[PJ-9-3] 入院高齢患者に対し馴染みのある活動を提供したことで意志に変化がみられた事例
【はじめに】今回, 全身状態の悪化をきっかけに活動意欲が低下し,自己を過小に評価した事例に対し,馴染みのある活動を用いてよい解釈となる経験ができるよう作業を提供した.OTにて,A氏が自己の能力を正しく捉えることができるように,できていることを伝え,実感を促すことで,作業活動に対する動機づけとなり,日常活動への般化に繋がったため報告する.本発表にあたり,事例に同意を得た.
【事例紹介】A氏は80歳後半の女性.腰痛により当院整形外科病棟に入院,病前のADL自立を目指し歩行訓練を実施していたが,全身状態が悪化し内科病棟に転棟した.治療にて全身状態は安定したが,寝たきり状態が1か月間続き,廃用症候群の診断にてOT週5日40分で介入追加となったが,「今日は起きなくていいです」と無気力であった.
【初期評価】腰痛なく約40分離床でき,HDS-Rは14点で入院生活の流れは把握できていたが,離床する必要性を感じられず終日臥床しており他者との交流もなかった.FIMは47点で,「前はできていたのにできなくなった」,リハ目標や今後の生活についても「分からない」と,長期間の寝たきり状態の経験から自分ではもう何もできないと必要以上に行動を制限する傾向がみられた.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は54/96点で,作業への動機7/16点・作業のパターン6/16点と遂行能力は保たれていたが,作業への興味を示さず不活動な生活となっていた.認知症高齢者の絵カード評価法では,馴染みのある活動として日記と体操があがった.
【介入経過】OTでは,馴染みのある活動から日々の入院生活でできた活動を記録した日記の作成と離床時間の拡大を目的に病棟で行っていた集団体操への参加を促した.しかし,入院前の状態と比べて考えてしまい,「できているのか分からない」と過小な評価がみられ変化は乏しかった.そのため,日記では結果を伝えるのみではなく,昨日の状態との比較を一緒に行い,できた活動の過程や経過を含めてフィードバックを行った.その後,自発的に日記を見返す姿がみられ,できていることが言えるようになった.また,集団体操は最後まで参加すると目的を共有したことで,目的の達成を実感でき「楽しかった,気持ちよかった」と楽しみの経験となりその他のプログラムの参加にも繋がった.さらに,日記からできていることが増えていることにも気づき「トイレに行けるようになりたい」と意思表示ができるようになった.
【結果】1か月後,離床は90分以上に拡大し,FIMは64点で移乗や排泄時に自発的な声掛けができ介助量も軽減した.また,集団活動には週5日約40分継続して最後まで参加でき,集団活動後も他者との交流やテレビ鑑賞をしていた.MOHOSTは73/96点で,作業への動機14点・作業のパターン12点となり新しい活動への挑戦や生活パターンが変化した.
【考察】Kielhofnerは,意志は私たちが自分の行為をどのように解釈するかに影響し,自分の考えと感情で,行うことを予想・選択・経験・解釈するにつれて生じると述べている.今回,寝たきり状態になった経験から,何もできないと解釈したA氏に対し,趣味活動を用いた介入を行ったが意志に変化はみられなかった.そのため,日記にはA氏の能力を正しく捉えられるような内容に変更し,体操ではできた結果が実感しやすい目的を設定した.それにより,記録からできることが増えたことを認識し,達成感が得られたことでよい解釈へ変化し,予想に影響を与えトイレに行きたいと意思表示ができた.入院生活ではやるという選択が増加したことで,自発的な他活動の参加と活動時間の拡大に繋がったと考えた.
【事例紹介】A氏は80歳後半の女性.腰痛により当院整形外科病棟に入院,病前のADL自立を目指し歩行訓練を実施していたが,全身状態が悪化し内科病棟に転棟した.治療にて全身状態は安定したが,寝たきり状態が1か月間続き,廃用症候群の診断にてOT週5日40分で介入追加となったが,「今日は起きなくていいです」と無気力であった.
【初期評価】腰痛なく約40分離床でき,HDS-Rは14点で入院生活の流れは把握できていたが,離床する必要性を感じられず終日臥床しており他者との交流もなかった.FIMは47点で,「前はできていたのにできなくなった」,リハ目標や今後の生活についても「分からない」と,長期間の寝たきり状態の経験から自分ではもう何もできないと必要以上に行動を制限する傾向がみられた.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は54/96点で,作業への動機7/16点・作業のパターン6/16点と遂行能力は保たれていたが,作業への興味を示さず不活動な生活となっていた.認知症高齢者の絵カード評価法では,馴染みのある活動として日記と体操があがった.
【介入経過】OTでは,馴染みのある活動から日々の入院生活でできた活動を記録した日記の作成と離床時間の拡大を目的に病棟で行っていた集団体操への参加を促した.しかし,入院前の状態と比べて考えてしまい,「できているのか分からない」と過小な評価がみられ変化は乏しかった.そのため,日記では結果を伝えるのみではなく,昨日の状態との比較を一緒に行い,できた活動の過程や経過を含めてフィードバックを行った.その後,自発的に日記を見返す姿がみられ,できていることが言えるようになった.また,集団体操は最後まで参加すると目的を共有したことで,目的の達成を実感でき「楽しかった,気持ちよかった」と楽しみの経験となりその他のプログラムの参加にも繋がった.さらに,日記からできていることが増えていることにも気づき「トイレに行けるようになりたい」と意思表示ができるようになった.
【結果】1か月後,離床は90分以上に拡大し,FIMは64点で移乗や排泄時に自発的な声掛けができ介助量も軽減した.また,集団活動には週5日約40分継続して最後まで参加でき,集団活動後も他者との交流やテレビ鑑賞をしていた.MOHOSTは73/96点で,作業への動機14点・作業のパターン12点となり新しい活動への挑戦や生活パターンが変化した.
【考察】Kielhofnerは,意志は私たちが自分の行為をどのように解釈するかに影響し,自分の考えと感情で,行うことを予想・選択・経験・解釈するにつれて生じると述べている.今回,寝たきり状態になった経験から,何もできないと解釈したA氏に対し,趣味活動を用いた介入を行ったが意志に変化はみられなかった.そのため,日記にはA氏の能力を正しく捉えられるような内容に変更し,体操ではできた結果が実感しやすい目的を設定した.それにより,記録からできることが増えたことを認識し,達成感が得られたことでよい解釈へ変化し,予想に影響を与えトイレに行きたいと意思表示ができた.入院生活ではやるという選択が増加したことで,自発的な他活動の参加と活動時間の拡大に繋がったと考えた.