第57回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-6] ポスター:高齢期 6

Fri. Nov 10, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PJ-6-6] 認知レベルと対応したアクティビティケア・マトリクスの開発

久野 真矢 (県立広島大学)

【序論】
著者はこれまでの研究において,高齢者や認知症のクライエントは認知レベルの低下により,日常生活能力が発達の逆順で徐々に低下すること,生活機能年齢を指標とした回帰式を使用して認知レベルと日常生活能力を高い精度で相互を予測可能であることを報告してきた.
【目的】
本研究は認知機能評価スケール得点と生活機能年齢の回帰式を使用して,アクティビティの適用計画を視覚的に捉えることが可能な認知レベルと対応したアクティビティケア・マトリクスを作成することを目的とした.
【方法】
先行研究において報告した回帰式を使用して,Mini-Mental State Examination,改訂長谷川式簡易知能評価スケール,Frontal Assessment Battery,N式老年用精神状態尺度などの得点に基づいた認知レベル上の生活機能年齢を算出した.次に算出された生活機能年齢を基に,認知や行動の発達行動特徴を参考として,認知レベルの重症度別でのアクティビティ適用方針と臨床で良く使用されるアクティビティごとの適用可否と介助量,集団特性などを検討し,マトリクスを作成した.
【結果】
認知レベル上の生活機能年齢を2歳ごとに区切ることで,認知レベルを重症度別に4分類することができ,アクティビティ適用の基本方針が次のように抽出された.2歳未満:重度認知症「感覚刺激を通した物への携わり」「個々の自由な携わり」「音・音楽,粗大運動」,2~4歳未満:中等度認知症「道具の操作と簡単な工程のアクティビティ」「アクティビティを通した他者との関わり」,4~6歳未満:軽度認知症「道具を使用した複数工程のアクティビティ」「共同グループ」「集団競技や認知課題」,6歳以上:軽度認知障害~正常「自由度・自立度・難易度の高いアクティビティ」「協働グループ」「組織的行動」.また,これら認知レベルの4分類ごとの認知機能評価スケール得点範囲とアクティビティ適用の基本方針,種目ごとの適用方法の記号化,集団特性が示された領域から構成されるマトリクスが作成された.
【考察】
アクティビティは主要な介入手段であり,高齢者や認知症のクライエントがアクティビティにうまく携わることはQOL向上にも直結する.開発したマトリクスは,臨床現場でよく使用される認知機能評価スケール得点に基づいて,クライエントのアクティビティに携わる能力と適用方針が視覚的に把握でき,アクティビティの種目選択や道具,材料,難易度などの環境設定の工夫を容易に計画することができる.また,グループアクティビティは多職種と共同で運営することもある.このような場合,アクティビティの適用計画に関する情報を多職種間で共有できるコミュニケーションツールになると考える.