[PI-4-2] 不登校児童に対する学校作業療法
【はじめに】
不登校児童生徒数は毎年増加している状態であり1),今後も増えることが予測され,学校作業療法においても対応を考える必要がある.こどもセンターゆいまわる(以下当事業所)では,不登校児童に対し届けたい教育で家庭と学校との安心したチーム作りを意識したアプローチを行なっている.今回,事例を通してその取組みを報告する.なお本ケースに説明し同意を得た.
【事例紹介】
Aさん,小学3年生男児.1年生の時から学校の環境に馴染めず,友達や先生との関係や学習に対し不安感が強く休みがちであった.母親の依頼で2年生より保育所等訪問支援サービスによる学校作業療法を開始.3年生になり登校は週1,2回.頑張りすぎると翌日から長期的に休む傾向にあった.母親,担任教員(以下B先生),校長は登校について見通しが持てない不安感と,それぞれの主張の食い違いにより連携が出来ずにいた.
【方法】
OTは作業療法の説明を行い,B先生,校長,母親,相談員と共に目標を設定した.OTはAさん・母親・B先生・校長それぞれとの面接を通して,主張の深層にある作業を理解し,学校と家庭の関係性構築を目的に作業の共有を意識した情報共有を実施した.
【経過】
<目標>友達との交流・登下校・スケジュール管理についての目標を設定した.<面接>B先生や校長先生は学校に来れない事を心配していたが,B先生はAさんのこれから先の生活に価値があることをしていきたいこと,校長は高学年になった時の友達との関係性や学習に必要な育ちを重視していることが面接からわかった.また母親はAさんのやりたい事が出来る経験を積んでいく事を重視していた.Aさんは「僕がやりたいことを探してくれますか?」と自分が出来た実感を持てる事を望んでいる事がわかった.それぞれの作業を共有し,当事業所の小集団活動場面をデータにしてメールで共有した.<プラン立案より1ヶ月後>Aさんに対して自分たちが直接関われないことで,不安となり家庭との連携にズレが生じ,家庭と学校との連絡が途絶えた状態となった.そこでOTは母親,B先生,校長との面接を実施.改めて目的を確認し,それぞれの作業が満たされる方法をそれぞれで決めてもらった.
【結果】
プラン立案より2ヶ月後,母親はAさんの作業の変化について語る場面が増え,B先生は家庭との連携をしながら,先生自身の作業が少しでも出来ている事を話し,家庭と学校がチームで動くことが出来た.
【考察】
不登校児童への対応は,学校に来れるか否かの視点では見通しが持てず,家庭と学校間では十分な連携ができない状況となる.今回のケースでは,家庭と学校それぞれの主張が食い違い,不安と負担を感じている状況であった.そのためOTは,互いの問題の先にある届けたい教育に焦点を当て,その教育の共有を通してチーム作りを行った.また家庭や学校側が途中不安を呈した際でも,再度作業の共有と方法についてクライエント自身が決める事で,不安を解消することに努めた.それぞれの届けたい教育を明らかにし,それに向けた具体的なステップ,取り組みの影響を共有し続ける事が,家庭と学校の安心したチーム作りに重要であると考える.
【参考文献】1)文部科学省:令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 2)仲間知穂,友利幸之介:学校作業療法実践ガイド.青雲社.2021
不登校児童生徒数は毎年増加している状態であり1),今後も増えることが予測され,学校作業療法においても対応を考える必要がある.こどもセンターゆいまわる(以下当事業所)では,不登校児童に対し届けたい教育で家庭と学校との安心したチーム作りを意識したアプローチを行なっている.今回,事例を通してその取組みを報告する.なお本ケースに説明し同意を得た.
【事例紹介】
Aさん,小学3年生男児.1年生の時から学校の環境に馴染めず,友達や先生との関係や学習に対し不安感が強く休みがちであった.母親の依頼で2年生より保育所等訪問支援サービスによる学校作業療法を開始.3年生になり登校は週1,2回.頑張りすぎると翌日から長期的に休む傾向にあった.母親,担任教員(以下B先生),校長は登校について見通しが持てない不安感と,それぞれの主張の食い違いにより連携が出来ずにいた.
【方法】
OTは作業療法の説明を行い,B先生,校長,母親,相談員と共に目標を設定した.OTはAさん・母親・B先生・校長それぞれとの面接を通して,主張の深層にある作業を理解し,学校と家庭の関係性構築を目的に作業の共有を意識した情報共有を実施した.
【経過】
<目標>友達との交流・登下校・スケジュール管理についての目標を設定した.<面接>B先生や校長先生は学校に来れない事を心配していたが,B先生はAさんのこれから先の生活に価値があることをしていきたいこと,校長は高学年になった時の友達との関係性や学習に必要な育ちを重視していることが面接からわかった.また母親はAさんのやりたい事が出来る経験を積んでいく事を重視していた.Aさんは「僕がやりたいことを探してくれますか?」と自分が出来た実感を持てる事を望んでいる事がわかった.それぞれの作業を共有し,当事業所の小集団活動場面をデータにしてメールで共有した.<プラン立案より1ヶ月後>Aさんに対して自分たちが直接関われないことで,不安となり家庭との連携にズレが生じ,家庭と学校との連絡が途絶えた状態となった.そこでOTは母親,B先生,校長との面接を実施.改めて目的を確認し,それぞれの作業が満たされる方法をそれぞれで決めてもらった.
【結果】
プラン立案より2ヶ月後,母親はAさんの作業の変化について語る場面が増え,B先生は家庭との連携をしながら,先生自身の作業が少しでも出来ている事を話し,家庭と学校がチームで動くことが出来た.
【考察】
不登校児童への対応は,学校に来れるか否かの視点では見通しが持てず,家庭と学校間では十分な連携ができない状況となる.今回のケースでは,家庭と学校それぞれの主張が食い違い,不安と負担を感じている状況であった.そのためOTは,互いの問題の先にある届けたい教育に焦点を当て,その教育の共有を通してチーム作りを行った.また家庭や学校側が途中不安を呈した際でも,再度作業の共有と方法についてクライエント自身が決める事で,不安を解消することに努めた.それぞれの届けたい教育を明らかにし,それに向けた具体的なステップ,取り組みの影響を共有し続ける事が,家庭と学校の安心したチーム作りに重要であると考える.
【参考文献】1)文部科学省:令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 2)仲間知穂,友利幸之介:学校作業療法実践ガイド.青雲社.2021