立位時の重心動揺を測定し比較検討を行った.マリンプログラムの内容はSUP体験とし,海面に浮かぶボードの上で立つ・座るなどしてバランスを保ちながらパドルを使用しボードを操作するプラグラムである.重心動揺の計測には重心動揺計(フットバランス・体バランス測定システム:インターリハ株式会社性)を使用した.計測は被験者自身の合図のもと,片脚立位保持をスタートし,その約5秒後に重心動揺を測定した.片脚立位時の重心動揺計の測定時間は10秒間とした.なお測定脚は本人の任意とした.計測はマリンプログラム前後に1回実施し,重心動揺の測定項目は重心動揺総軌跡長,外周面積とした.対象者には書面にて本人,保護者へ研究の同意を得た上で実施した.
【結果】
マリンプログラム前後での重心動揺の総軌跡長の平均値は89.76±39.78㎝から64.66±19.81㎝へと減少し,外周面積は34.00±15.37㎠から26.52±15.66㎠へと減少が見られた.しかし,どちらとも有意差は見られなかった.しかし,外周面積おいては,5人中4人においてマリンプログラム後に外周面積が減少する傾向が見られた.
【考察】
マリンプログラム介入後,重心動揺の外周面積は減少する傾向が観察された.竹林らは足関節の運動後,片脚立位における重心動揺が減少した報告をしている.マリンプログラムという海辺での療育において,砂浜やSUPボードの上でバランスを保つ活動は,足関節の運動要素に優位に影響することが示唆された.しかし,今回の報告では対象人数の課題や,他のプログラムとの差異を示すことはできていない.今後,療育の臨床現場の定量的な評価において簡便で正確な研究方法を検討していきたい.