第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-12] ポスター:高齢期 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-12-6] 療養病床に新規入棟した患者におけるADL,精神機能,離床時間の経時的変化

立川 智也, 那須 高志 (医療法人社団協友会 越谷誠和病院リハビリテーション科)

【目的】
 療養病床の入院患者は75歳以上の高齢者が77%以上であり,要介護4と5を合わせて全体の約40%を占めている.高齢者に対するリハビリテーションの有効性に関しては,筋力増強,歩行能力の改善,要介護度や主観的評価の改善にも効果を与える可能性があるとされている.療養病床においては,入院中である維持期の後期高齢者に運動療法を継続することでActivities of Daily Living (以下,ADL)と精神機能の低下を防ぐ可能性があると報告されている.一方で,新規に療養病床に入棟した患者の身体機能と精神機能の経時的変化を報告した研究は存在していない.そこで本研究では療養病床に新規入棟した患者を対象に,ADL,精神機能,離床時間の4ヶ月後の経時的変化を報告する.
【方法】
 当院はケアミックス病院であり急性期病棟と障害者病棟と療養病床が存在し,療養病棟の入棟者は院内からの転棟と他院から転院する場合がある.対象は2022年2月から2022年8月までに当院療養病床に新規入棟した34名(男性15名,女性19名,平均年齢80.5±7.8歳)とした.入棟後1ヶ月以内に退院し再評価が実施できなかった者と4ヶ月以内に死亡退院となった者を除外した.評価項目は,離床時間,リハビリでの離床時間,食事摂取場所,排泄場所,体重,Body Mass Index(以下,BMI),下腿周径,改訂長谷川式簡易知能スケール(以下,HDS-R),Cognitive Test for Severe Dementia(以下,CTSD),Functional Independence Measure(以下,FIM),N式老年者用精神状態尺度(以下,NMスケール),N式老年者用日常生活活動動作能力評価(以下,N-ADL),Dementia Behavior Scale13(以下,DBD13)とした.これらを療養病床入棟時に評価し,4ヶ月後もしくは退院時に再評価を行った.統計解析は初期評価と再評価についてWilcoxon符号付順位検定を行った.いずれの解析においても有意水準は5%未満とした.なお,本研究は越谷誠和病院倫理審査委員会の承認(承認番号08)を得て実施した.
【結果】
疾患名は脱水症7名,尿路感染症4名,腎盂腎炎2名,誤嚥性肺炎8名,間質性肺炎1名,イレウス1名,脳出血2名,低カリウム血症1名,食道裂孔ヘルニア1名,食思不振1名,褥瘡1名,体動困難1名,うっ血性心不全1名,Covid-19感染後1名,熱中症1名,低ナトリウム血症1名であった.初期評価と再評価を比べ有意に増加したものは離床時間,リハビリでの離床時間,食事摂取場所,排泄場所,FIM運動項目,FIM合計,NMスケール合計,N-ADL合計,DBD13であった.有意に減少したものはBMIであった.
【考察】
 先行研究と同様に当院においても離床時間が確保されたことがFIMの改善に寄与している可能性が考えられた.一方で,障害高齢者の日常生活自立度のランクに応じた離床時間を確保することで日常生活自立度の低下を抑制できる可能性が報告されているが,本研究における対象者の離床時間は全体的に不十分であった.しかし,FIMの改善を示していることから,離床時間が先行研究の基準に満たなくても,入棟から短期的にはFIM改善が期待できる可能性が考えられた.BMIは4カ月で有意に減少していたが,初回評価時よりサルコペニアのスクリーニング基準を下回っていた.在宅高齢者においては1年後でもBMIの有意差はみられなかったことから,療養病床では入棟時のサルコペニアが4カ月間でさらに進行していること示唆された.DBD13は有意に増加しており,認知症の行動心理症状の悪化が認められた.精神科単科病院や回復期リハビリテーション病棟での報告では行動心理症状の改善傾向が示されており,当院の療養病床では行動心理症状が悪化している点に相違がみられた.