[PJ-2-4] 重度アルツハイマー型認知症高齢者に対する組み合わせ非薬物的介入の効果
【背景】地域在住の認知症高齢者において,認知症重症度の進行は本人とその介護者の生活の質の低下をもたらす.特に重度アルツハイマー型認知症では,認知機能障害や認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD),日常生活活動(activities of daily living:ADL)の障害は深刻な問題となり,結果的に地域生活が困難となる事で施設入所に繋がる.重度アルツハイマー型認知症の高齢者が地域生活を継続できるように支援するために,重度アルツハイマー型認知症を対象とした重症化予防の為の非薬物的介入の開発が求められている.
【目的】本研究では回想法,コーヒー療法,ADL実践を組み合わせた非薬物的介入が通所介護を利用する重度アルツハイマー型認知症高齢者の認知症重度化の予防・改善効果を有するかどうか,これまで実践してきた時系列データから後方視的に検討する事を目的とした.
【方法】対象は2021年12月~2022年5月までの期間,通所介護週1回,1回60分のプログラムに参加した重度アルツハイマー型認知症の高齢者2名であった(参加者1:78歳女性,MMSE10点,CDR3;参加者2:86歳女性,MMSE拒否,CDR3).プログラム内容は4名の集団で行われ,回想法による心理的安定,コーヒー療法(カフェイン85mg(フィルターコーヒー140mlカップ1杯)を基準とした)による心理的安定や回想の誘発,記憶を中心とした認知機能への刺激,ADL実践(食器の配置やコーヒーを注ぐなど)による認知機能やADL能力への刺激により,認知症重度化の予防・改善へと繋げる事を狙った組み合わせとした(研究報告への同意が得られたのは2名であった).実践前に介入内容を検討した時期(普段通所介護で行われているレクリエーションや体操などに参加)をA期(参加者1は9週,参加者2は4週),介入開始後はB期(参加者1は13週,参加者2は10週)とした.結果では,対象者の事をよく知る者(主介護者など)への質問によって対象者の認知症重症度を得点化するABC Dementia Scale(ABC-DS:13~117点,得点が低いほど重度)を週1回の頻度で実施し,ベイジアン変化点検出により変化点の検出と両期におけるABC-DSの母数および効果量を推定した.統計解析ソフトはRを用い,推定された結果は両期の95%ベイズ信頼区間の数値が重複しておらず,効果量が0を含まない場合に有意と解釈した.
【結果】参加者1は介入開始よりも前の時点(平均推定値4.52(週))で変化点が検出され,参加者2は介入開始直後(平均推定値5.01(週))に変化点が検出された.参加者1のABC-DSの平均推定値はA期よりもB期の方が高く95%ベイズ信頼区間も重複していなかった(A期59.61[57.81, 61.49],B期63.53[62.04, 64.83]).参加者2のABC-DSの平均推定値はA期よりもB期の方が高かったが,95%ベイズ信頼区間はわずかに重複していた(A期63.00[61.55, 64.43],B期65.41[64.42, 66.44]).平均効果量は両者ともに有意であった(参加者1:1.29[0.28, 2.44];参加者2:1.65[0.20, 3.25]).
【考察】参加者1と2にABC-DSの有意な改善の傾向を認めた事から,本介入は重度アルツハイマー型認知症高齢者の重症化の予防・改善効果が期待できると考えられた.参加者1の変化点が介入開始よりも前の時点で検出されたことに関しては,周期的な何らかの要因が関与したものと思われた.今後はより厳密な介入デザインを用いて,多くの対象者に実施していく事で更に効果を検証していく必要がある.
【倫理的配慮】本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得た(2022C0005).対象者とその家族(または後見人)に対しては,書面及び口頭で内容を説明し同意を得た.
【目的】本研究では回想法,コーヒー療法,ADL実践を組み合わせた非薬物的介入が通所介護を利用する重度アルツハイマー型認知症高齢者の認知症重度化の予防・改善効果を有するかどうか,これまで実践してきた時系列データから後方視的に検討する事を目的とした.
【方法】対象は2021年12月~2022年5月までの期間,通所介護週1回,1回60分のプログラムに参加した重度アルツハイマー型認知症の高齢者2名であった(参加者1:78歳女性,MMSE10点,CDR3;参加者2:86歳女性,MMSE拒否,CDR3).プログラム内容は4名の集団で行われ,回想法による心理的安定,コーヒー療法(カフェイン85mg(フィルターコーヒー140mlカップ1杯)を基準とした)による心理的安定や回想の誘発,記憶を中心とした認知機能への刺激,ADL実践(食器の配置やコーヒーを注ぐなど)による認知機能やADL能力への刺激により,認知症重度化の予防・改善へと繋げる事を狙った組み合わせとした(研究報告への同意が得られたのは2名であった).実践前に介入内容を検討した時期(普段通所介護で行われているレクリエーションや体操などに参加)をA期(参加者1は9週,参加者2は4週),介入開始後はB期(参加者1は13週,参加者2は10週)とした.結果では,対象者の事をよく知る者(主介護者など)への質問によって対象者の認知症重症度を得点化するABC Dementia Scale(ABC-DS:13~117点,得点が低いほど重度)を週1回の頻度で実施し,ベイジアン変化点検出により変化点の検出と両期におけるABC-DSの母数および効果量を推定した.統計解析ソフトはRを用い,推定された結果は両期の95%ベイズ信頼区間の数値が重複しておらず,効果量が0を含まない場合に有意と解釈した.
【結果】参加者1は介入開始よりも前の時点(平均推定値4.52(週))で変化点が検出され,参加者2は介入開始直後(平均推定値5.01(週))に変化点が検出された.参加者1のABC-DSの平均推定値はA期よりもB期の方が高く95%ベイズ信頼区間も重複していなかった(A期59.61[57.81, 61.49],B期63.53[62.04, 64.83]).参加者2のABC-DSの平均推定値はA期よりもB期の方が高かったが,95%ベイズ信頼区間はわずかに重複していた(A期63.00[61.55, 64.43],B期65.41[64.42, 66.44]).平均効果量は両者ともに有意であった(参加者1:1.29[0.28, 2.44];参加者2:1.65[0.20, 3.25]).
【考察】参加者1と2にABC-DSの有意な改善の傾向を認めた事から,本介入は重度アルツハイマー型認知症高齢者の重症化の予防・改善効果が期待できると考えられた.参加者1の変化点が介入開始よりも前の時点で検出されたことに関しては,周期的な何らかの要因が関与したものと思われた.今後はより厳密な介入デザインを用いて,多くの対象者に実施していく事で更に効果を検証していく必要がある.
【倫理的配慮】本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得た(2022C0005).対象者とその家族(または後見人)に対しては,書面及び口頭で内容を説明し同意を得た.