第57回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-10] ポスター:高齢期 10

Sat. Nov 11, 2023 2:10 PM - 3:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PJ-10-1] COVID-19が地域在住高齢者の身体・認知機能,活動範囲,QOLに与えた影響

白濱 勲二1, 黒澤 千尋1, 藤田 峰子1, 小池 友佳子1, 安田 大典2 (1.神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科, 2.熊本保健科学大学リハビリテーション学科)

【はじめに】わが国では,COVID-19の流行によって,従来の社会生活が約3年間も制限されていた.本研究は,感染症の流行前後で地域在住高齢者の身体・認知機能,QOLに与える影響を明らかにすることを目的として実施した.本演題発表に関連し,開示すべきCOI関係にある企業等はなし.
【対象】対象は,日常生活が自立している地域在住高齢者とした.適応基準は,自立歩行が可能で,自宅での生活が自立しており,身体機能測定会に参加を希望し,本研究への参加を同意する事ができる者とした.除外基準は,研究の内容を理解できない,研究参加への同意ができない者とした.
【方法】2019 年10月と2022年11月に実施した身体機能測定会のどちらも参加した18名を分析対象として,3年間の経時的変化を比較した.評価項目は,筋力評価として握力,バランス・歩行能力評価として片足立ち, TUG・5m歩行,移動機能の評価としてのロコモ度(立ち上がり, 2ステップ, ロコモ25),日常生活動作などの評価として基本チェックリスト, 認知機能としてのMMSE, 注意機能の評価としてTMT, 活動範囲の評価としてLSA,うつ状態の評価としてGDS,健康関連QOLの評価SF-8を実施した.SF-8の下位項目は,PF(身体機能),RP(日常役割機能 身体),BP(体の痛み),GH(全体的健康感),VT(活力),SF(社会生活機能),RE(日常役割機能 精神),MH(心の健康)であった.下位項目から PCS(身体的サマリースコア), MCS(精神的サマリースコア)を算出した.統計学的解析は,有意水準5%とし,IBM SPSS Statistics 25を使用して,Shapiro-Wilk検定,Mann-Whitney U Testを行った.本研究は,所属の研究倫理審査委員会の承認を得て,実施した.
【結果】2019年の結果を示す.対象は18名(男9,女9),平均年齢73.06±4.12歳(70.0-85.0),BMI22.22±2.26, 握力R27.1±7.01kg, 握力L25.03±8.66kg, 片足立ちR34.91±23.42秒, 片足立ちL43.06±21.8秒, TUG5.59±1.13秒,至適5m歩行1.41±0.2m/s,最大5m歩行2.19±0.4m/s,ロコモ度:2ステップ0.17±0.38, 立ち上がり0.56±0.51,ロコモ25 0.56±0.7,基本チェックリスト1-20暮らしぶり2.61±2.25点, 転倒歴0.06±0.24回.SF-8;PF 50.18±4.92点, RP51.08±4.85点, BP48.69±7.0点, GH51.04±5.86点, VT52.21±4.59点, SF51.87±5.76点, RE52.3±3.08点, MH51.82±5.49点, PCS48.36±4.77点, MCS52.21±4.23点であった.TMT-A time44.56±20.62秒, TMT-A error0.22±0.43回, TMT-B time106.0±32.27, TMT-B error0.65±1.06回, MMSE28.5±1.69点, GDS3.0±3.12点, LSA 99.88±10.26点であった.3年後の2022年と比較して,有意差がみられたのは握力R25.53±8.3(p<0.05), TUG7.5±1.69(p<0.01), 基本チェックリスト(1-20)暮らしぶり3.56±2.45(p<0.05), TMT-B time 108.11±78.88(p<0.05)であった. 2ステップロコモ度は, ロコモ0度・1度・2度:15名・3名・0名から3名が悪化した. 立ち上がりロコモ度は, ロコモ0度・1度・2度:8名・10名・0名であり,1名が悪化した. ロコモ25ロコモ度は,ロコモ0度・1度・2度:10名・6名・2名であり,6名が悪化した.
【考察】3年前との比較によって,おおむね維持できていたが,握力,TUG所要時間,基本チェックリスト,TMT-Bに有意差がみられ,筋力,バランス能力,日常生活活動など,注意機能の低下がみられた.さらに,移動機能を評価するロコモ度が悪化している高齢者がみられた.これは,3年間という加齢による影響に加えて,行動制限による身体・心理的影響が考えられる.また,健康関連QOLは,有意差はみられなかったが,低下傾向がみられる項目があった.