[PJ-8-6] ADL全介助から排泄・歩行が自立するまで改善
【はじめに】
入院による廃用でADL全介助となり,当施設に入所することとなった対象者に対し,食事の自立を支援した結果,活動性が向上し,移動を含めた排泄動作が可能となって在宅復帰することとなったため報告する.尚,今回の発表にあたり対象者および家族から同意を得ている.
【事例紹介】
70歳代,男性.妻・息子と3人で暮らしていた.20代の頃から頸髄症により手足に痺れや動かしにくさがあったが,身の回り動作は自立していた.定年退職後は自宅で妻とテレビを見るなどして過ごしていたが,半年前に心不全を発症し入院.症状は改善したがADL全介助となり自宅での介護が難しいことから当施設へ入所することとなる.
【作業療法評価】
本人は「どうせ何もできませんから」と,回復を諦めている様子だった.妻は「歩いてトイレに行けるようにならないと在宅復帰は難しい」とのこと.心身機能は四肢の拘縮と全身の筋力低下がみられた.食事は手を口元まで運ぶことは可能だが,手指の拘縮と筋力低下によりスプーンを把持することができず全介助.車椅子は座位が保持できないためリクライニング車椅子を使用し,移乗は下肢にほとんど力が入らないためスライディングボードを使用していた.排泄はオムツを使用していた.
【介入の方針】
入院前は身の回り動作が自立していたことから,心身機能の低下は主に廃用が原因と考えられ,活動性が向上すればある程度回復すると考えた.回復を諦める気持ちは活動性にも影響すると考えられるため,できるだけ早期から成功体験を得られるよう,まずは自助具の使用で自立が見込める食事から支援していくこととした.
【介入経過】
食事練習について提案すると「そんなことできませんよ」と消極的な様子だったが,食事用の自助具を紹介すると「一度試してみたい」と興味を示した.実際に万能カフと曲がるスプーンを試したところ,少々食べこぼしはあるものの,自力で食べることができた.「これなら食べられますね」と意欲を示し,介護職員と連携して毎食自力摂取するようになった.それから1ヶ月後には手指の拘縮と筋力が改善し,太柄スプーンを自力で把持して食べられるようになった.その後も機能の向上に合わせて在宅復帰に必要なADLの練習を行なった.本人も進んで自主トレーニングを行うなど積極的な姿勢がみられるようになった.
【結果】
ピックアップ歩行器を使用した歩行・排泄動作が自立し在宅復帰することとなった.
【考察】
今回の介入では「自分で食べることができた」という成功体験がリハへの意欲を引き出した.廃用症候群の治療には単にMSEや動作練習をするだけでなく,生活習慣の再構築やそのための動機付けなどOTの視点からのアプローチが必要である.今後は通所リハ等で関わりを継続し,在宅での余暇時間などより活動的に暮らせるよう支援していきたい.
入院による廃用でADL全介助となり,当施設に入所することとなった対象者に対し,食事の自立を支援した結果,活動性が向上し,移動を含めた排泄動作が可能となって在宅復帰することとなったため報告する.尚,今回の発表にあたり対象者および家族から同意を得ている.
【事例紹介】
70歳代,男性.妻・息子と3人で暮らしていた.20代の頃から頸髄症により手足に痺れや動かしにくさがあったが,身の回り動作は自立していた.定年退職後は自宅で妻とテレビを見るなどして過ごしていたが,半年前に心不全を発症し入院.症状は改善したがADL全介助となり自宅での介護が難しいことから当施設へ入所することとなる.
【作業療法評価】
本人は「どうせ何もできませんから」と,回復を諦めている様子だった.妻は「歩いてトイレに行けるようにならないと在宅復帰は難しい」とのこと.心身機能は四肢の拘縮と全身の筋力低下がみられた.食事は手を口元まで運ぶことは可能だが,手指の拘縮と筋力低下によりスプーンを把持することができず全介助.車椅子は座位が保持できないためリクライニング車椅子を使用し,移乗は下肢にほとんど力が入らないためスライディングボードを使用していた.排泄はオムツを使用していた.
【介入の方針】
入院前は身の回り動作が自立していたことから,心身機能の低下は主に廃用が原因と考えられ,活動性が向上すればある程度回復すると考えた.回復を諦める気持ちは活動性にも影響すると考えられるため,できるだけ早期から成功体験を得られるよう,まずは自助具の使用で自立が見込める食事から支援していくこととした.
【介入経過】
食事練習について提案すると「そんなことできませんよ」と消極的な様子だったが,食事用の自助具を紹介すると「一度試してみたい」と興味を示した.実際に万能カフと曲がるスプーンを試したところ,少々食べこぼしはあるものの,自力で食べることができた.「これなら食べられますね」と意欲を示し,介護職員と連携して毎食自力摂取するようになった.それから1ヶ月後には手指の拘縮と筋力が改善し,太柄スプーンを自力で把持して食べられるようになった.その後も機能の向上に合わせて在宅復帰に必要なADLの練習を行なった.本人も進んで自主トレーニングを行うなど積極的な姿勢がみられるようになった.
【結果】
ピックアップ歩行器を使用した歩行・排泄動作が自立し在宅復帰することとなった.
【考察】
今回の介入では「自分で食べることができた」という成功体験がリハへの意欲を引き出した.廃用症候群の治療には単にMSEや動作練習をするだけでなく,生活習慣の再構築やそのための動機付けなどOTの視点からのアプローチが必要である.今後は通所リハ等で関わりを継続し,在宅での余暇時間などより活動的に暮らせるよう支援していきたい.