[PI-12-1] 放課後等デイサービスにおける,病院との連携による継続的な介入が機能維持に有効であった一症例
【序論】放課後等デイサービス(以下,放課後等DS)において,多様な背景を持つ指導員によるプログラム開発やアセスメントは質の担保が難しいと指摘されている(木村2017)ものの,関係機関のメンバーによる支援会議には病院の療育機関が参加出来ないこともあり,専門的な評価に基づく介入の実施は難しいことがある.今回,残存した機能障害により継続的な介入の必要性がある事例に対し,当放課後等DS事業所の作業療法士(以下,OTR)が事例の通う病院のOTRと連携し日々の支援に反映したところ,身体機能の維持に繋がったため報告する.本報告は保護者の同意を得ている.
【事例】特別支援学校に所属する11歳女児.生後3ヶ月及び9ヶ月時に左片側巨脳症に対しての半球離断術を行ったことにより右側不全片麻痺,右側半盲を呈する.てんかん発作は術後消失.体機能障害者手帳1種1級,療育手帳A2所持.
生後4ヶ月時よりA病院にて作業療法(以下,OT)開始.同院でのOTは現在月に1回実施している.また,同院にて可動域の状況を見て約半年に一度ボツリヌス療法を行っている.6歳時に就学に合わせて,当事業所を週に3回で利用開始.同時に他事業所を週に2回で利用を開始.事例の自宅と当事業所間の送迎に往復1時間以上を要する.支援会議は1年に1度行っているが,病院のOTRは参加出来ていなかった.
【初期評価】9歳時(X日)に当事業所にOTRが配属され,放課後等DSでの評価及び介入開始.身体機能としてBrunnstrom Stage(以下,BRS)は右上肢Ⅳ,右手指Ⅲ,右下肢Ⅳで,右上下肢の関節可動域制限を認めていた.歩行は3歳10ヶ月で獲得,右下肢に対し短下肢装具使用.言語理解は日常会話レベル,言語表出は2語文レベル,新造語あり.セルフケアは見守り及び助言~軽介助レベル.右側への不注意があり,動作の中で右上肢の不使用を認めていた.右上肢の不使用により拘縮が進行することを懸念し,適切な介入計画の立案のため,介入経過の長いA病院のOTRと情報共有を行った.連携の際には保護者の同意の下,電話及びメールを介して実施し,評価内容の共有,介入内容の相談を行った.
【介入】共有した情報を基に当事業所の施設長と介入方法について協議を行い,A病院でのOTにて行っているあそびを取り入れて実施した.当事業所の自由時間及び送迎時間中に個別ケアの時間を確保し,自動介助可動域練習やあそびの中で補助手として右上肢を使用する練習,そしてゼンマイぬいぐるみを用いた感覚あそびなどを実施した.
【経過】事例は個別ケアを積極的に実施できており,特に送迎時間中の感覚あそびは自ら実施出来ていた. X+6ヶ月時点では拘縮の進行は評価上確認されておらず,前回のボツリヌス療法から8ヶ月経った時点での治療の提案はされていない.
【考察】今回,右側不全麻痺を呈し,身体機能の維持が困難となることが予測された事例に対し,月に1回A病院にて行っているOTの内容の一部を,週に3回当事業所の自由時間に個別ケアとして導入した.ボツリヌス療法と自主練習の併用治療においての BRS 等の上肢の能動的機能の改善が報告されており(小澤2014),麻痺側上下肢への継続した介入が求められている中,児童が慣れているあそびの中で右上肢の使用頻度を向上することで,機能の維持に寄与したと考えられる.
【結論】身体機能障害をもつ児童を取り巻く各関係機関の連携は,適切な支援を継続的に提供していくための一助となる可能性が考えられた.
【事例】特別支援学校に所属する11歳女児.生後3ヶ月及び9ヶ月時に左片側巨脳症に対しての半球離断術を行ったことにより右側不全片麻痺,右側半盲を呈する.てんかん発作は術後消失.体機能障害者手帳1種1級,療育手帳A2所持.
生後4ヶ月時よりA病院にて作業療法(以下,OT)開始.同院でのOTは現在月に1回実施している.また,同院にて可動域の状況を見て約半年に一度ボツリヌス療法を行っている.6歳時に就学に合わせて,当事業所を週に3回で利用開始.同時に他事業所を週に2回で利用を開始.事例の自宅と当事業所間の送迎に往復1時間以上を要する.支援会議は1年に1度行っているが,病院のOTRは参加出来ていなかった.
【初期評価】9歳時(X日)に当事業所にOTRが配属され,放課後等DSでの評価及び介入開始.身体機能としてBrunnstrom Stage(以下,BRS)は右上肢Ⅳ,右手指Ⅲ,右下肢Ⅳで,右上下肢の関節可動域制限を認めていた.歩行は3歳10ヶ月で獲得,右下肢に対し短下肢装具使用.言語理解は日常会話レベル,言語表出は2語文レベル,新造語あり.セルフケアは見守り及び助言~軽介助レベル.右側への不注意があり,動作の中で右上肢の不使用を認めていた.右上肢の不使用により拘縮が進行することを懸念し,適切な介入計画の立案のため,介入経過の長いA病院のOTRと情報共有を行った.連携の際には保護者の同意の下,電話及びメールを介して実施し,評価内容の共有,介入内容の相談を行った.
【介入】共有した情報を基に当事業所の施設長と介入方法について協議を行い,A病院でのOTにて行っているあそびを取り入れて実施した.当事業所の自由時間及び送迎時間中に個別ケアの時間を確保し,自動介助可動域練習やあそびの中で補助手として右上肢を使用する練習,そしてゼンマイぬいぐるみを用いた感覚あそびなどを実施した.
【経過】事例は個別ケアを積極的に実施できており,特に送迎時間中の感覚あそびは自ら実施出来ていた. X+6ヶ月時点では拘縮の進行は評価上確認されておらず,前回のボツリヌス療法から8ヶ月経った時点での治療の提案はされていない.
【考察】今回,右側不全麻痺を呈し,身体機能の維持が困難となることが予測された事例に対し,月に1回A病院にて行っているOTの内容の一部を,週に3回当事業所の自由時間に個別ケアとして導入した.ボツリヌス療法と自主練習の併用治療においての BRS 等の上肢の能動的機能の改善が報告されており(小澤2014),麻痺側上下肢への継続した介入が求められている中,児童が慣れているあそびの中で右上肢の使用頻度を向上することで,機能の維持に寄与したと考えられる.
【結論】身体機能障害をもつ児童を取り巻く各関係機関の連携は,適切な支援を継続的に提供していくための一助となる可能性が考えられた.