第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-5] ポスター:発達障害 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PI-5-1] 保育所等訪問支援介入前後における教職員らの期待度と満足度

加勢 泰庸 ((株)東京リハビリテーションサービス子ども発達支援ルームおれんじ学園かみのやま)

【はじめに】
保育所等訪問支援(以下,保訪)は児童福祉法に基づく障害児通所支援の一類型であり,インクルージョン推進の潮流に乗った未来志向型の事業である.保訪は保育所や教育の現場に入り込んで行うアウトリーチ型の発達支援事業で有効性が期待されるサービスでありながら,マンパワー不足やサービスの認知度・理解度の低さにより実施している事業所はまだ少ない.そこで今後の事業発展のためにその実態を明らかにする必要を感じ,今回,保訪を受ける側の教職員等に対する調査を実施した.
【目的】
本研究の目的は,保訪を受ける側の教職員らの保訪介入前後の期待度と満足度の調査を通して,保訪のイメージとニーズを明らかにすることであった.研究の成果は支援を提供する側の効果的な介入方法に繋がり,保訪の受け入れを前向きに考える保育所や学校が増えていく一助にしたいと考えた.
【方法】
対象:当事業所にて2021年4月から2022年7月の期間で保訪を実施,あるいは実施中の保育所等教職員.調査期間:2022年7月~同年8月31日.調査方法:郵送(無記名)アンケート調査.調査内容:質問項目は回答者の属性,職種,保訪との連携年数,に加え,保訪介入前後の期待度,満足度,今後に対する要望等に関する7項目.回答に要する時間は約15分であった.
【結果】
発送数30,回答数23(有効回答率76.7 %).回答者の年代は50代(30 %)20代(26%)40代(22%)の順で,職種は保育士(48%)と教諭(44%)の占める割合が多かった.勤務年数は1年,2年,5年の順であった.保訪介入前のイメージとして,「どちらともいえない」あるいは「どちらかといえばネガティブなイメージを持っていたが約3割.また,「どんなサービスか分からない」5割,「何をしてもらえるか分からない」と約4割が回答していたが,介入後は,「どんなサービスか分からない」「何をしてもらえるか分からない」,また,保訪に対してネガティブなイメージを持つ回答は0となっていた.保訪に対する期待の上位2つは,「専門的なアドバイスを受けたい.子どもの発達に役に立つと思う」で,介入後約6割がほぼ満足と回答し,今後も大いに,出来れば利用したいとの回答が約8割だった.ただ,職種による回答の違いを深堀することは,各セル数が少ないため出来なかった.また,回答者の内2名は介入後の期待度と満足度が下がっていた.
【考察】
今回の結果から,保訪介入前はサービス内容がよく分からないことから,不安感やネガティブなイメージを持っていたのかもしれないが,実際に保訪介入後はサービスの有効性が実感できたこと,さらにイメージが具体的になったことで期待度及び満足度ともポジティブな結果につながったと思われる.今後も大いに,出来れば利用したいとの回答が約8割だったことは本事業の有効性の証と言えよう.ただ介入前に比べ,介入後の期待度が下がっていた2名について,今回の調査からはその理由までは分からない.
【まとめ】
行政が新しい事業を開始する際,スムーズな開始と発展に繋げるには,事前に保訪の説明を丁寧に行い,事業内容を周知することにより受け入れ側の不安感を軽減させることの重要性が示唆された.また,保訪実施後の結果から,満足度をより高めるにはサービス提供側と受ける側の両者が十分なコミュニケーションをとり,ニーズに合致したサービスを提供する重要性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,弊社研究倫理審査委員会の承認(承認番号2039)を得て実施した.また開示すべきCIOは無い.