[PJ-5-3] 施設外訓練における患者と患者家族の主観的評価に関する研究
【目的】現在のコロナ禍は,患者家族(家族)にとって患者の現状を把握しにくい状況が続き,退院後の生活の不安を助長させている.その様な背景の中,当院では自宅での施設外訓練を積極的に行っている.そこで今回の目的は,患者と家族が施設外訓練後にどのような動作項目にどの程度不安を抱えたのか,また両者の相違点を把握することである.そして,前述の内容を把握し課題を明確にすることで,今後の退院支援の一助とする.
【対象】2021年8月以降に自宅での施設外訓練を実施し,自宅退院となった患者30名(男性11名:平均72.5歳,女性19名:平均86.7歳)とその家族30名(各家族1名)の計60名であった.疾患の内訳は,脳血管疾患6名,運動器疾患24名であった.また,MMSEが24点以上かつ質問紙法が実施可能な者とした.
【方法】施設外訓練実施後に担当者が患者と家族に同様のアンケートを実施した.内容は,屋内移動,屋外移動,玄関,階段,入浴動作,トイレ動作,起居動作,家事動作,趣味活動の9項目を定めた.そして,不安の強さをLikert Scale法で5段階評価(なし~強い)した.加えて,感想を聴取した.調査項目は,1.患者の各動作項目の不安の強さの把握,2.患者の9動作項目の合計点とM-FIMとの相関関係,3.家族の各動作項目の不安の強さの把握,4.患者と家族における相違点の分析(各動作項目の不安)を実施した.また,5.施設外訓練後の感想を聴取した. 統計処理は,R(4.2.0)を使用しSpearmanの順位相関係数,Mann-WhitneyのU検定を行った(有意水準5%).本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】1.患者の各動作項目の不安の強さの把握では,各動作の中央値は,トイレ動作5,屋内移動4,玄関4,起居動作4,家事4,趣味4,屋外歩行4,入浴動作3,階段3であった. 2. 患者の9動作項目の合計点とM-FIMとの相関関係では,有意な相関関係を認めた(rs=0.585,p=0.001).3.家族の各動作項目の不安の強さの把握では,各動作の中央値は,トイレ4,屋内移動4,起居動作4,家事3,玄関3,屋外歩行3,趣味3,入浴動作3,階段3であった.4.患者と家族における相違点の分析では,各動作項目の比較で,家族において,屋内移動(p=0.012)・玄関(p=0.004)・トイレ動作(p=0.001)で患者より有意に強い不安を感じていた.5.施設外訓練後の患者の聴取では,現状把握ができ自信がついた(対象の95%).新たな問題点や課題への気付きを得た(対象の35%).家族の聴取では,現状把握できた,施設外訓練で満足感を得た(対象の80%).一方,退院後の不安や退院までの要望もあった(対象の80%).
【考察】岡本(2020)は,重症者や介護力が弱い場合,退院当日から家族はとても不安であるという意見が多かったと述べている.今回,患者と家族間で相違を認めた各動作項目は,屋内移動・玄関・トイレ動作であった.これらは転倒リスクや介助回数など家族の精神的緊張も大きい項目であると予測され,不安が高くなったと推測できた. また,新城(2019)は,退院後に患者と家族が困らないよう,入院中から家族への介護指導や外泊練習,家屋訪問など退院支援をすることが重要であると述べている.現在のコロナ禍は,家族が患者やスタッフとのコミュニケーションを図りづらい状況が続いている. そのため,当院でも施設外訓練の複数回の実施,広いエリアでの距離を保ったリハ見学などの工夫はしているがいまだ実施件数は少ない.今後はこれらの積極的な活用に加え,オンラインなどを利用し家族と今以上にコミュニケーションを図ることが重要と考えられた.
【対象】2021年8月以降に自宅での施設外訓練を実施し,自宅退院となった患者30名(男性11名:平均72.5歳,女性19名:平均86.7歳)とその家族30名(各家族1名)の計60名であった.疾患の内訳は,脳血管疾患6名,運動器疾患24名であった.また,MMSEが24点以上かつ質問紙法が実施可能な者とした.
【方法】施設外訓練実施後に担当者が患者と家族に同様のアンケートを実施した.内容は,屋内移動,屋外移動,玄関,階段,入浴動作,トイレ動作,起居動作,家事動作,趣味活動の9項目を定めた.そして,不安の強さをLikert Scale法で5段階評価(なし~強い)した.加えて,感想を聴取した.調査項目は,1.患者の各動作項目の不安の強さの把握,2.患者の9動作項目の合計点とM-FIMとの相関関係,3.家族の各動作項目の不安の強さの把握,4.患者と家族における相違点の分析(各動作項目の不安)を実施した.また,5.施設外訓練後の感想を聴取した. 統計処理は,R(4.2.0)を使用しSpearmanの順位相関係数,Mann-WhitneyのU検定を行った(有意水準5%).本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】1.患者の各動作項目の不安の強さの把握では,各動作の中央値は,トイレ動作5,屋内移動4,玄関4,起居動作4,家事4,趣味4,屋外歩行4,入浴動作3,階段3であった. 2. 患者の9動作項目の合計点とM-FIMとの相関関係では,有意な相関関係を認めた(rs=0.585,p=0.001).3.家族の各動作項目の不安の強さの把握では,各動作の中央値は,トイレ4,屋内移動4,起居動作4,家事3,玄関3,屋外歩行3,趣味3,入浴動作3,階段3であった.4.患者と家族における相違点の分析では,各動作項目の比較で,家族において,屋内移動(p=0.012)・玄関(p=0.004)・トイレ動作(p=0.001)で患者より有意に強い不安を感じていた.5.施設外訓練後の患者の聴取では,現状把握ができ自信がついた(対象の95%).新たな問題点や課題への気付きを得た(対象の35%).家族の聴取では,現状把握できた,施設外訓練で満足感を得た(対象の80%).一方,退院後の不安や退院までの要望もあった(対象の80%).
【考察】岡本(2020)は,重症者や介護力が弱い場合,退院当日から家族はとても不安であるという意見が多かったと述べている.今回,患者と家族間で相違を認めた各動作項目は,屋内移動・玄関・トイレ動作であった.これらは転倒リスクや介助回数など家族の精神的緊張も大きい項目であると予測され,不安が高くなったと推測できた. また,新城(2019)は,退院後に患者と家族が困らないよう,入院中から家族への介護指導や外泊練習,家屋訪問など退院支援をすることが重要であると述べている.現在のコロナ禍は,家族が患者やスタッフとのコミュニケーションを図りづらい状況が続いている. そのため,当院でも施設外訓練の複数回の実施,広いエリアでの距離を保ったリハ見学などの工夫はしているがいまだ実施件数は少ない.今後はこれらの積極的な活用に加え,オンラインなどを利用し家族と今以上にコミュニケーションを図ることが重要と考えられた.