[PI-11-2] 作業中心の実践によりカナダ作業遂行測定の遂行度,満足度が改善した引きこもりを呈する自閉スペクトラム症児の一事例
【序論】本邦の引きこもりは69万人を超え社会課題となっている(内閣府2010).引きこもり支援では肯定的経験を得る事が有用(齋藤2010)とされる一方,その手段は明らかでない.今回,引きこもりを呈する自閉スペクトラム症(以下ASD)児に対し作業中心の実践(以下OCP)を行ったところカナダ作業遂行測定(以下COPM),FIMの社会的交流,問題解決の改善を認めた.本報告では,引きこもりを呈するASD児が肯定的経験を得る為の要素を考察する.本報告は母から同意を得ている.
【事例】小学4年生男児.特別支援学級所属.ASD.母,姉と3人暮らし.数年間ほぼ外出なし.幼稚園は行き渋りはあるが毎日通っていた.小学校入学1週間で「何でこんな子を入れたんだ」と言う担任の言葉を聞き不登校となった.3年時,訪問相談担当教員介入開始.4年時,児童精神科受診,スクールソーシャルワーカー・訪問作業療法(以下OT)開始(X年).WISC:FSIQ72.PARS-TR:幼児期ピーク得点24点,児童期現在得点16点.
【評価】昼夜ゲームをしている.終始苛立っており癇癪で頭を壁に打ちつける.失敗や人の目を怖がる.日本感覚インベントリー改訂版:209点.偏食,触・臭・聴覚過敏あり.FIM:59点.運動46点,認知13点(社会的交流・問題解決1点).痛みにより着衣が難しく下着で過ごしている.食事は昼夜問わず1時間毎に少量摂取する.料理名の言い間違いあり.想像と違う食事が出ると癇癪を起こす.好きな物は喜んで食べる.魚や昆虫に詳しい.生き物カードを用いると母を介しOTとの交流あり.足で空気循環機をジャグリングする.COPM:目標1;食べたい料理を母に伝える,目標2;母,OTと楽しく遊ぶ.双方,重要度10,遂行度・満足度1.基本方針:食べる事や生き物が好きという強みを活かす.代償手段を用いる.物品を介した活動を主体とし安心を保つ.
【経過】月2回.60分×20回.
前期(X+2〜5ヶ月):メニュー,具,調味料を指差しできる表を作成.1回食事量増加あり.食事の際の癇癪が無くなる.生き物カードを用い児が物語を述べる.母,OTの要求に応じた物語展開あり.
中間評価:目標1,2;遂行度・満足度10.児から母へ「遊びたいけど僕には友達がいない.学校は怖いからまだ行けない」との話があった事,母より「生活が広がる為には自信が必要だと思う」との話が聞かれた.目標3;できたを増やして自信をつける(重要度10,遂行度4,満足度8)を追加.
後期(X+6〜11ヶ月):ジャグリングをOTに教え,OTが成功すると褒める.皿洗いや洗濯物の手伝い開始.一人で自動販売機でジュースを購入する.学校の授業の下準備を提案,実施に至る.
【結果】目標3;遂行度6,満足度10.FIM:76点.運動53点,認知23点(社会的交流4点,問題解決5点).癇癪が減り明るくなった.目を見て話す様になった.
【考察】社会参加の為には自己への肯定的感情を育み,安心や活力を得られる心理的基盤を整える事が重要とされる(日土2022).本児は過去の経験やASD特性により不安が強まり限定的な生活を送っていた.しかし,OCPの特徴である文脈を捉え支援に組み入れる事,作業遂行上の強みや代償手段の活用(Fisher2019)により,楽しみや人の役に立つ機会を得た事が活動拡大の一助となった.引きこもりを呈するASD児に肯定的経験を促す為の要素として文脈理解,作業遂行上の強みや代償手段の活用が示唆された.今回,同時期に他職種の介入があり,結果はOTのみの効果とは言い切れない.
【事例】小学4年生男児.特別支援学級所属.ASD.母,姉と3人暮らし.数年間ほぼ外出なし.幼稚園は行き渋りはあるが毎日通っていた.小学校入学1週間で「何でこんな子を入れたんだ」と言う担任の言葉を聞き不登校となった.3年時,訪問相談担当教員介入開始.4年時,児童精神科受診,スクールソーシャルワーカー・訪問作業療法(以下OT)開始(X年).WISC:FSIQ72.PARS-TR:幼児期ピーク得点24点,児童期現在得点16点.
【評価】昼夜ゲームをしている.終始苛立っており癇癪で頭を壁に打ちつける.失敗や人の目を怖がる.日本感覚インベントリー改訂版:209点.偏食,触・臭・聴覚過敏あり.FIM:59点.運動46点,認知13点(社会的交流・問題解決1点).痛みにより着衣が難しく下着で過ごしている.食事は昼夜問わず1時間毎に少量摂取する.料理名の言い間違いあり.想像と違う食事が出ると癇癪を起こす.好きな物は喜んで食べる.魚や昆虫に詳しい.生き物カードを用いると母を介しOTとの交流あり.足で空気循環機をジャグリングする.COPM:目標1;食べたい料理を母に伝える,目標2;母,OTと楽しく遊ぶ.双方,重要度10,遂行度・満足度1.基本方針:食べる事や生き物が好きという強みを活かす.代償手段を用いる.物品を介した活動を主体とし安心を保つ.
【経過】月2回.60分×20回.
前期(X+2〜5ヶ月):メニュー,具,調味料を指差しできる表を作成.1回食事量増加あり.食事の際の癇癪が無くなる.生き物カードを用い児が物語を述べる.母,OTの要求に応じた物語展開あり.
中間評価:目標1,2;遂行度・満足度10.児から母へ「遊びたいけど僕には友達がいない.学校は怖いからまだ行けない」との話があった事,母より「生活が広がる為には自信が必要だと思う」との話が聞かれた.目標3;できたを増やして自信をつける(重要度10,遂行度4,満足度8)を追加.
後期(X+6〜11ヶ月):ジャグリングをOTに教え,OTが成功すると褒める.皿洗いや洗濯物の手伝い開始.一人で自動販売機でジュースを購入する.学校の授業の下準備を提案,実施に至る.
【結果】目標3;遂行度6,満足度10.FIM:76点.運動53点,認知23点(社会的交流4点,問題解決5点).癇癪が減り明るくなった.目を見て話す様になった.
【考察】社会参加の為には自己への肯定的感情を育み,安心や活力を得られる心理的基盤を整える事が重要とされる(日土2022).本児は過去の経験やASD特性により不安が強まり限定的な生活を送っていた.しかし,OCPの特徴である文脈を捉え支援に組み入れる事,作業遂行上の強みや代償手段の活用(Fisher2019)により,楽しみや人の役に立つ機会を得た事が活動拡大の一助となった.引きこもりを呈するASD児に肯定的経験を促す為の要素として文脈理解,作業遂行上の強みや代償手段の活用が示唆された.今回,同時期に他職種の介入があり,結果はOTのみの効果とは言い切れない.