[PI-7-5] ICT機器の操作獲得を目指した脊髄性筋萎縮症Ⅰ型児の事例
【はじめに】脊髄性筋萎縮症(SMA)は脊髄前角にある運動神経細胞の変性がおこり,進行性に筋力低下,筋萎縮を呈する運動神経疾患である.特にSMAⅠ型は端坐位困難で,生後早期から人工呼吸器を使用した生活を余儀なくされる.一般的に知的機能に問題はないとされているため,スイッチやInformation and Communication Technology(ICT)機器等を操作することによるコミュニケーションの確立も期待される.しかし,代替機器類を使用してコミュニケーションが可能な者はごく少数に止まっているという報告(境,2010)やスイッチ等の支援を受けたことがない児が多いという報告(境,2012)もあり,十分に支援されていない可能性がある.
【目的】今回,機器やアプリの段階的な活用と環境調整により,「LINE」の操作習得や表出語彙量の増加に繋げることができたため報告する.本報告に関連し開示すべきCOIはない.
【方法】対象:SMAⅠ型の4歳女児.生後4ヶ月で運動発達の遅れ,5ヶ月で四肢筋力低下を認め,SMAと診断された.9ヶ月で気管切開,胃瘻増設し,24時間人工呼吸器を利用.当施設にはICT機器の活用目的で来所した.上肢機能は,左右ともに不十分ながら手指の屈曲伸展が可能.前腕は回内位だが,わずかに回内外や肘関節屈曲が可能.遠城寺式乳幼児分析的発達検査は,移動運動1ヶ月,手の運動1ヶ月,基本的習慣3ヶ月,対人関係8ヶ月,発語6ヶ月,言語理解16ヶ月.簡単な質問に対して発声や表情でYes/Noの応答は可能だが,ひらがなの理解は難しかった.なお,本報告に際し母親に十分に説明を行い,書面で同意を得ている.
介入:月2回の頻度で1年間(5ヶ月の中断期間含む)作業療法を3期(スイッチ導入期,iPad導入期,コミュニケーション期)に分けて実施した.スイッチ導入期は,電動式移動アシスト装置「AKKA Smart」やスイッチで操作可能なおもちゃを使用し,スイッチ操作の因果関係の理解を促した.その際,マイクロライトスイッチを作製し,左右母指の屈曲での操作適合を図った.また,同時に母親へスイッチ作製方法,兄へいたずらする等のおもちゃの活用方法を伝達した.iPad導入期は,スイッチコントロールでのiPad操作の導入を試み,カメラアプリ「SNOW」を使用した.スイッチコントロールは,言語指示のみではスイッチを連打してしまったため,身体動作誘導と指差し+言語指示で介入し,徐々に介入を減らした.コミュニケーション期は,「LINE」を使用することで言語理解と他者とのコミュニケーションの促進を図った.「SNOW」実施時と同様の介入を行い,本児がやりとりできるように家族や友人家族に協力を依頼した.
【結果】スイッチコントロールでのiPad操作が可能となり,「SNOW」や「LINE」の使用だけではなく,アプリ起動や終了もできるようになった.「LINE」では,あいさつや動詞,名詞の単語入力や二語文の入力が可能となった.
【考察】
本児の自主性を損なわないように,移動やいたずらといった周囲の人や環境に働きかけ,反応が返ってくる状況を作り出したこと,家族や友人家族の協力を得て日常的にiPadを使用してひらがなに触れる機会を作ったことが「LINE」の操作習得や表出語彙量の増加に繋がったと考えられる.また,iPad導入期には本児の関心が高いアプリの活用,身体動作誘導と指差し+言語指示を用いたエラーレス学習を行ったことがiPadの導入に繋がったと考えられる.このように,SMA児のコミュニケーション確立には,スイッチの適合や練習だけではなく,本児の意欲を維持できるように遊び心を持ちながら環境調整を行い,エラーレス学習を進めながら支援していくことが有効である可能性がある.
【目的】今回,機器やアプリの段階的な活用と環境調整により,「LINE」の操作習得や表出語彙量の増加に繋げることができたため報告する.本報告に関連し開示すべきCOIはない.
【方法】対象:SMAⅠ型の4歳女児.生後4ヶ月で運動発達の遅れ,5ヶ月で四肢筋力低下を認め,SMAと診断された.9ヶ月で気管切開,胃瘻増設し,24時間人工呼吸器を利用.当施設にはICT機器の活用目的で来所した.上肢機能は,左右ともに不十分ながら手指の屈曲伸展が可能.前腕は回内位だが,わずかに回内外や肘関節屈曲が可能.遠城寺式乳幼児分析的発達検査は,移動運動1ヶ月,手の運動1ヶ月,基本的習慣3ヶ月,対人関係8ヶ月,発語6ヶ月,言語理解16ヶ月.簡単な質問に対して発声や表情でYes/Noの応答は可能だが,ひらがなの理解は難しかった.なお,本報告に際し母親に十分に説明を行い,書面で同意を得ている.
介入:月2回の頻度で1年間(5ヶ月の中断期間含む)作業療法を3期(スイッチ導入期,iPad導入期,コミュニケーション期)に分けて実施した.スイッチ導入期は,電動式移動アシスト装置「AKKA Smart」やスイッチで操作可能なおもちゃを使用し,スイッチ操作の因果関係の理解を促した.その際,マイクロライトスイッチを作製し,左右母指の屈曲での操作適合を図った.また,同時に母親へスイッチ作製方法,兄へいたずらする等のおもちゃの活用方法を伝達した.iPad導入期は,スイッチコントロールでのiPad操作の導入を試み,カメラアプリ「SNOW」を使用した.スイッチコントロールは,言語指示のみではスイッチを連打してしまったため,身体動作誘導と指差し+言語指示で介入し,徐々に介入を減らした.コミュニケーション期は,「LINE」を使用することで言語理解と他者とのコミュニケーションの促進を図った.「SNOW」実施時と同様の介入を行い,本児がやりとりできるように家族や友人家族に協力を依頼した.
【結果】スイッチコントロールでのiPad操作が可能となり,「SNOW」や「LINE」の使用だけではなく,アプリ起動や終了もできるようになった.「LINE」では,あいさつや動詞,名詞の単語入力や二語文の入力が可能となった.
【考察】
本児の自主性を損なわないように,移動やいたずらといった周囲の人や環境に働きかけ,反応が返ってくる状況を作り出したこと,家族や友人家族の協力を得て日常的にiPadを使用してひらがなに触れる機会を作ったことが「LINE」の操作習得や表出語彙量の増加に繋がったと考えられる.また,iPad導入期には本児の関心が高いアプリの活用,身体動作誘導と指差し+言語指示を用いたエラーレス学習を行ったことがiPadの導入に繋がったと考えられる.このように,SMA児のコミュニケーション確立には,スイッチの適合や練習だけではなく,本児の意欲を維持できるように遊び心を持ちながら環境調整を行い,エラーレス学習を進めながら支援していくことが有効である可能性がある.