第57回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-9] ポスター:発達障害 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PI-9-1] 眼球運動より発達障害児をスクリーニングする評価方法の開発に向けた予備的実験

坂本 美香1, 榊原 七重2, 蜂屋 孝太郎1 (1.帝京平成大学, 2.北里大学)

【導入】発達障害の1つである学習障害児に眼球運動の稚拙さが認められる(三浦,2009).このような子どもに対して,眼球運動を改善させることにより学習困難や行動上の問題が軽減することが考えられるが,現時点では眼球運動の介入や訓練の効果の根拠となる評価基準は示されていない.そのため,眼球運動の発達指標を明示し,そこから逸脱する発達障害児の眼球運動の特性を明らかにしていくことにより,発達障害児の眼球運動の問題に対して,早期発見・早期介入につなげられるものと考えた.【目的】眼球運動の発達指標を明示し,そこから逸脱する発達障害児の眼球運動の特性を明らかにしていくという研究計画のもとに,pilot studyとして眼球運動を促す刺激呈示動画を実験的に作成し,定型発達児に試行した.その結果を報告する.【方法】国内では標準化された眼球運動検査は作成されていないが,観察法による小児用の検査・NSUCO(Northeastern State University College of Optometry Oculomotor Test)(Maples WC et al,1988)が活用されている.NSUCOをPCの画面上に正確に再現することで,観察法による基準の統一や,結果のばらつきを抑えることの難しさにも対応できると考えた.また注意集中が困難な児や特異的な視覚指向を示す児に対しても測定が容易となり,多数の児の測定が可能となるものと考えた.眼球運動の測定には,子どもや発達障害児の眼球運動の測定に実績のある株式会社JVCケンウッドの視線計測装置「Gazefinder・NP-200」を選定した.2021年8月,幼児・児童の眼球運動を測定するために試案・作成したNSUCOに準じた動画を新規に取り込んだデモ機を用いて,7歳女児・定型発達の眼球運動を測定した(共同演者の所属機関の倫理審査承認済み,本児及び保護者への研究説明と同意済み).指標が上下,左右,円周に動く動画を対象児に見せ,その軌道を可視化した.【結果】被検児に指標を追跡させることで,意図した眼球運動を促すことができ,その軌跡を可視化することができた.データを読み解く中で,眼球運動の特徴を数的に処理できることを確認した.ただし繰り返しの眼球運動において,一部,被検児の予測的な動きも観察された.一方で,NSUCOで被検児に見られた眼球運動時の特徴(左右の追視に伴い内転する方の眼が上方へ偏位する傾向)もGazefinderでとらえることができ,臨床観察による眼球運動を刺激呈示動画を見せることでも再現できるものと確信した.【考察】眼球運動から発達障害をスクリーニングする評価方法を開発することを目的とした予備実験を実施した.そこで定型発達の児童の眼球運動を数値化することができた.最終的には眼球運動が発達過程にある発達障害児を含む幼児を対象と考えているため,刺激呈示動画の指標の大きさや形,動く速度等の調整には更なる検討が必要である.また定型発達児に見られた指標の動きを予測した眼球運動に対しても検討していかなければならない.今後,NSUCOを活用している眼科・視覚発達支援センターの協力を仰ぎながら,刺激呈示動画の精度を高めて実践に向けていきたい.