[PI-9-6] 発達障害者の自動車運転に関する文献レビュー
【はじめに】近年,我が国において高齢運転者の自動車運転の行動特性や運転能力の評価着目した研究が多数なされているが,発達障害の運転行動の特性についてはほとんど解明されておらず,国内での報告は極めて少ない.そのため本研究では国外での研究状況に目を向け,とくにドライビングシミュレータ(DS)を用いた発達障害者の運転技能を評価した既存の研究について把握するために文献レビューを行ったのでここに報告する.
【方法】論文検索は,2022年11月15日に行い,検索日にデータベースへ登録されていたものを対象とした.掲載対象期間は,2013年1月から2022年12月までの10年間とした.データベースサーチとして,PubMed, Google Scholarを使用した.検索用語は,Developmental Disability or Developmental Disorder(発達障害),Autism or ASD(自閉症スペクトラム,以下ASD),ADHD(注意欠陥多動性障害,以下ADHD),Driving Simulator(以下DS)(ドライビングシミュレータ)とした.適格基準は,①掲載対象期間が2013年1月から2022年12月以内であること,②国外で報告されたもの,③原著論文④フルテキスト入手可能なものとした.除外基準は,①国内での報告,②発達障害以外の疾患が対象のもの③症例報告や特集,短報,レビュー,予備的研究などとした.検索用語から得られた論文に対して,スクリーニング手順として表題,抄録,要旨の精査を行い,適格基準外であると判断した論文を除外したのち本文を精読し,適格基準を満たした論文を抽出した.論文から抽出するデータとして,発行年,著者名,表題,掲載雑誌,研究目的,研究対象,研究方法,結果・考察とした.【結果】2022年11月15日時点で,2つのデータベースサーチにて得られた論文掲載数は87件であった.そのうち,スクリーニングにより抽出された19件について全文調査を実施し,適格基準に従い4件を除外し,分析対象に採用された論文は13件となった.この13件について以下の分析を行った.米国ヘルスケア政策研究局のエビデンスレベルに準拠して分類するとⅠbレベルのランダム化比較試験が1件のみで他12件はⅢレベルの横断的な研究であった.掲載年は2012年から2017年が各1件で,2018年3件,2021年3件で近年に研究数が増加傾向にあった.収載誌に作業療法の雑誌は含まれておらず,小児科,発達学,精神医学系の雑誌に掲載されていた.対象者はADHDが7件,ASD3件などが含まれていた.対象者の平均年齢は16歳から18歳が7件で最も多く,運転免許を取得したばかりの若年初心者ドライバーを対象としたものが多かった.研究目的として,ADHDの運転中のスマホ運転の影響に関する報告やDSのルート,危険場面の違いによる運転反応に関する報告,DS運転反応と発達指標,運動能力,遂行機能との関連性についての報告,ADHDの薬の効果に関する報告などがあった.使用しているDSは米国Systems Technology 社製の STISIM Drive model400が6件で最も多かった.【考察】分析の結果,介入研究はADHDの薬効に関するものはあったが,作業療法士等がリハビリテーションとして介入したものは行われていないことが示唆された.また,ADHDを対象とした研究が多く,ADHDの特性である注意障害や衝動性と運転能力との関連性についてDSを用いた評価が行われていることが示された.ただし,これらの研究では注意障害の背景にあると思われる感覚処理過程の問題についての評価を行っている報告は見当たらなかったため,今後はそのような視点から発達障害者の運転能力について評価し検討する研究を行う必要性があると考える.
【方法】論文検索は,2022年11月15日に行い,検索日にデータベースへ登録されていたものを対象とした.掲載対象期間は,2013年1月から2022年12月までの10年間とした.データベースサーチとして,PubMed, Google Scholarを使用した.検索用語は,Developmental Disability or Developmental Disorder(発達障害),Autism or ASD(自閉症スペクトラム,以下ASD),ADHD(注意欠陥多動性障害,以下ADHD),Driving Simulator(以下DS)(ドライビングシミュレータ)とした.適格基準は,①掲載対象期間が2013年1月から2022年12月以内であること,②国外で報告されたもの,③原著論文④フルテキスト入手可能なものとした.除外基準は,①国内での報告,②発達障害以外の疾患が対象のもの③症例報告や特集,短報,レビュー,予備的研究などとした.検索用語から得られた論文に対して,スクリーニング手順として表題,抄録,要旨の精査を行い,適格基準外であると判断した論文を除外したのち本文を精読し,適格基準を満たした論文を抽出した.論文から抽出するデータとして,発行年,著者名,表題,掲載雑誌,研究目的,研究対象,研究方法,結果・考察とした.【結果】2022年11月15日時点で,2つのデータベースサーチにて得られた論文掲載数は87件であった.そのうち,スクリーニングにより抽出された19件について全文調査を実施し,適格基準に従い4件を除外し,分析対象に採用された論文は13件となった.この13件について以下の分析を行った.米国ヘルスケア政策研究局のエビデンスレベルに準拠して分類するとⅠbレベルのランダム化比較試験が1件のみで他12件はⅢレベルの横断的な研究であった.掲載年は2012年から2017年が各1件で,2018年3件,2021年3件で近年に研究数が増加傾向にあった.収載誌に作業療法の雑誌は含まれておらず,小児科,発達学,精神医学系の雑誌に掲載されていた.対象者はADHDが7件,ASD3件などが含まれていた.対象者の平均年齢は16歳から18歳が7件で最も多く,運転免許を取得したばかりの若年初心者ドライバーを対象としたものが多かった.研究目的として,ADHDの運転中のスマホ運転の影響に関する報告やDSのルート,危険場面の違いによる運転反応に関する報告,DS運転反応と発達指標,運動能力,遂行機能との関連性についての報告,ADHDの薬の効果に関する報告などがあった.使用しているDSは米国Systems Technology 社製の STISIM Drive model400が6件で最も多かった.【考察】分析の結果,介入研究はADHDの薬効に関するものはあったが,作業療法士等がリハビリテーションとして介入したものは行われていないことが示唆された.また,ADHDを対象とした研究が多く,ADHDの特性である注意障害や衝動性と運転能力との関連性についてDSを用いた評価が行われていることが示された.ただし,これらの研究では注意障害の背景にあると思われる感覚処理過程の問題についての評価を行っている報告は見当たらなかったため,今後はそのような視点から発達障害者の運転能力について評価し検討する研究を行う必要性があると考える.