[PJ-10-3] 慢性心不全患者の生活行為に着目した急性期病院と地域との連携
【はじめに】慢性心不全は高齢者に多く,心不全増悪による再入院を繰り返し病態が悪化するため再発予防は重要である.高齢者世帯では服薬管理や塩分制限など疾病管理に難渋するため地域連携は必要不可欠である.今回,生活行為に着目し急性期作業療法を実践し,MTDLP生活行為申し送り表を用いて介護支援専門員(以下CM)と再発予防にむけて連携した症例を経験した.本症例を振り返ることで,情報の必要性について検討していきたい.
【症例紹介】90代女性.現病歴:呼吸困難感が出現し救急搬送.心不全と診断され入院.4病日目より作業療法開始.既往歴:脳梗塞(後遺症なし),変形性膝関節症.初期評価:心身機能:四肢筋力MMT4.認知機能問題なし.ADL:FIM69点(運動項目34点,認知項目35点).食事整容動作は可能.その他は介助であった.病前生活:妹,娘と同居.介護保険未申請.ADLは自立.家族の食事の準備や,庭の手入れ等をして過ごしていた.6病日目興味関心チェックリスト実施.生活行為目標を本人と合意した.合意目標はカルテに記載し他職種と共有した.
【方法】カルテから後方視的に生活行為に着目し分析した.作業療法終了から1カ月後,情報の有用性についてCMにインタビュー調査を行った.本研究は当院倫理委員会の承認を受け実施している.
【結果】開始時の合意目標は『庭の水やりをしたい』であった.トイレ動作や伝い歩きを獲得したのち水やり練習を実施した.本人からは伝い歩きしながらホースを移動することに恐怖心がありながらも,実施できて嬉しいとの発言が聴かれた.退院前カンファレンスを実施し,上記目標や現状について家族・CMと情報共有を行った.庭への移動に関して段差昇降や不整地歩行の恐怖心が残存したため,本人の目標が,庭への水やりから『家族の食事の準備や味付けを行いたい』に変化した.椅子に座ってできる作業を併用するなど動作指導を行い, 34病日目自宅退院した.退院時は,前輪型歩行器歩行自立,入浴以外のADLは獲得した.FIM91点(運動項目56点).CMとの連携は退院前カンファレンス実施時,退院時と2回に分けて生活行為申し送り表を使用し実施した.入院中の本人の目標に合わせた支援内容を報告し,退院後の心不全増悪予防を含めた生活を提案した.CMへの調査結果は「疾病管理までケアプランに配慮できていなかった.」「ADL項目があることが分かりやすい.」「入院中のリハビリテーションの様子がわかると継続しやすい.」「情報が細かく記載されているので助かった.」であった.
【考察】「急性・慢性心不全ガイドライン(2017改訂版)」では入院後早期からの退院調整および退院支援は,心不全患者の退院後早期の再入院の回避に効果的である.入院中の退院調整では,退院支援の必要性の評価,具体的な支援内容の検討を行うとともに,セルフケア能力を強化するための患者教育も同時に実施する.また,患者の適切なセルフケアは心不全増悪の予防に重要な役割を果たし,セルフケア能力を向上させることにより生命予後やQOLの改善が期待できると述べられている.今回の症例では,入院後早期から多職種が連携し生活行為に着目した実践を提供してきたことがスムーズな退院支援につながったと考えられる.また,CMからのインタビュー結果からは生活行為申し送り表へは,疾病管理やセルフケアを維持するための情報も記載していく必要性があることがわかった.急性期においてもMTDLPや生活行為申し送り表を用いた作業療法介入や多職種連携は心不全予防に対して有効な介入につながることが示唆された.
【症例紹介】90代女性.現病歴:呼吸困難感が出現し救急搬送.心不全と診断され入院.4病日目より作業療法開始.既往歴:脳梗塞(後遺症なし),変形性膝関節症.初期評価:心身機能:四肢筋力MMT4.認知機能問題なし.ADL:FIM69点(運動項目34点,認知項目35点).食事整容動作は可能.その他は介助であった.病前生活:妹,娘と同居.介護保険未申請.ADLは自立.家族の食事の準備や,庭の手入れ等をして過ごしていた.6病日目興味関心チェックリスト実施.生活行為目標を本人と合意した.合意目標はカルテに記載し他職種と共有した.
【方法】カルテから後方視的に生活行為に着目し分析した.作業療法終了から1カ月後,情報の有用性についてCMにインタビュー調査を行った.本研究は当院倫理委員会の承認を受け実施している.
【結果】開始時の合意目標は『庭の水やりをしたい』であった.トイレ動作や伝い歩きを獲得したのち水やり練習を実施した.本人からは伝い歩きしながらホースを移動することに恐怖心がありながらも,実施できて嬉しいとの発言が聴かれた.退院前カンファレンスを実施し,上記目標や現状について家族・CMと情報共有を行った.庭への移動に関して段差昇降や不整地歩行の恐怖心が残存したため,本人の目標が,庭への水やりから『家族の食事の準備や味付けを行いたい』に変化した.椅子に座ってできる作業を併用するなど動作指導を行い, 34病日目自宅退院した.退院時は,前輪型歩行器歩行自立,入浴以外のADLは獲得した.FIM91点(運動項目56点).CMとの連携は退院前カンファレンス実施時,退院時と2回に分けて生活行為申し送り表を使用し実施した.入院中の本人の目標に合わせた支援内容を報告し,退院後の心不全増悪予防を含めた生活を提案した.CMへの調査結果は「疾病管理までケアプランに配慮できていなかった.」「ADL項目があることが分かりやすい.」「入院中のリハビリテーションの様子がわかると継続しやすい.」「情報が細かく記載されているので助かった.」であった.
【考察】「急性・慢性心不全ガイドライン(2017改訂版)」では入院後早期からの退院調整および退院支援は,心不全患者の退院後早期の再入院の回避に効果的である.入院中の退院調整では,退院支援の必要性の評価,具体的な支援内容の検討を行うとともに,セルフケア能力を強化するための患者教育も同時に実施する.また,患者の適切なセルフケアは心不全増悪の予防に重要な役割を果たし,セルフケア能力を向上させることにより生命予後やQOLの改善が期待できると述べられている.今回の症例では,入院後早期から多職種が連携し生活行為に着目した実践を提供してきたことがスムーズな退院支援につながったと考えられる.また,CMからのインタビュー結果からは生活行為申し送り表へは,疾病管理やセルフケアを維持するための情報も記載していく必要性があることがわかった.急性期においてもMTDLPや生活行為申し送り表を用いた作業療法介入や多職種連携は心不全予防に対して有効な介入につながることが示唆された.