[PJ-10-4] 通所リハ利用者における移動能力と手段的日常生活の関連性について
はじめに
通所リハビリテーション(以下,通所リハ)は,身体,生活機能の維持,改善や日常生活の自立に向けた支援が求められる.このため,通所リハ計画書は定期的な見直しと実現可能な目標設定を行う必要がある.一方,介護保険利用に至った高齢者の手段的日常生活動作(以下,IADL)の改善を予測することは容易ではない.移動能力はIADLの根幹となるため,IADLとの関連性を調査することで目標設定に関する示唆が得られる可能性がある.本研究では,移動能力とIADLの関連性や6ヶ月経過後のIADLの変化を調査した.
対象と方法
対象は,2020年7月から2021年10月の期間に当事業所における通所リハ利用者のうち歩行が可能であった26名,平均年齢82.4歳(71-103歳)とした.利用者の主傷病は骨関節系18名,中枢神経系3名,神経内科系2名,その他3名であり,要介護度は要支援1が 8名,2 が10名,要介護1が 4名,2が 2名,3が1名,4が 1名であった.また,日常生活で用いる歩行補助具は,なし5名,杖8名,手押し車または歩行器12名であった.
方法は,通所リハ計画書に含まれているTimed up and go test(以下,TUG)とFrenchay Activity Index(以下,FAI)を抽出した.TUGは椅子から立ち上がり,3m先の目標物で折り返し着座する一連の時間を計測した.この際,歩行補助具の利用は認め,2回の実施で速い方を代表値とした.FAIは利用者や同居家族からの申告を基に評価して合計点を算出した.本研究では初回と6ヵ月後の値を用いた.得られたTUG値をShumway-Cookの報告(2000)を参考に14秒をカットオフとした2群に分けた.
統計学的処理は,R2.8.1を使用しTUGと初回FAIについてSpearmanの順位相関係数を,TUGによる2群間での初回FAIの相違についてWilcoxonの符号付順位検定を用い,いずれも有意水準は5%未満とした.またFAI の初回と6ヶ月後の変化について,その小項目について確認した.
結果
初回TUGの平均値は13.7±4.6秒,FAIの平均値は初回18.6±8.8点,6ヵ月後18.7±8.8点であり,TUGと初回,6カ月のFAIは,いずれの時期でも有意な負の相関関係を認めた(p<0.01,r=-0.67).TUGが14秒以下は13名,平均年齢80.8歳で,TUGの平均値は10.4±2.5秒であり,15秒以上は13名,平均年齢84.0歳で,TUGの平均値は17.0±3.8秒であった.初回FAIは14秒以下で平均23.9±7.3点,15秒以上で13.2±6.8点であり,有意に15秒以上の群が低値であった(p<0.01).初回と6ヶ月後ではFAIについて統計学的な差は認めないが,2群とも外出や屋外歩行の悪化を2名認めた一方,15秒以上の群では趣味や読書でそれぞれ2名改善していた.
考察
日常生活の根幹を成す移動能力が高ければ,IADLへの参画が増える可能性が推察された.一方で,FAIの経時的な変化は起こりにくく,6ヶ月後でも初回との相違は認めなかったが,TUGが低値であっても趣味や読書など移動を伴わない活動が改善する例が散見された.このことは,利用者の趣味や嗜好に沿った支援により生活の質が向上し得る可能性が示唆された.
結語
歩行可能な通所リハ利用者では,移動能力とFAIが関連していた.FAIの経過での変化しないが,移動能力に関わらず,利用者の嗜好に沿った支援によりIADLが拡大する可能性が示唆された.
倫理的配慮,説明と同意
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には書面にて趣旨と内容について十分説明し,同意を得た.
通所リハビリテーション(以下,通所リハ)は,身体,生活機能の維持,改善や日常生活の自立に向けた支援が求められる.このため,通所リハ計画書は定期的な見直しと実現可能な目標設定を行う必要がある.一方,介護保険利用に至った高齢者の手段的日常生活動作(以下,IADL)の改善を予測することは容易ではない.移動能力はIADLの根幹となるため,IADLとの関連性を調査することで目標設定に関する示唆が得られる可能性がある.本研究では,移動能力とIADLの関連性や6ヶ月経過後のIADLの変化を調査した.
対象と方法
対象は,2020年7月から2021年10月の期間に当事業所における通所リハ利用者のうち歩行が可能であった26名,平均年齢82.4歳(71-103歳)とした.利用者の主傷病は骨関節系18名,中枢神経系3名,神経内科系2名,その他3名であり,要介護度は要支援1が 8名,2 が10名,要介護1が 4名,2が 2名,3が1名,4が 1名であった.また,日常生活で用いる歩行補助具は,なし5名,杖8名,手押し車または歩行器12名であった.
方法は,通所リハ計画書に含まれているTimed up and go test(以下,TUG)とFrenchay Activity Index(以下,FAI)を抽出した.TUGは椅子から立ち上がり,3m先の目標物で折り返し着座する一連の時間を計測した.この際,歩行補助具の利用は認め,2回の実施で速い方を代表値とした.FAIは利用者や同居家族からの申告を基に評価して合計点を算出した.本研究では初回と6ヵ月後の値を用いた.得られたTUG値をShumway-Cookの報告(2000)を参考に14秒をカットオフとした2群に分けた.
統計学的処理は,R2.8.1を使用しTUGと初回FAIについてSpearmanの順位相関係数を,TUGによる2群間での初回FAIの相違についてWilcoxonの符号付順位検定を用い,いずれも有意水準は5%未満とした.またFAI の初回と6ヶ月後の変化について,その小項目について確認した.
結果
初回TUGの平均値は13.7±4.6秒,FAIの平均値は初回18.6±8.8点,6ヵ月後18.7±8.8点であり,TUGと初回,6カ月のFAIは,いずれの時期でも有意な負の相関関係を認めた(p<0.01,r=-0.67).TUGが14秒以下は13名,平均年齢80.8歳で,TUGの平均値は10.4±2.5秒であり,15秒以上は13名,平均年齢84.0歳で,TUGの平均値は17.0±3.8秒であった.初回FAIは14秒以下で平均23.9±7.3点,15秒以上で13.2±6.8点であり,有意に15秒以上の群が低値であった(p<0.01).初回と6ヶ月後ではFAIについて統計学的な差は認めないが,2群とも外出や屋外歩行の悪化を2名認めた一方,15秒以上の群では趣味や読書でそれぞれ2名改善していた.
考察
日常生活の根幹を成す移動能力が高ければ,IADLへの参画が増える可能性が推察された.一方で,FAIの経時的な変化は起こりにくく,6ヶ月後でも初回との相違は認めなかったが,TUGが低値であっても趣味や読書など移動を伴わない活動が改善する例が散見された.このことは,利用者の趣味や嗜好に沿った支援により生活の質が向上し得る可能性が示唆された.
結語
歩行可能な通所リハ利用者では,移動能力とFAIが関連していた.FAIの経過での変化しないが,移動能力に関わらず,利用者の嗜好に沿った支援によりIADLが拡大する可能性が示唆された.
倫理的配慮,説明と同意
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には書面にて趣旨と内容について十分説明し,同意を得た.