第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-7] ポスター:発達障害 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PI-7-4] レット症候群児(者)の手の常同運動と目的的な手の使用の関連

平野 大輔1,2, 後藤 純信1,3, 勝二 博亮4, 谷口 敬道1,5 (1.国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科, 2.国際医療福祉大学保健医療学部作業療法学科, 3.国際医療福祉大学医学部医学科生理学教室, 4.茨城大学教育学部障害児生理学研究室, 5.国際医療福祉大学成田保健医療学部作業療法学科)

1.序論・目的
 レット症候群の手の常同運動は,学習や遊びに必要な手の目的的操作を妨げ,40–50%の児(者)に関節拘縮や皮膚損傷を二次的に起こす(Hirano et al. 2018).手の常同運動が観察されていても,目的的な手の使用が観察される児(者)も多く,これらの関連は明らかになっていない.そこで,本研究では,レット症候群児(者)の手の常同運動と目的的な手の使用の関連,これらに関連する因子について明らかにすることを目的とした.
2.方法
 日本レット症候群協会会員131家族とレット症候群支援機構会員63家族の計194家族を対象に,2020年9–11月にかけて自記式質問紙を用い郵送と返送によって情報を収集した.質問紙には,基本情報(年齢,診断,横地分類(知的発達,移動機能)等),上肢機能(到達,把握,つまみ,放し),手の常同運動の頻度,目的的な手の使用等を含めた.手の常同運動の頻度については,1日の中で0,25,50,75,100%の頻度の5段階,目的的な手の使用については,目的的に手を使用する,意図的に玩具で遊んだり,スイッチを操作したりする,お箸やスプーン,フォーク,カップ等の食具を使う,手づかみで食べる,目的的に手を使用しないの5段階を指標に用いた(Motor Behavioural Assessment (MBA; FitzGerald et al. 1990).手の常同運動の頻度と目的的な手の使用の関連,これらと他の項目との関連については,スピアマンの順位相関係数とマン・ホイットニーのU検定を用いて分析した.本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得て行われた.
3.結果
 レット症候群児(者)72名,平均12歳10ヶ月(範囲1–46歳)の情報を収集することができた.横地分類では主にA1–6に36名,B1–6に30名が属していた.手の常同運動は全例に確認された.手の常同運動の頻度と目的的な手の使用の間には,ごくわずかな有意な関連が確認された(効果量0.254,有意確率0.038).手の常同運動の頻度と到達(効果量-0.348,有意確率0.004),目的的な手の使用と知的発達(効果量0.414,有意確率0.000),全ての上肢機能(効果量-0.705–-0.341,有意確率0.000–0.005)の間に有意な関連が確認された.
4.考察・結論
 本結果から,手の常同運動の頻度と目的的な手の使用の関連はごくわずかであり,先行研究結果(Stallworth et al. 2019)と類似していた.手の常同運動の頻度と到達の間の関連については,常同運動によって到達が困難になっていること,また,目的的な手の使用は全ての上肢機能が関連していることが示された.手の常同運動を減らす介入と目的的な手の使用を増やす介入においては,これらに対する直接的な介入と関連する因子に対する間接的な介入によって,関節拘縮や皮膚損傷の発生の予防につながると考えられる.今後,事例毎に個別の検討が求められる.