[PJ-11-3] 急性期病院の認知症患者に対する作業療法実践
【はじめに】 身体障害領域における急性期病院(以下,急性期病院)では ,治療や入院による高齢者の認知症状の行動・心理症状(以下,BPSD)の出現とそれに伴う強い不安・混乱・自尊心の低下が問題となっている.急性期病院において,介入初期からのクライエント中心とした作業療法(以下,OT)が求められるが,医学的治療やケアが優先され,十分に行えていない状況がある.石川ら(2021)は,急性期病院の目標設定の障壁をあげている.本研究は,急性期病院でのOTの介入初期の実践を明らかにすることを目的に,文献レビューを行った. OT協会倫理指針に基づき実施している.
【方法】 検索日は,2022年12月22日とし,検索エンジンは医中誌web Ver.5,作業療法協会事例登録制度(以下,事例登録制度)を用いた.検索式は,医中誌では,「急性期」,「作業療法」,「認知症」,「事例または介入」,事例登録制度では,「急性期」,「身体障害」,「認知症」とした.包含基準は,2012年から2022年に発表された論文(医中誌は原著)とし,介入内容がわかる事例報告や介入研究を適合論文とした.除外基準は,解説,総説,会議録および精神科,急性期以外の文献とした.適合論文について,OT介入時期,認知機能別重症度分類(以下,重症度分類),OT介入内容,アウトカム(標準化された評価,質的評価)を抽出し整理した.重症度分類は,認知機能評価のうちMMSEおよびHDS-Rの結果を用い,軽度(MMSE23点以下,HDS-R20点以下),中等度(MMSE20-11点,HDS-R15-10点),重度(MMSE10点未満,HDS-R10点未満)とした. アウトカムは,横山ら(2019)を参考に,標準化された評価は,FIMやMMSE等の評価スケール用いた評価とし,質的評価は,標準化された評価以外の観察を中心とした評価とした.
【結果】 適合論文は12編であり,介入時期とその内容が不明であった論文1編を除く11編を分析対象とした.入院前から認知症を有するのは8件であった.主疾患は,脳卒中3件,骨折5件,心疾患1件,その他疾患3件であった.入院前環境は自宅8件,施設1件,グループホーム2件であった.介入開始時期は,2病日目7件,5病日目1件,15病日目1件,不明2件であった.重症度分類は,軽度3件,中等度4件,重度4件であった.介入初期のOT内容は,重症度別に,軽度は会話・傾聴1件,機能訓練・離床2件,中等度は会話・傾聴1件,趣味等意味のある活動2件,機能訓練2件,重度は機能訓練・離床が2件,意味のある活動2件,連携1件であった.このうち4件は,BPSDによる離床拒否等により,機能訓練,離床を行えず,のちに意味のある作業の介入を変更していた.アウトカムは,軽度では,ADL,認知機能評価の改善3件,質的評価の改善13件,中等度では機能評価の改善4件,質的改善16件,重度では機能評価4件,質的評価の改善20件であった.
【考察】 OT介入は,多くが入院早期から実施され,介入初期のOT内容は,重症度にかかわらず,離床,機能訓練,ADL訓練に加え,半数は初期から趣味活動や会話を行っていた.介入終了時のアウトカムは,FIMやMMSE等の評価以外に,質的な評価の改善が報告されていた.「認知症の評価の手引き」(2019)では,認知症急性期は,BPSDを軽減する取り組みとして生活歴などのナラティブを十分把握した介入が推奨されている.本研究の限界として,本研究の適合論文は11編と少なく,今後急性期における介入の現状を調査していく必要がある.
【結論】 急性期の高齢者は,環境や身体機能の変化によりBPSD を引き起こしやすい.認知機能の重症度に関わらず,身体機能の維持とクライエント中心の介入を同時に図っていく必要があると考える.
【方法】 検索日は,2022年12月22日とし,検索エンジンは医中誌web Ver.5,作業療法協会事例登録制度(以下,事例登録制度)を用いた.検索式は,医中誌では,「急性期」,「作業療法」,「認知症」,「事例または介入」,事例登録制度では,「急性期」,「身体障害」,「認知症」とした.包含基準は,2012年から2022年に発表された論文(医中誌は原著)とし,介入内容がわかる事例報告や介入研究を適合論文とした.除外基準は,解説,総説,会議録および精神科,急性期以外の文献とした.適合論文について,OT介入時期,認知機能別重症度分類(以下,重症度分類),OT介入内容,アウトカム(標準化された評価,質的評価)を抽出し整理した.重症度分類は,認知機能評価のうちMMSEおよびHDS-Rの結果を用い,軽度(MMSE23点以下,HDS-R20点以下),中等度(MMSE20-11点,HDS-R15-10点),重度(MMSE10点未満,HDS-R10点未満)とした. アウトカムは,横山ら(2019)を参考に,標準化された評価は,FIMやMMSE等の評価スケール用いた評価とし,質的評価は,標準化された評価以外の観察を中心とした評価とした.
【結果】 適合論文は12編であり,介入時期とその内容が不明であった論文1編を除く11編を分析対象とした.入院前から認知症を有するのは8件であった.主疾患は,脳卒中3件,骨折5件,心疾患1件,その他疾患3件であった.入院前環境は自宅8件,施設1件,グループホーム2件であった.介入開始時期は,2病日目7件,5病日目1件,15病日目1件,不明2件であった.重症度分類は,軽度3件,中等度4件,重度4件であった.介入初期のOT内容は,重症度別に,軽度は会話・傾聴1件,機能訓練・離床2件,中等度は会話・傾聴1件,趣味等意味のある活動2件,機能訓練2件,重度は機能訓練・離床が2件,意味のある活動2件,連携1件であった.このうち4件は,BPSDによる離床拒否等により,機能訓練,離床を行えず,のちに意味のある作業の介入を変更していた.アウトカムは,軽度では,ADL,認知機能評価の改善3件,質的評価の改善13件,中等度では機能評価の改善4件,質的改善16件,重度では機能評価4件,質的評価の改善20件であった.
【考察】 OT介入は,多くが入院早期から実施され,介入初期のOT内容は,重症度にかかわらず,離床,機能訓練,ADL訓練に加え,半数は初期から趣味活動や会話を行っていた.介入終了時のアウトカムは,FIMやMMSE等の評価以外に,質的な評価の改善が報告されていた.「認知症の評価の手引き」(2019)では,認知症急性期は,BPSDを軽減する取り組みとして生活歴などのナラティブを十分把握した介入が推奨されている.本研究の限界として,本研究の適合論文は11編と少なく,今後急性期における介入の現状を調査していく必要がある.
【結論】 急性期の高齢者は,環境や身体機能の変化によりBPSD を引き起こしやすい.認知機能の重症度に関わらず,身体機能の維持とクライエント中心の介入を同時に図っていく必要があると考える.