第57回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-3] ポスター:高齢期 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PJ-3-5] 回復期リハビリテーション病棟における入院時の栄養障害と認知機能利得の関連性

吉谷 貴大1, 辻中 椋1, 森本 かえで2 (1.泉佐野優人会病院リハビリテーション部, 2.大阪保健医療大学)

【背景】
 低栄養は,日常生活活動における介助依存を高めることに加えて,入院期間延長や在宅復帰困難,死亡率を高めるなど,予後不良のアウトカムとされている.本邦の回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)に入院している高齢患者の43%が低栄養であり,51%が低栄養リスクであったと報告されている.また,低栄養に加え,回リハ病棟入院患者の32.6%が認知症を有しているという報告がある.したがって,回リハ病棟入院患者は低栄養と認知症の有病率が比較的高いとされる.また,骨格筋量指数(SMI)はサルコペニアの診断に用いられるが,サルコペニア患者は栄養障害との関連が報告されている.栄養障害は,一般集団および軽度認知障害または認知症の患者における白質高濃度,微小出血および中側頭葉の萎縮のリスク増加とも関連していることが報告されており,栄養障害は認知機能と関係している可能性が示唆されている.しかし,回リハ病棟におけるGNRIとMMSEの関係性を明らかにする報告はされていない.
【目的】
 本研究は,簡便に評価可能なGNRI及びSMIを使用し,回リハ病棟入院時の栄養状態及び栄養状態に関連するSMIと認知機能の変化との関係性を明らかにすることとした.また,関係性を明らかにすることで認知症増悪予防の一助となることを目的とした.
【方法】
 対象は,当院回リハ病棟に2019年10月から2022年12月の期間に入院した患者123名である.除外基準は,①急性疾患や悪液質などの慢性疾患を有する患者,②食事形態が経管栄養または絶食中の患者,③質問評価の困難者,④MMSEカットオフ値24点未満とした.入院時の栄養評価はGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いた.GNRIは14.89×ALB(g/dL)+41.7×(体重/理想体重)とし,理想体重は身長(cm)100-([身長-150]/4)とした.認知機能はMMSEを用いた.認知症者の認知機能の変化の関連を見るため,MMSEカットオフ値24点未満を対象とし,入院時のMMSEと退院時のMMSEの間における利得を求め,それをMMSE利得とした.SMIは,InBody S-10を用いて算出した.統計解析は,入院時のGNRI及び入院時のSMIとMMSE利得との間でPersonの積率相関係数を算出し,統計学的有意水準は5%未満とした.解析ソフトはExcel統計(version 3.21)を使用した.本研究は,泉佐野優人会病院倫理委員会の承認を受け(承認番号R4-0016)同意を得て実施した.
【結果】
 本研究における最終的な分析対象者は,除外基準に該当した者を除いた49名(平均年齢82.0 ± 8.1歳)であった.MMSEの利得は3.6±4.0点であり,入院時GNRIは90.8 ± 10.0,SMIは5.0 ± 1.0であった.入院時のGNRIとMMSE利得との間でPersonの積率相関係数を算出した結果,入院時GNRIとMMSE利得との間に有意な相関はなかった(r = 0.012,p = 0.934).しかし,MMSE利得とSMIの間に有意な相関があった(r = 0.37, p = 0.0008).また,GNRIとSMIの間に有意な相関があった(r = 0.37, p = 0.009).
【考察】
 入院時のGNRIとMMSE利得との関連性は少ない事が示唆された.また,MMSE利得とSMI及びGNRIとSMIの間に有意な相関があった.MMMEとSMIやGNRIは先行研究で述べられている結果を裏付ける形となった.今回,入院時のGNRIとMMSE利得に相関がなかった要因として,本研究ではMMSEを評価したため,中核症状のみを捉えていた可能性があり,周辺症状であるBPSDの抽出が行えていなかった可能性がある.BPSDでみられる,不安や焦燥感,攻撃性,興奮性,妄想,徘徊などは栄養障害と関係がある事が報告されている.そのため,今後の展望としてBPSDを考慮した群分けを行うことでより精度の高い栄養状態とMMSEの関係を分析することが可能と考える.