第57回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-8] ポスター:発達障害 8

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PI-8-3] 四肢欠損児の日常生活動作自立へむけた介入

玉野 彩 (自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター)

【目的】先天性四肢欠損児への作業療法(以下OT)介入について報告事例が少ない中,生後10ヵ月から当院OTを継続している症例への介入経過および今後の課題について報告する.なお対象児家族へ説明,同意を得ており,開示すべきCOI関係にある企業等はない.【事例紹介】知的に問題なく介助員つきで通常級利用している小学3年生男児.両上肢欠損,両側腓骨欠損,足趾欠損,左内反足,両側膝蓋骨欠損で自然分娩にて出生.生後11ヵ月時に左アキレス腱延長術,後方解離術施行.2歳5カ月で独歩獲得.現在,身長は110㎝,体重28㎏,上腕長は断端中央まで左右とも約14㎝で左右断端部を接地することは困難.頸部体幹肩甲帯に関節可動域(以下ROM)制限はないが安静時立位で体幹右凸側弯,肩関節屈曲,外転に軽度,膝関節伸展および足関節に制限がある.頚部肩甲帯および肩関節の筋力は4~5レベルである.【OT経過】OT開始時は四肢ROM維持,起居移動動作獲得,座位バランス向上,下肢操作性向上を目的に足趾を利用したリーチ,つまみ練習,スプーン操作練習などを実施.座位バランスが向上し2歳半頃には立ち上がりや独歩を獲得.現在長下肢装具装着し屋内外歩行自立,長距離移動は車いす介助で電動車いすを作成予定.下肢機能はあぐら座位で足趾屈曲,内転で物品の把持やリリースが可能.物品を両足で挟み持ち上げ両足挙上しても座位保持可能.筆記,食事,更衣など日常的に右足の使用頻度が高い.また装具着脱が介助であり装具装着せず歩行することも多い.上肢機能は頭部側屈,肩甲骨挙上し衣類などを挟んで持ち運ぶことや肩にバックの紐などをかけて移動することが可能.野球クラブに所属しており左肩と左頬にボールを挟んで投げる,バットを振ることが可能.OT開始時から日常生活動作(以下ADL)の検討や自助具の作成,修正を行いながら現在に至るが,少ない自助具で日常生活や学校生活を過ごせるようになった.食事動作では足を使用せずに食事が楽しめることを目的に両側能動義手の使用を検討してきたが義手の着脱や持ち運び,操作性などにおいて実用レベルには至らない.またトイレ内立位での下衣着脱の自立が将来的にも必要になると考え検討しているが,学校では介助員の介入が必要な状況である.現在,食事動作はスマホ固定用フレキシブルアーム,円盤磁石,回転盤を組み合わせテーブル固定アームサポートを作成した.アーム先端のスプーンを左手と左頬付近を利用して磁石から取り外し体幹の回旋,前屈で皿から食塊をすくい再度スプーンを磁石に取り付け,左上腕でスプーンを回転させ口へ取り込む方法で練習中である.下衣着衣はサクションバキュームカップを吸盤が接着する壁に足と腰を利用して取り付け,フックに衣類をひっかけ,立位で壁に寄りかかりながら左右の足を通してしゃがみ込み,下肢開脚や体幹の回旋でフックに引っかかった衣類を持ち上げで着衣する方法で練習をしている.【まとめと課題】 ADL自立にむけて介入当初より様々な方法や自助具を検討してきた.現在生活の中で自身の体を利用し,少ない自助具で生活できるようになり趣味や楽しみが増えてきた.一方で装具未装着での歩行,下肢使用の左右差,体重増加等による体幹下肢の変形拘縮の悪化が懸念される.下肢に対して外科的介入となれば手の機能を失うとこになり一気にADLが低下することが予測される.今後も左足の操作性の向上,環境調整による非対称な姿勢の改善,体幹筋力の向上,上腕と頸部肩甲帯(頭部)を利用したADL動作の獲得を目指す必要があると考える.また様々な機関と情報の共有をはかり四肢欠損児がADL獲得するための手段が検討できると良いと考える.