[PJ-4-1] 介護保険要支援者における買い物の実施に関連する因子の検討
【はじめに】
介護保険要支援者(以下,要支援者)では日常生活活動(Activities of Daily Living;以下,ADL)は自立しているが,手段的日常生活活動(Instrumental Activities of Daily Living;以下,IADL)の一部が困難となる者が多い.要支援者のIADLのうち,買い物の自立割合がとりわけ低く(厚生労働省.2012),特に高齢者では交通手段等の環境因子の影響によって困難さが増す.一方,買い物の実施に関連する心身機能等の因子についての検討は不十分である.
【目的】
本研究は福島県郡山市在住の要支援者の介護保険認定調査票(基本調査)を活用し,買い物の実施に関連する因子について,「身体機能・起居動作に関連する項目」「生活機能に関連する項目」「認知機能に関連する項目」および「精神・行動障害に関連する項目」から検討することを目的とする.
【方法】
平成26年度から平成30年度までに要支援1,2と認定された9,030名のうち,新規認定者6,298名のデータを解析対象とした.対象者の内訳は男性2,247名(35.7%,82.6±8.4歳),女性4,051名(64.3%,83.5±7.3歳)であった.介護保険認定調査票の「社会生活への適応に関連する項目」における「買い物」の自立割合を男女別に求め,さらに「買い物」を目的変数とし,同調査票の「身体機能・起居動作に関連する項目」「生活機能に関連する項目」「認知機能に関連する項目」「精神・行動障害に関連する項目」の各下位項目との関連について,多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて男女別に解析した.本研究は本学の倫理審査委員会の審査と承認の下で実施した.
【結果】
要支援者の買い物の自立割合は男性18.9%,女性30.2%であった.また,買い物の実施と有意に関連した項目(以下,オッズ比,95%信頼区間)は,男性では年齢(1.03,1.01-1.04),歩行(1.67,1.27-2.19),つめ切り(1.56,1.13-2.14),口腔清潔(5.58,1.31-23.74),洗顔(5.24,1.23-22.33),ズボン等の着脱(9.46,1.27-70.47),外出頻度(8.91,6.26-12.68),短期記憶(2.46,1.45-4.18),ひどい物忘れ(1.31,1.01-1.69)であり,女性では年齢(1.03,1.02-1.04),両足での立位(1.44,1.12-1.83),歩行(1.39,1.14-1.70),片足での立位(1.55,1.28-1.88),洗身(1.91,1.50-2.43),つめ切り(2.29,1.85-2.84),洗顔(5.58,1.73-18.04),外出頻度(6.96,5.59-8.67),意思の伝達(6.53,1.89-22.59),短期記憶(3.31,2.37-4.63),同じ話をする(1.84,1.32-2.57)であった.
【考察】
要支援者の買い物の実施では,男女共に身体機能・起居動作,生活機能,認知機能および精神・行動障害の各項目と幅広く関連した.特に男性ではつめ切りや口腔清潔,洗顔といった整容動作の項目が多く関連し,女性では立位保持や歩行といった身体機能面に加え,男性と同様に整容動作の項目が多く関連した.また,男女共に外出頻度が強く関連した.これらの結果から,要支援者の買い物の実施では関連する身体機能や認知機能だけでなく,整容動作等の生活機能(ADL)や外出に関するアセスメントや対策が重要であることが示唆された.
介護保険要支援者(以下,要支援者)では日常生活活動(Activities of Daily Living;以下,ADL)は自立しているが,手段的日常生活活動(Instrumental Activities of Daily Living;以下,IADL)の一部が困難となる者が多い.要支援者のIADLのうち,買い物の自立割合がとりわけ低く(厚生労働省.2012),特に高齢者では交通手段等の環境因子の影響によって困難さが増す.一方,買い物の実施に関連する心身機能等の因子についての検討は不十分である.
【目的】
本研究は福島県郡山市在住の要支援者の介護保険認定調査票(基本調査)を活用し,買い物の実施に関連する因子について,「身体機能・起居動作に関連する項目」「生活機能に関連する項目」「認知機能に関連する項目」および「精神・行動障害に関連する項目」から検討することを目的とする.
【方法】
平成26年度から平成30年度までに要支援1,2と認定された9,030名のうち,新規認定者6,298名のデータを解析対象とした.対象者の内訳は男性2,247名(35.7%,82.6±8.4歳),女性4,051名(64.3%,83.5±7.3歳)であった.介護保険認定調査票の「社会生活への適応に関連する項目」における「買い物」の自立割合を男女別に求め,さらに「買い物」を目的変数とし,同調査票の「身体機能・起居動作に関連する項目」「生活機能に関連する項目」「認知機能に関連する項目」「精神・行動障害に関連する項目」の各下位項目との関連について,多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて男女別に解析した.本研究は本学の倫理審査委員会の審査と承認の下で実施した.
【結果】
要支援者の買い物の自立割合は男性18.9%,女性30.2%であった.また,買い物の実施と有意に関連した項目(以下,オッズ比,95%信頼区間)は,男性では年齢(1.03,1.01-1.04),歩行(1.67,1.27-2.19),つめ切り(1.56,1.13-2.14),口腔清潔(5.58,1.31-23.74),洗顔(5.24,1.23-22.33),ズボン等の着脱(9.46,1.27-70.47),外出頻度(8.91,6.26-12.68),短期記憶(2.46,1.45-4.18),ひどい物忘れ(1.31,1.01-1.69)であり,女性では年齢(1.03,1.02-1.04),両足での立位(1.44,1.12-1.83),歩行(1.39,1.14-1.70),片足での立位(1.55,1.28-1.88),洗身(1.91,1.50-2.43),つめ切り(2.29,1.85-2.84),洗顔(5.58,1.73-18.04),外出頻度(6.96,5.59-8.67),意思の伝達(6.53,1.89-22.59),短期記憶(3.31,2.37-4.63),同じ話をする(1.84,1.32-2.57)であった.
【考察】
要支援者の買い物の実施では,男女共に身体機能・起居動作,生活機能,認知機能および精神・行動障害の各項目と幅広く関連した.特に男性ではつめ切りや口腔清潔,洗顔といった整容動作の項目が多く関連し,女性では立位保持や歩行といった身体機能面に加え,男性と同様に整容動作の項目が多く関連した.また,男女共に外出頻度が強く関連した.これらの結果から,要支援者の買い物の実施では関連する身体機能や認知機能だけでなく,整容動作等の生活機能(ADL)や外出に関するアセスメントや対策が重要であることが示唆された.