[PJ-12-5] 慢性期病院における排尿自立支援の取り組みと効果
【序論】
平成28年度より診療報酬として排尿自立指導料の算定が新設され,排尿自立の促進の必要性が見直されてきた.さらに令和2年度の診療報酬改定では,これまで医学管理料として設定されていた「排尿自立指導料」が,基本診療料として「外来排尿自立指導料」,「排尿自立支援加算」に代わり,医療従事者における排尿に関する知識や技能の向上がより一層求められている.
【目的】
当院では令和1年度より排尿ケアチームを発足し,排尿自立指導料(現在:排尿自立支援加算)の算定を開始した.今回,慢性期医療分野における排尿自立支援の効果を後方視的に調査した.
【排尿ケアチームでの活動】
当院では排泄ケア委員会(医師,看護師,介護士,リハビリ等計15名)が月1回会議を実施し,各病棟での尿道カテーテルの留置状況,抜去者の報告・共有,排泄に関する勉強会を行っており,尿道カテーテル抜去を推進している.また,排尿ケアチーム(医師,看護師,作業療法士)にて排尿自立支援加算対象患者に,排尿ラウンドを実施し,計画書の作成,指導を実施している.
【対象】
令和1年5月~令和4年10月の間に,尿道カテーテルを抜去し排尿自立支援加算の算定対象となった患者41名(男性9名,女性32名) ,平均年齢89.2歳を対象とした.疾患内訳は呼吸器(肺炎等)5名,循環器13名,整形(骨折等)6名,脳外11名,内科6名.
【方法】
方法として①機能的自立度評価(以下:FIM)の合計と,詳細項目(食事,下衣更衣,排泄,尿意,便意,トイレ移乗,理解,表出) ,②排尿ケアに向けたスクリーニング評価指標(以下:排尿自立度・下部尿路機能)を算定初回時と終了時で測定し,変化値を調査した.また,統計には対応のあるt検定を用い,有意水準はp<0.05とした.また本研究は対象者の同意を得ており,当院倫理審査委員会の承認を受けている.
【結果】
排尿自立支援加算の算定回数は一人当たり平均5.5回(最少3回~最高12回)であり,初回算定時の平均FIMは38.2点であった.①FIMの平均改善点数は合計が7.5点,詳細項目では食事0.48点,下衣更衣0.48点,排泄0.58点,尿意0.78点,便意0.52点,トイレ移乗0.78点であり,優位に改善を認めた.理解は0.18点,表出は0.1点と有意差はないが改善が見られた.②下部尿路機能は0.7点と優位に改善が見られ,排尿自立度は0.38点の改善であった.
【考察】
近年,尿道カテーテルの抜去に伴い1日も早いトイレ排泄の実施や排尿自立の促進は,人としての尊厳が守られるだけでなく,寝たきりの防止や在宅復帰の促進,生活の質向上にも影響があるとされている.今回,トイレ排泄を目指す事で離床が促進され,トイレ動作や下衣更衣等の直接的な動作能力の改善だけでなく,食事意欲や尿・便意の有無にも効果的だったと考える.特に高齢者では加齢や認知症だけでなく,様々な合併症の影響から排泄における問題に直面する事も多いため,多職種での原因の追求と情報共有を徹底し,患者の状態に合わせた包括的排尿ケアが重要だと考える.今後も他職種間での問題の把握と情報共有を行い,チームでの排尿ケアを展開したい.
【結語】
慢性期医療分野におけるチームでの排尿ケアは,高齢患者の日常生活能力改善に有用であることが示唆された.
平成28年度より診療報酬として排尿自立指導料の算定が新設され,排尿自立の促進の必要性が見直されてきた.さらに令和2年度の診療報酬改定では,これまで医学管理料として設定されていた「排尿自立指導料」が,基本診療料として「外来排尿自立指導料」,「排尿自立支援加算」に代わり,医療従事者における排尿に関する知識や技能の向上がより一層求められている.
【目的】
当院では令和1年度より排尿ケアチームを発足し,排尿自立指導料(現在:排尿自立支援加算)の算定を開始した.今回,慢性期医療分野における排尿自立支援の効果を後方視的に調査した.
【排尿ケアチームでの活動】
当院では排泄ケア委員会(医師,看護師,介護士,リハビリ等計15名)が月1回会議を実施し,各病棟での尿道カテーテルの留置状況,抜去者の報告・共有,排泄に関する勉強会を行っており,尿道カテーテル抜去を推進している.また,排尿ケアチーム(医師,看護師,作業療法士)にて排尿自立支援加算対象患者に,排尿ラウンドを実施し,計画書の作成,指導を実施している.
【対象】
令和1年5月~令和4年10月の間に,尿道カテーテルを抜去し排尿自立支援加算の算定対象となった患者41名(男性9名,女性32名) ,平均年齢89.2歳を対象とした.疾患内訳は呼吸器(肺炎等)5名,循環器13名,整形(骨折等)6名,脳外11名,内科6名.
【方法】
方法として①機能的自立度評価(以下:FIM)の合計と,詳細項目(食事,下衣更衣,排泄,尿意,便意,トイレ移乗,理解,表出) ,②排尿ケアに向けたスクリーニング評価指標(以下:排尿自立度・下部尿路機能)を算定初回時と終了時で測定し,変化値を調査した.また,統計には対応のあるt検定を用い,有意水準はp<0.05とした.また本研究は対象者の同意を得ており,当院倫理審査委員会の承認を受けている.
【結果】
排尿自立支援加算の算定回数は一人当たり平均5.5回(最少3回~最高12回)であり,初回算定時の平均FIMは38.2点であった.①FIMの平均改善点数は合計が7.5点,詳細項目では食事0.48点,下衣更衣0.48点,排泄0.58点,尿意0.78点,便意0.52点,トイレ移乗0.78点であり,優位に改善を認めた.理解は0.18点,表出は0.1点と有意差はないが改善が見られた.②下部尿路機能は0.7点と優位に改善が見られ,排尿自立度は0.38点の改善であった.
【考察】
近年,尿道カテーテルの抜去に伴い1日も早いトイレ排泄の実施や排尿自立の促進は,人としての尊厳が守られるだけでなく,寝たきりの防止や在宅復帰の促進,生活の質向上にも影響があるとされている.今回,トイレ排泄を目指す事で離床が促進され,トイレ動作や下衣更衣等の直接的な動作能力の改善だけでなく,食事意欲や尿・便意の有無にも効果的だったと考える.特に高齢者では加齢や認知症だけでなく,様々な合併症の影響から排泄における問題に直面する事も多いため,多職種での原因の追求と情報共有を徹底し,患者の状態に合わせた包括的排尿ケアが重要だと考える.今後も他職種間での問題の把握と情報共有を行い,チームでの排尿ケアを展開したい.
【結語】
慢性期医療分野におけるチームでの排尿ケアは,高齢患者の日常生活能力改善に有用であることが示唆された.