[PI-3-3] 障害児通所支援事業における,利用児の保護者によるニーズから考えられる作業療法士の役割に関する一考察
【はじめに】令和3年度障害福祉サービス等報酬が改定され,障害児通所支援事業における児童発達支援事業所(以下,児発)や放課後等デイサービス(以下,放デイ)における作業療法士(以下,OT)の役割がより一層期待されている.森地1)は「放課後等デイサービスなどの障害児の放課後活動の場において児童の障害特性やライフステージなどに応じた支援ニーズに基づいた支援が行われている」と報告しているが,利用児やその保護者のライフステージに応じたニーズに関する報告は少ない.今回,ライフステージにおける保護者からのニーズの傾向を調査し,放デイや児発で支援に関わるOTに期待している役割について考察したので報告する.
【対象】調査対象施設はOTによる個別支援を中心とした事業を展開している.利用児の多くは身体的な障害はなく,保護者同伴で約1時間の活動を行っている.今回,事業所と契約している182名のうち,令和4年9月中に施設の利用があり,同意説明書を用いて保護者から同意が得られた利用児104名(児発:60名,放デイ:44名)を調査対象とした(年齢:1歳~15歳).
【調査内容】個別支援計画書に記載されている保護者のニーズは半期に一度更新され,利用児ごとに最大3項目まで記載している.今回,合計283のニーズを,利用児の状況を把握しているOT4名で国際生活機能分類(以下,ICF)の第1と第2レベルに分類した.年代とニーズの傾向を調査するため,①3歳未満(12名),②3歳以上の幼児(48名),③小学生(32名),④中学生(12名)に区分した.本研究は,筆頭演者所属施設倫理委員会の承認を得ている(FUJI20210001).
【分析方法】ライフステージの段階とICFで分類したニーズ(第1レベルと第2レベル)との間の関連性を分析するためにJMP17(SAS Institute)を用いてカイ二乗検定を行った.
【結果】ICF第1レベルでは,心身機能や参加に比べ活動に関連するニーズが3歳未満:22/36(61.1%),3歳以上:89/135(65.9%),小学生:55/85(64.7%),中学生:21/27(77.8%)と全ての年代で多かった.第2レベルでは,『活動』の具体的な項目として,コミュニケーション(話すこと,話し言葉の理解)や,学習と知識の応用(問題解決,注意を集中すること),『心身機能』では精神機能(情動機能や思考機能),『参加』では対人関係に該当するニーズが多かった.今回の調査で,ライフステージの段階とニーズとの間で有意差は認められなかった.
【考察】調査対象施設の利用児において心身機能や参加と比べ活動におけるニーズがどの年代においても多いことが明らかとなった.気持ちをコントロールし,友達と関わりながら良好な関係を築くことは社会生活を送るためには重要であり,そのための支援を保護者が求めていことが分かった.これは利用児にとってライフステージで区別することなく重要な課題であり,OTは利用児と地域を繋ぐ担い手として,活動に焦点を当てた支援を行う役割があると考えた.本調査は,今後利用児の障害や特性,社会環境要因,利用形態との関連性の検証が課題である.異なる事業形態の他施設と共同し,ライフステージにおけるニーズの傾向から障害児通所支援事業でOTが担う役割についての調査を継続していきたい.
文献 1)森地 徹:放課後等デイサービスにおける支援の現状に関する研究.障害科学研究,2019年43巻1号.
【対象】調査対象施設はOTによる個別支援を中心とした事業を展開している.利用児の多くは身体的な障害はなく,保護者同伴で約1時間の活動を行っている.今回,事業所と契約している182名のうち,令和4年9月中に施設の利用があり,同意説明書を用いて保護者から同意が得られた利用児104名(児発:60名,放デイ:44名)を調査対象とした(年齢:1歳~15歳).
【調査内容】個別支援計画書に記載されている保護者のニーズは半期に一度更新され,利用児ごとに最大3項目まで記載している.今回,合計283のニーズを,利用児の状況を把握しているOT4名で国際生活機能分類(以下,ICF)の第1と第2レベルに分類した.年代とニーズの傾向を調査するため,①3歳未満(12名),②3歳以上の幼児(48名),③小学生(32名),④中学生(12名)に区分した.本研究は,筆頭演者所属施設倫理委員会の承認を得ている(FUJI20210001).
【分析方法】ライフステージの段階とICFで分類したニーズ(第1レベルと第2レベル)との間の関連性を分析するためにJMP17(SAS Institute)を用いてカイ二乗検定を行った.
【結果】ICF第1レベルでは,心身機能や参加に比べ活動に関連するニーズが3歳未満:22/36(61.1%),3歳以上:89/135(65.9%),小学生:55/85(64.7%),中学生:21/27(77.8%)と全ての年代で多かった.第2レベルでは,『活動』の具体的な項目として,コミュニケーション(話すこと,話し言葉の理解)や,学習と知識の応用(問題解決,注意を集中すること),『心身機能』では精神機能(情動機能や思考機能),『参加』では対人関係に該当するニーズが多かった.今回の調査で,ライフステージの段階とニーズとの間で有意差は認められなかった.
【考察】調査対象施設の利用児において心身機能や参加と比べ活動におけるニーズがどの年代においても多いことが明らかとなった.気持ちをコントロールし,友達と関わりながら良好な関係を築くことは社会生活を送るためには重要であり,そのための支援を保護者が求めていことが分かった.これは利用児にとってライフステージで区別することなく重要な課題であり,OTは利用児と地域を繋ぐ担い手として,活動に焦点を当てた支援を行う役割があると考えた.本調査は,今後利用児の障害や特性,社会環境要因,利用形態との関連性の検証が課題である.異なる事業形態の他施設と共同し,ライフステージにおけるニーズの傾向から障害児通所支援事業でOTが担う役割についての調査を継続していきたい.
文献 1)森地 徹:放課後等デイサービスにおける支援の現状に関する研究.障害科学研究,2019年43巻1号.