[PJ-11-1] プール活動レベルを活用した一例
【はじめに】
今回,大腿骨転子部骨折を呈した認知症のある高齢者に対し,プール活動レベル(以下,PAL)を活用した介入を実施.結果,行動・心理症状(以下,BPSD)と介護負担の軽減に至った為以下に報告する.なお研究の報告に関して,本人・ご家族へ十分な説明を行い,了承を得ている.
【症例紹介】
80代後半,女性,独居.セルフケアは自立.日課は散歩や畑作業.買い物の支援は娘がしていた.若い頃は高齢者施設で支援に参加するなど人に奉仕することに生きがいを感じる性格. X年Y月Z日,自宅椅子から転倒.右大腿骨転子部骨折の為,Z+7日骨接合術を施行.Z+46日,回復期病棟に入棟した.入棟時から転帰先は施設入所となっていた.
【作業療法評価】
HDS-R:6/30点.意思疎通は可能.帰宅願望や尿意など同じ訴えを繰り返していた.PAL:感覚活動レベル.MMT:右下肢4レベル.BPSD+Q/BPSD25Q:重症度35負担度31.徘徊,不穏,脱抑制,繰り返しの質問など過活動スコアが最も高かった.Zarit介護負担尺度:25点.FIM:61点.右股関節の疼痛に伴う跛行と自身でのリスク管理が困難な為,車椅子介助で移動.日中は食事やトイレ,入浴以外はデイルームで無為に過ごし,自発的な訴えは尿意の訴え程度であった.頻回に立ち上がり,1日15~20回トイレに誘導していたが,排尿がないことも多かった.夜間,伝い歩きで自室から病棟廊下まで出てくる為,頻回に見守る等の対策が必要であった.以上の結果を踏まえ,不穏状態が軽減することを目的に,施設内での役割と家族との連絡手段が獲得できることを目標に介入をすすめた.
【経過】
Ⅰ期:病棟内で役割の獲得を図る為に作業活動を導入しBPSDの軽減を図った.エプロンを畳む活動や病棟に飾る作品の作成を提案.落ち着いて作業に取り組むことができた.PALの結果や活動時の様子をチーム内で共有.作業内容に加え声掛けの具体例を伝達し,病棟でも取り入れてもらった.趣味である畑仕事も導入し,水やりなどを施行した.Ⅱ期:ポータブルトイレを「排泄場所」と認識しておらずトイレを探して廊下まで出てきていた.トイレとして認識できるように文字や孫の写真を用いて介入した.Ⅲ期:入院時より携帯電話を所持していた為,それを通して娘と繋がりを獲得できるように操作練習を開始した.ボタンを押さなくても通話できる機能等を活用し,電話が鳴っても認識できない状態から声掛けすれば笑顔で通話することができるようになった.電話中は落ち着いて過ごすことができた.Z+125病日目,施設入所の為退院.書面での申し送りを行った.
【結果】
HDS-R:8/30点.MMT:右下肢4~5レベル.BPSD+Q/BPSD25Q:重症度17負担度12.Zarit介護負担尺度:11点.PAL:感覚活動レベル.PALを活用して情報共有することで多職種間の対象者に対する声掛けや関わりを統一することができた.FIM:82点.病棟では役割をもって活動することができ,他患と会話して過ごす場面も増えた.トイレを訴える回数が10回未満となり,夜間トイレ動作が自立し自室から出てくることもなくなったことで,ケアスタッフが感じる負担感の軽減を認めた.
【考察】
PALチェックリストを指標にすることで,対象者が可能な作業レベルから介入でき,他職種と共通した関わりができた.その結果,BPSDの軽減を図ることができ,ケアスタッフが感じている介護負担感の軽減に繋げることができると考える.
今回,大腿骨転子部骨折を呈した認知症のある高齢者に対し,プール活動レベル(以下,PAL)を活用した介入を実施.結果,行動・心理症状(以下,BPSD)と介護負担の軽減に至った為以下に報告する.なお研究の報告に関して,本人・ご家族へ十分な説明を行い,了承を得ている.
【症例紹介】
80代後半,女性,独居.セルフケアは自立.日課は散歩や畑作業.買い物の支援は娘がしていた.若い頃は高齢者施設で支援に参加するなど人に奉仕することに生きがいを感じる性格. X年Y月Z日,自宅椅子から転倒.右大腿骨転子部骨折の為,Z+7日骨接合術を施行.Z+46日,回復期病棟に入棟した.入棟時から転帰先は施設入所となっていた.
【作業療法評価】
HDS-R:6/30点.意思疎通は可能.帰宅願望や尿意など同じ訴えを繰り返していた.PAL:感覚活動レベル.MMT:右下肢4レベル.BPSD+Q/BPSD25Q:重症度35負担度31.徘徊,不穏,脱抑制,繰り返しの質問など過活動スコアが最も高かった.Zarit介護負担尺度:25点.FIM:61点.右股関節の疼痛に伴う跛行と自身でのリスク管理が困難な為,車椅子介助で移動.日中は食事やトイレ,入浴以外はデイルームで無為に過ごし,自発的な訴えは尿意の訴え程度であった.頻回に立ち上がり,1日15~20回トイレに誘導していたが,排尿がないことも多かった.夜間,伝い歩きで自室から病棟廊下まで出てくる為,頻回に見守る等の対策が必要であった.以上の結果を踏まえ,不穏状態が軽減することを目的に,施設内での役割と家族との連絡手段が獲得できることを目標に介入をすすめた.
【経過】
Ⅰ期:病棟内で役割の獲得を図る為に作業活動を導入しBPSDの軽減を図った.エプロンを畳む活動や病棟に飾る作品の作成を提案.落ち着いて作業に取り組むことができた.PALの結果や活動時の様子をチーム内で共有.作業内容に加え声掛けの具体例を伝達し,病棟でも取り入れてもらった.趣味である畑仕事も導入し,水やりなどを施行した.Ⅱ期:ポータブルトイレを「排泄場所」と認識しておらずトイレを探して廊下まで出てきていた.トイレとして認識できるように文字や孫の写真を用いて介入した.Ⅲ期:入院時より携帯電話を所持していた為,それを通して娘と繋がりを獲得できるように操作練習を開始した.ボタンを押さなくても通話できる機能等を活用し,電話が鳴っても認識できない状態から声掛けすれば笑顔で通話することができるようになった.電話中は落ち着いて過ごすことができた.Z+125病日目,施設入所の為退院.書面での申し送りを行った.
【結果】
HDS-R:8/30点.MMT:右下肢4~5レベル.BPSD+Q/BPSD25Q:重症度17負担度12.Zarit介護負担尺度:11点.PAL:感覚活動レベル.PALを活用して情報共有することで多職種間の対象者に対する声掛けや関わりを統一することができた.FIM:82点.病棟では役割をもって活動することができ,他患と会話して過ごす場面も増えた.トイレを訴える回数が10回未満となり,夜間トイレ動作が自立し自室から出てくることもなくなったことで,ケアスタッフが感じる負担感の軽減を認めた.
【考察】
PALチェックリストを指標にすることで,対象者が可能な作業レベルから介入でき,他職種と共通した関わりができた.その結果,BPSDの軽減を図ることができ,ケアスタッフが感じている介護負担感の軽減に繋げることができると考える.