第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-8] ポスター:高齢期 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PJ-8-3] 遠隔で行う作業療法

並木 千裕, 阿部 幸太, 小貫 早希, 野口 麻礼, 本田 ななみ (聖路加国際病院リハビリテーション科)

<はじめに>
遠隔で行う作業療法は高齢者や作業療法士にとって利便性があり,作業活動のモニタリングやカウンセリングなど幅広く活用されている.コロナ禍では対面での作業療法の代わりとして活用が期待されていた.
当院は急性期病院で,日中の活動提供の1つとして院内デイケアを週に1回1時間実施してきたが,感染症対策のため中止となっていた.そこで,院内の会議や勉強会に活用されていたteamsでのビデオ通話(以下,ビデオ通話)を使って院内デイケアを行うことを提案し,2022年から約1年間オンラインの院内デイケア(以下,リモートデイケア)を実施してきた.対面のデイケアでは気づかなかった点もあり,活動内容と経過を報告する.
<方法と工夫点>
ビデオ通話の媒体はteamsを使用し,1画面の中で患者が認識しやすい1回に4名程度の参加者に制限した.参加者はビデオ通話を認識でき,30分程度のリモートデイケアに参加できる人を作業療法士や看護師が選出した.プログラムは自己紹介やクイズ,体操などで構成した.工夫点は意志疎通がとりにくいことを配慮してクイズ用のプラカードを作成し,発話でなくてもクイズに参加できるようにしたり,画面で体操が見えやすいよう上半身の体操に限定したり,能動性を引き出すために参加者自身に体操を提案してもらったりした.
<活動経過>
当初はビデオ通話の認識を理解する必要があるので,認知が比較的維持されている方を対象者として選出していたが,高齢や認知低下があってもビデオ通話に対応できる方が多かった.会話もスピーカーを使用することで他者交流することができた.参加者の感想として『いつもと違って楽しかった』『こういう機会があるのは良いことだ』『ひとりで過ごすよりもこうやって交流できるのは嬉しい』とパソコン画面を通した他者交流や一緒に行う活動に興味関心を持って下さっている声を多く頂いた.また,感染症や体力的な問題でベッドや病室を離れることができず集団活動が難しい方も病室やベッドからでも参加することできた.さらに,集団の場や人前にでることを敬遠しがちで病室に閉じこもっている方でも,慣れた病室から画面を見るだけの参加なども行うことができ,新たな活動の場の提供をすることができた.
<現状に対する考察と今後の展望と課題>
 今回遠隔の作業療法として,リモートデイケアを実施した.限られた画面で他者交流が円滑となるための工夫を行うことで,社会性を引き出したり,他者との共同を感じたりと集団の場による効果を得ることができたと考える.また,感染症や体力面に問題がある方や,新たな場や他者交流が苦手で病室に閉じこもりがちの人に対しても,社会参加の機会を提供できるといったリモートならではの利点にも気づくことができた.今後,対面のデイケアも再開予定ではあるが,合わせてリモートデイケアも継続して活用することで様々な方の参加の機会を提供できると考える.
現在は体操などが中心であるが,参加者のニーズに合わせた活動の幅を広げていきたい.