第57回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-8] ポスター:発達障害 8

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PI-8-1] 障害児通所支援における多職種連携とOTの役割

前田 亮輔, 松田 大輔 (こども発達支援ルームPLANET)

【はじめに】
障害児通所支援では作業療法士(以下,OT)以外の職種との協働が多いが多職種連携について述べられている文献は多くはない.今回,児童発達支援事業(以下,児発)において低酸素脳症により後遺症を呈した児と関わる機会を得た.生活行為向上マネジメントを活用し,申し送りを通して目標を共有し多職種と相互に情報共有を行い,連携した支援が出来たため以下に報告する.
【事例紹介】
エプスタイン奇形を有する4歳,男児.両親と3人家族.保育園に通園し,食事は箸を使用して自立. X年Y月Z日フォンタン術の際に低酸素脳症となり全介助状態に陥った. Z+126日退院. Z+226日,当事業所利用開始.心身機能面では粗大運動の立ち上がりに手からの介助が必要.床への着座では勢いよく座り込んでいた. 屋内の移動は手つなぎ介助が必要.上肢はリーチの際に体幹低緊張による動揺あり.手指は両側ともに随意運動は可能だが左優位の低緊張で手関節掌屈位.コミュニケーションは発声の不明慮さにより推測が必要.活動面ではWeeFIM:34/126点.食事は右手でスプーン使用.左手は机の下に位置し体幹左後方回旋した姿勢で食べこぼしがみられた.箸操作は握りこみ使用困難.トイレは全介助.遊びは右手優位に使用し左手は引き込んでいた. 環境面では保育園は介助量増加により退園. 母は今後の見通しが立たないことに対する不安が強かった. 本人のモチベーションが高い箸操作,母の希望の左手の使用に焦点を当て合意目標を「お弁当に左手を添えて右手で箸がクロスしないでマカロニを挟んで食べる」とした.実行度,満足度は1/10点であった.
【介入経過】
集団療育3日/週,個別療育1日/週を3ヶ月間実施.合意目標,介入方法や目的を毎日の申し送りの中で多職種と共有し,課題の難易度や環境設定をマネジメントした.申し送りでは職種ごとの視点を共有し,指導員,保育士には集団療育の中で粗大運動を促すために立ち上がり時の高さなどの段階付け,おもちゃの提示位置など左手の使用を促すための段階付けを提案.看護師とは食事について情報共有を行い支援方法を提案した.加えてADLの中での課題を個別療育で取り組み,母には自宅での介助方法や遊びと目的を伝えた.多職種へ提案した内容を実際に集団療育で実行し,フィードバックを申し送りで共有して難易度や環境設定の調整を繰り返した.
【結果】
合意目標の実行度,満足度は8/10点,箸を使って食事が可能.心身機能面では手支持で床の立ち座りが可能となり,体幹の動揺がみられるが独歩見守りレベル,片手つなぎで屋外歩行可能となった.上肢機能は左手の引き込みが軽減し,遊びの中で両手を能動的に使うことが増加.コミュニケーションは発話の不明慮さが軽減した.活動面ではWeeFIM:56/126点.食事は左手を食器に添えることができ,食べこぼしが軽減.右手は未熟ではあるが静的三指握りで箸を使い,8割程度摂取可能となった.トイレは両手でズボン操作の協力が出現.
【考察】
吉池らは「連携」とは,「共有化された目的をもつ複数の人及び機関が,単独では解決できない課題に対して,主体的に協力関係を構築して,目的達成に向けて取り組む相互関係の過程である」と述べている.今回,申し送りの際に①集団療育場面について多職種の視点を共有,②OTが課題の難易度や環境設定を行う,③それぞれが役割を担った上で実行し,④相互にフィードバックを行い,再度OTが課題の難易度や環境設定を提案,または個別療育で取り組む.サイクルをマネジメントして,多職種が連携できたことが結果として合意目標の達成に繋がったと考える.今後は地域移行に向けて,保育園,他の事業所,医療機関などとの連携も,マネジメントすることが必要になると考える.