[PI-12-2] ASD児への保育所等訪問支援において環境調整を主体とした間接支援を行った事例の報告
【はじめに】保育所等訪問支援事業(以下,本事業)において専門家は対象児を取り巻く環境に介入する,間接支援を実施するとされている(厚生労働省,2017).環境適応に過敏反応を示すASD児に間接支援を行い適応的な行動変化が得られたので報告する(森ノ宮医療大学倫理審査員会 承認番号2021-136).
【事例紹介】幼稚園に通うASD男児.2才時に保育園への通園拒否・外出拒否・着衣困難があり,診断,障害児支援事業利用を開始.偏食・衣服へのこだわり,新規場面でのパニック,母子分離不安がみられ,発話は3語文だがやり取りは成立しにくい.幼稚園入園を機に本事業が利用開始となる.
【介入経過】作業療法士(以下,OTR)は本事業のみで本児を観察.月に2回,約2時間,幼稚園に訪問し観察評価を実施.母親との面談は2~3か月に1回実施する.
〇初期~臨床像把握:[評価]入園より継続通園可能.集団活動への興味があり落ち着いて参加.触覚過敏・視覚的なこだわりにより制服着衣が困難で私服着用.暑い時期の疲れやすさから体温調整の難しさが伺えた.体操で足の振りを行わない,遊具遊びの幅が狭いことから身体図式の未熟さが伺えた.指示理解は良好,具体的な内容を短文で伝えるが体調や感覚,状況説明などの内容表現は難しい.新規場面の拒否やパニックから問題解決の難しさも伺えた.苦手なことを無理強いすると拒否を強めると母親より伺った.[支援方針]①拒否は防衛反応と捉え,苦手な部分を言語化できるまでは環境調整を行う②前庭-固有感覚統合を促す運動経験を積む③代弁や表現を状況とたらし合わせるように伝え語彙を増やすことを提案.生活面への直接介入は避け,安心できる環境の確保を重要視した.
〇中期~運動欲求,感覚に対する言語化の芽生え:[評価]年少秋頃,遊びが連合遊びへ発展し仲の良い友達ができる.「虫取り」などの内容が明確な活動を通してやり取りすることが増加.麦わら帽が「チクチクしてるからいや」と感覚に対する言語化の芽生えが確認される.冬頃,寒さで登園拒否がみられるが,公園で走っているとの報告から前庭-固有感覚の欲求があると考え,幼稚園での走りながら周囲の友達の変化に気づけない様子から体性感覚と聴覚の統合の未熟さを認めた.[支援方針]感覚欲求を満し感覚統合を促進するために,運動学習機会の確保を行う.児が感覚の言語化を前向きに行えるよう,言語化した内容を受け止め対応する.
〇後期~相談支援との連携・小集団への移行:[評価]年中,気温上昇に伴い登園継続となる.ごっこ遊びが増加.サイズ調整によりポロシャツ・帽子の着用が可能,父親との釣りの経験から魚を食べることができる.この様に自発的な挑戦を機に可能となる活動が増え始める.運動機会を確保できる児童発達支援を相談支援から紹介,利用を開始.その後,走りながらやり取りを継続できている様子から,感覚統合機能の向上が確認できる.着用可能な素材が制服のズボンに近いことから,制服のズボンに好きなワッペンをつけることを提案.母親が児に説明し提案した結果,制服のズボン着用が可能となる.
【考察】今回の児の変化の要因は,環境調整により安心できる環境を確保したことが防衛的な反応(Ayres,2005)を抑制し,児の知的好奇心による能動的な行動を促進できたことであると考えられる.また,それを母親や先生と共有したことで,本児の生活全体に安心感を提供でき,発達を促すことができたと考える.母親の役割は対象者を観察理解する事,継続して支援環境を整えることであり,作業療法士は間接支援において評価を共有し支援の理由付けを行う事で,母親が安心して支援を行えるよう支援していると考えられた.
【事例紹介】幼稚園に通うASD男児.2才時に保育園への通園拒否・外出拒否・着衣困難があり,診断,障害児支援事業利用を開始.偏食・衣服へのこだわり,新規場面でのパニック,母子分離不安がみられ,発話は3語文だがやり取りは成立しにくい.幼稚園入園を機に本事業が利用開始となる.
【介入経過】作業療法士(以下,OTR)は本事業のみで本児を観察.月に2回,約2時間,幼稚園に訪問し観察評価を実施.母親との面談は2~3か月に1回実施する.
〇初期~臨床像把握:[評価]入園より継続通園可能.集団活動への興味があり落ち着いて参加.触覚過敏・視覚的なこだわりにより制服着衣が困難で私服着用.暑い時期の疲れやすさから体温調整の難しさが伺えた.体操で足の振りを行わない,遊具遊びの幅が狭いことから身体図式の未熟さが伺えた.指示理解は良好,具体的な内容を短文で伝えるが体調や感覚,状況説明などの内容表現は難しい.新規場面の拒否やパニックから問題解決の難しさも伺えた.苦手なことを無理強いすると拒否を強めると母親より伺った.[支援方針]①拒否は防衛反応と捉え,苦手な部分を言語化できるまでは環境調整を行う②前庭-固有感覚統合を促す運動経験を積む③代弁や表現を状況とたらし合わせるように伝え語彙を増やすことを提案.生活面への直接介入は避け,安心できる環境の確保を重要視した.
〇中期~運動欲求,感覚に対する言語化の芽生え:[評価]年少秋頃,遊びが連合遊びへ発展し仲の良い友達ができる.「虫取り」などの内容が明確な活動を通してやり取りすることが増加.麦わら帽が「チクチクしてるからいや」と感覚に対する言語化の芽生えが確認される.冬頃,寒さで登園拒否がみられるが,公園で走っているとの報告から前庭-固有感覚の欲求があると考え,幼稚園での走りながら周囲の友達の変化に気づけない様子から体性感覚と聴覚の統合の未熟さを認めた.[支援方針]感覚欲求を満し感覚統合を促進するために,運動学習機会の確保を行う.児が感覚の言語化を前向きに行えるよう,言語化した内容を受け止め対応する.
〇後期~相談支援との連携・小集団への移行:[評価]年中,気温上昇に伴い登園継続となる.ごっこ遊びが増加.サイズ調整によりポロシャツ・帽子の着用が可能,父親との釣りの経験から魚を食べることができる.この様に自発的な挑戦を機に可能となる活動が増え始める.運動機会を確保できる児童発達支援を相談支援から紹介,利用を開始.その後,走りながらやり取りを継続できている様子から,感覚統合機能の向上が確認できる.着用可能な素材が制服のズボンに近いことから,制服のズボンに好きなワッペンをつけることを提案.母親が児に説明し提案した結果,制服のズボン着用が可能となる.
【考察】今回の児の変化の要因は,環境調整により安心できる環境を確保したことが防衛的な反応(Ayres,2005)を抑制し,児の知的好奇心による能動的な行動を促進できたことであると考えられる.また,それを母親や先生と共有したことで,本児の生活全体に安心感を提供でき,発達を促すことができたと考える.母親の役割は対象者を観察理解する事,継続して支援環境を整えることであり,作業療法士は間接支援において評価を共有し支援の理由付けを行う事で,母親が安心して支援を行えるよう支援していると考えられた.