[PJ-2-2] 認知機能低下患者の健康関連QOLと食事関連要素との関係
【背景】
現在, 高齢者の増加に伴い, 認知機能の低下を呈している患者も増加している. 対象者の生活を支援する為には身体機能のみならずQOLも重要である. 認知症のQOL測定には自記式のアンケート形式のものやQOL-DやDQOLなどがあるが, 項目数が多く簡便な評価が困難という問題がある. EuroQol-5Dimensions(EQ-5D) は認知機能低下者でもQOLを測定できる代理回答が可能である. 高齢者のQOLには心身機能の他に, 認知機能やADLなど様々な要因が関連する事が報告されている(田村ら 2018). 特に食事は楽しみや幸福感と関連することが報告されており(森崎ら 2013), QOLとの関連も強いことが予想される. そこで本研究では, 認知機能低下者の健康関連QOLを調査し, それと関連する要因を抽出する事を目的とした. また, 本研究の仮説は認知機能低下者のQOLは食事と関連があるとした.
【方法】
研究デザインは横断観察研究とした. 対象は回復期リハビリテーション病棟に入院した認知機能低下患者とした. 被験者の認知機能の調査はMini Mental State Examination (MMSE) を用いて, 得点が18点以下の者を認知機能低下者とした. 除外基準として, 失語症を有するものとした. メインアウトカムとしてのQOL測定はEuroQol 5 Dimensions 5-level (EQ-5D-5L), サブアウトカムとしての食事関連情報は食事の摂取量 (全量摂取した場合を10とし, 摂取割合を記録), BPSD日本語版Dementia Behavior Disturbance Scale短縮版 (DBD-13), 高次脳機能障害はCognitive-related Behavioral Assessment (CBA), ADLはFIMを使用した. また,その他の情報としてBMI, リハビリ単位数を採取した. データの収集期間は2022年11月1日~2023年1月31日とし, データの測定方法はEQ-5D-5L, DBD-13, CBAについては担当者による代理評価とし, MMSE, 食事摂取量, FIM, BMI, リハビリ単位数についてはカルテを参照した. 統計解析はSpearmanの順位相関係数を使用し, 有意水準は5%とした. 倫理的配慮として, 当院倫理委員会の承認を得て, 対象被験者への同意方法はオプトアウト方式を採用した.
【結果】
対象被験者は16名 (男性3名, 女性13名, 平均83±6歳), 疾患の内訳は, 中枢疾患5名, 整形疾患7名, 廃用症候群4名であった. EQ-5D-5LのQOL値0.61±0.21 (平均値±標準偏差) と主食の摂取量8.6±1.7 (r=0.018, p=0.927) に相関はなかった. QOL値と相関があった項目として, MMSEの書字理解0.7±0.5 (r=-0.482, p=0.03), FIMの理解3.0±0.8 (r=-0.439,p=0.03), 問題解決1.7±0.8 (r=-0.572, p=0.01) であった. その他の要因では有意な相関は認められなかった.
【考察】
虚弱高齢者を対象とした研究では, 摂食・嚥下機能と健康関連QOLに有意な正の相関を示した (森崎ら 2013). このことから食事とQOLには関連が強いことが予想される. しかし, 本研究では, 食事とQOLに有意な相関は得られなかった. 今回の対象者は疾患や身体能力, 食形態など対象者によって異なる能力の者を同時に取り込んだため被験者間での能力差が大きかったことが予想される. よって摂食能力が同等な者だけを抽出した再解析が必要となる.
本研究では, FIMの認知項目(理解, 問題解決)において, 負の相関が認められた. 先行研究において, 認知症でない高齢者を対象とした研究では, 三宅式記銘力検査の得点と主観的幸福感尺度による心の健康度の得点に有意な負の相関を認めた (渡邉ら 2021). このことから記憶が低い者ほど主観的幸福度が高いことが示唆されている.
現在, 高齢者の増加に伴い, 認知機能の低下を呈している患者も増加している. 対象者の生活を支援する為には身体機能のみならずQOLも重要である. 認知症のQOL測定には自記式のアンケート形式のものやQOL-DやDQOLなどがあるが, 項目数が多く簡便な評価が困難という問題がある. EuroQol-5Dimensions(EQ-5D) は認知機能低下者でもQOLを測定できる代理回答が可能である. 高齢者のQOLには心身機能の他に, 認知機能やADLなど様々な要因が関連する事が報告されている(田村ら 2018). 特に食事は楽しみや幸福感と関連することが報告されており(森崎ら 2013), QOLとの関連も強いことが予想される. そこで本研究では, 認知機能低下者の健康関連QOLを調査し, それと関連する要因を抽出する事を目的とした. また, 本研究の仮説は認知機能低下者のQOLは食事と関連があるとした.
【方法】
研究デザインは横断観察研究とした. 対象は回復期リハビリテーション病棟に入院した認知機能低下患者とした. 被験者の認知機能の調査はMini Mental State Examination (MMSE) を用いて, 得点が18点以下の者を認知機能低下者とした. 除外基準として, 失語症を有するものとした. メインアウトカムとしてのQOL測定はEuroQol 5 Dimensions 5-level (EQ-5D-5L), サブアウトカムとしての食事関連情報は食事の摂取量 (全量摂取した場合を10とし, 摂取割合を記録), BPSD日本語版Dementia Behavior Disturbance Scale短縮版 (DBD-13), 高次脳機能障害はCognitive-related Behavioral Assessment (CBA), ADLはFIMを使用した. また,その他の情報としてBMI, リハビリ単位数を採取した. データの収集期間は2022年11月1日~2023年1月31日とし, データの測定方法はEQ-5D-5L, DBD-13, CBAについては担当者による代理評価とし, MMSE, 食事摂取量, FIM, BMI, リハビリ単位数についてはカルテを参照した. 統計解析はSpearmanの順位相関係数を使用し, 有意水準は5%とした. 倫理的配慮として, 当院倫理委員会の承認を得て, 対象被験者への同意方法はオプトアウト方式を採用した.
【結果】
対象被験者は16名 (男性3名, 女性13名, 平均83±6歳), 疾患の内訳は, 中枢疾患5名, 整形疾患7名, 廃用症候群4名であった. EQ-5D-5LのQOL値0.61±0.21 (平均値±標準偏差) と主食の摂取量8.6±1.7 (r=0.018, p=0.927) に相関はなかった. QOL値と相関があった項目として, MMSEの書字理解0.7±0.5 (r=-0.482, p=0.03), FIMの理解3.0±0.8 (r=-0.439,p=0.03), 問題解決1.7±0.8 (r=-0.572, p=0.01) であった. その他の要因では有意な相関は認められなかった.
【考察】
虚弱高齢者を対象とした研究では, 摂食・嚥下機能と健康関連QOLに有意な正の相関を示した (森崎ら 2013). このことから食事とQOLには関連が強いことが予想される. しかし, 本研究では, 食事とQOLに有意な相関は得られなかった. 今回の対象者は疾患や身体能力, 食形態など対象者によって異なる能力の者を同時に取り込んだため被験者間での能力差が大きかったことが予想される. よって摂食能力が同等な者だけを抽出した再解析が必要となる.
本研究では, FIMの認知項目(理解, 問題解決)において, 負の相関が認められた. 先行研究において, 認知症でない高齢者を対象とした研究では, 三宅式記銘力検査の得点と主観的幸福感尺度による心の健康度の得点に有意な負の相関を認めた (渡邉ら 2021). このことから記憶が低い者ほど主観的幸福度が高いことが示唆されている.