第57回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-9] ポスター:高齢期 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PJ-9-6] Sense of Coherenceの視点を取り入れたアクション・リサーチの実践による介入効果

山本 泰雄 (鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部 リハビリテーション学科)

【はじめに】
 地域在住高齢者におけるリハビリテーションでは,身体機能に偏ったアプローチが施されることが多く,国際生活機能分類(ICF)で示される「活動・参加」に至らないことが多いと指摘されている.本研究では参加促進に向けて,関連が予期されるストレス対処・健康生成力概念Sense of Coherence(以下,SOC)の視点を取り入れアクション・リサーチの手法で実施した支援が,社会参加,健康関連QOLにどの程度影響を及ぼしたかを検証することを目的とした.
【倫理的配慮】 
 本研究を行うにあたり,日本福祉大学大学院「人を対象とする研究」に関する倫理審査を受け,研究を実施した(承認番号19-028).
【実践方法】
 研究方法は,研究者(筆者)と臨床で携わる研究実施者(作業療法士)10名とが互いの了解による意思決定をしながら研究を遂行するとされるアクション・リサーチ(ミューチュアルタイプ)の手法を用いて進めた.通所・訪問リハビリテーション利用者40名を対象に6カ月間の介入調査を実施した.研究者が月に一度,研究実施者の事業所に出向いて対象者が抱える問題や性質が,援助過程でどのように変化したかを把握し,その要因や着眼点についてSOCの視点を交えて議論を交わし洞察を深めながら支援を実施した.
【調査方法】
 介入効果を検証するために,ベースライン,6ヵ月後のSOC,社会参加度(CIQ)と健康関連QOL(SF36v2)を測定した.さらに,ベースライン,6カ月後に得られたデータについて,群ごとの変化量を検討するために,事後的に準実験デザインの枠組みで分析した.群分けは,SOCの変化(変化量)により,「向上群」(変化量>0)と「維持・低下群」(変化量≦0)に割付け,その2群を対照条件にベースラインと6カ月後における社会参加度と健康関連QOLを比較した.なお,群分けの基準のSOCスコアは,ベースラインでは平均46.7±5.9,6カ月後では平均47.7±5.2,変化量は平均1.0±2.9であった.6カ月後の変化としては,向上(変化量>0)は16名(42.1%),維持(変化量=0)は12名(31.6%),低下(変化量>0)は10名(26.3%)であった.
【結果】
 SOC(p=.041),CIQ(p=.012),SF36v2の役割/社会的側面(p=.003)のスコアがベースラインに比べて6ヵ月後に有意に向上した.また,ベースラインでは差は認められなかったが,6ヵ月後では,維持・低下群に比べ,向上群においてCIQ(p=.005),SF36v2の役割/社会的側面(p=.009)が有意に良好であった.
【考察】
 SOCの視点を取り込んだアクション・リサーチでの介入が,SOC,社会参加度,健康関連QOLに効果をもたらす一つの手法であること,また,SOCがCIQ,健康関連QOLの役割/社会的健康度の重要な説明要因であることを示す根拠の一つとなる.