第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-4] ポスター:高齢期 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-4-2] スヌーズレンを体験した介護職員へのインタビュー結果の考察

新岡 美樹1,3, 八田 達夫2,3, 大堀 具視2,3, 清本 憲太2,3 (1.社会福祉法人ノテ福祉会特別養護老人ホームノテふるさとスヌーズレン開発推進室, 2.日本医療大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻, 3.日本医療大学認知症研究所)

はじめに 筆者らは,重度認知症であってもスヌーズレンのように適切な環境づくりをすることで,作業従事が可能になることをこれまで明らかにしてきた.その成果から,24時間の生活をサポートしている介護職員との協業により,多重感覚刺激を活用した作業を日常生活に取り入れ,well-beingに寄与する有効な認知症ケアモデルを確立したいと考えてきた.そのために,介護職員に利用者とともにスヌーズレン体験をしてもらった.そして,アンケート調査を行い,「日常のケアに取り入れたいこと」に対する回答が示された1).それを用いて,本研究では,その後の居住フロアにおける取り入れ状況及び,利用者へもたらす効果について,介護職員に半構成的インタビューを行った.その結果,有用な知見が得られたので報告する.
方法 対象者は,同一フロア2名の入居者と一緒にスヌーズレン体験をした4名の男性介護職員である.平均年齢は44±14.7歳,平均経験年数は12.5±12.5年であった.介護職員には研究の趣旨を説明し,参加への同意を得た.インタビューはアンケート調査の「日常のケアに取り入れたいこと」の回答結果1)に基づき作成した.項目は,①視覚や聴覚などの好みの感覚刺激の導入について②空間の感覚刺激のバランスをとりリラックスして穏やかに過ごすことについて③スタッフが利用者と個別に興味のある活動の機会を設けることについてであった.尚,インタビューでは自由に語ってもらった.インタビュー内容はICレコーダーに録音し,逐語録を作成した.逐語録は文脈にそって分類し,内容を要約した.原則1センテンスに1内容として.さらに分解した.続いて,ロフランド(1997)の方法を参考にコード化した.カテゴリー化のために,コードは紙のカードにした.カードには発言者,質問項目,通し番号,センテンス及びコードを記入した.カードは,机上に広げ,手作業にてカテゴリー化を行った.コード化とカテゴリー化は,2名の研究者で討議しながら行った.
結果 インタビューの総録音時間は113分28秒,総文字数は33649文字であった.分析の結果,101個のコードと6個のカテゴリーが得られた.カテゴリー名は,「不穏となる原因の探索」「うまくいく実施条件の追求」「うまくいった経験の語り」「本人のために実施したい気持ち」「個人では解決できない難しさ」「組織の体制で解決できる可能性」である.
考察 得られたカテゴリーでは,スヌーズレンを体験した介護職員には「本人のために実施したい気持ち」があることが注目される.いわゆる3大介護以外の意味のある作業も重要視していることが明らかになった.介護職員がその作業をケアに取り入れたことで,「うまくいった経験の語り」とともに,「うまくいく実施条件の追求」をしていた.ただ,入居者は不穏状態になるため,その対応として「不穏となる原因の探索」も必要としていた.活動の実施条件や不穏原因に関しては,「個人では解決できない難しさ」もあるが,「組織の体制で解決できる可能性」もあることが分かった.以上より,介護職員がスヌーズレンで体験したことは日常のケアにも取り入れ,入居者への効果を実感していた.今後,作業療法士は,うまくいくフロアでの実施条件の環境整備,不穏への原因と対応方法の探索,組織体制の見直しなどで協業する必要があると考えられた.
引用文献 1)新岡美樹:作業療法士と介護職員との協業によるスヌーズレン成果の考察―認知症ケアモデル推進のためにー,スヌーズレン教育・福祉研究6,2023 in press