第57回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-4] ポスター:発達障害 4

Fri. Nov 10, 2023 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PI-4-4] 学童保育における作業療法コンサルテーションにて環境調整を行なった事例

八重樫 貴之1, 小俣 みどり2 (1.株式会社リニエR, 2.特定非営利活動法人子ども子育てネットワーク・ピッコロ)

【はじめに】学童保育は児童が長時間過ごす「生活と遊び」の場であるが,自閉スペクトラム症や注意欠如/多動症といった発達障害をもつ児童の受け入れや支援方法が問題となっている.2016年より岡山県学童保育連絡協議会を中心に,学童保育に作業療法士(以下,OT)が赴いてコンサルテーションを行うOTコンサル事業が全国各地で行われおり,筆者は令和4年4月より東京都清瀬市で8ヶ所の学童保育を市から業務委託を受け運営しているNPO法人と契約し,各学童保育に月1回,合計月8回のコンサルテーションを行っている.
 OTコンサル事業は,OTが直接対象となる学童に個別指導をするというような直接支援ではなく,指導員に子どもの発達特性を伝えたり環境調整の提案をするなど間接支援を行なっている.
今回,環境調整の提案により学童保育の児童の行動が変容し,それにより指導員の負担が減ったとの申し出があったので報告する.なお,本発表に際して契約しているNPO法人,コンサルテーションを行った学童保育より同意を得ている.また,利益相反はない.
【主訴】東京都清瀬市内のA学童保育.定員は77名.小学校の空き教室を利用し,常勤職員4名,パートタイム職員3名で運営されている.ある月の職員の困りごとは,「教室内を走り回る児童が多くその行動を止めてばかりいる」,「カードゲームなどをして遊びたい児童に静かな場所を提供できていない」,「子どもの対応に自信が無い」などであった.
【評価】本来,パーテーションで区切られている2つの教室をパーテションを2枚外して出入り口を2ヶ所作り出入り自由となっていた.手前ははけん玉やこま回しなど身体を使って遊ぶ教室,奥はカードゲームや工作などをして静かに遊ぶ教室と別れていたが,出入り口が2ヶ所あって回遊性が高いため,元気な児童らが走り回っていた.また,走り回っている児童らは,おやつ場面で椅子に座って待つことできずに歩き回るなど,ADHDの発達特性が観察された.
【カンファレンスとその後】カンファレンスにて出入り口が2ヶ所あるために教室間で回遊性が生まれ,その結果として走り回っているのではないかとの仮説を説明した.また,ADHDの発達特性を説明し,環境調整を行うことでその行動をある程度コントロールできることも説明した.
 カンファレンス終了後,指導員はパーテーションを入れることで出入り口を1ヶ所にした.また,出入り口には,「入り口」「出口」など標識を貼ることで視覚的に分かりやすくする工夫をおこなった.その結果として,1ヶ月後のコンサルテーションでは子どもたちが走り回ることがなくなり,それぞれの教室で落ち着いて遊ぶことができるようになったと報告を受けた.また,「子どもたちの行動が変わってきたので,私たちもいろいろやってみようと思う」との意見が聞かれた.
【考察】今回は,OTが環境調整を提案した結果,指導員は児童に合った環境を提供すると子どもの行動が変容することを経験したことで,自分達の指導方法について自信を持つことができたものと考えられる.OTコンサル事業ではOTは生活や遊び場面を観察しながら主訴の原因や背景を考察し,その支援方法を指導員とのカンファレンスで一緒に考える間接支援となっているが,指導員に環境や子どもの行動を丁寧に説明し,指導員の「やってみよう」という気持ちを支えることが大切なのではないかと考えられる.