[PK-1-4] 認知機能障害者の主観的QOLと客観的QOLに与える因子の検討
【はじめに】
認知症者のQOLにはADLやBPSDの重症度が関連し(中西,2017),認知症の進行によってQOLは低下する部分もあるが,維持・改善することも報告されている(鈴木,2006).また,高齢者のQOLには認知機能障害が影響を与え(Voros V,2020),客観的QOLに主観的QOLは関連しているが(竹之下,2019),主観的QOLと客観的QOLの因子については報告されていない.
【目的】
認知機能障害者の主観的なQOLと客観的なQOLの因子を検討することである.
【対象・方法】
対象は当院回復期リハ病棟に入院し,認知機能障害(MMSE27点以下)を認め,質問を理解できる者とした.基本属性として性別,年齢,介護度を調査した.さらに①QOL評価は主観的QOL評価として日本語版Dementia Quality of life Instrument(DQOL:1-5点),客観的QOL評価としてJapanese Quality of life inventory for elderly with dementia(QOL-D:31-124点),②ADLは機能的自立度評価法(FIM-M:13-91点,FIM-C:5-35点)③作業適応は作業に関する自己評価・改訂版(OSA:有能性21-84点,価値8-32点),④認知機能はMMSE(0-30点)で評価した.解析方法は各QOL関連因子の分析のため,重回帰分析(強制投入)を用いて,従属変数をDQOL,QOL-Dの2つに分けて,独立変数を性別,年齢,介護度,MMSE,FIM,OSA有能性,OSA価値の7項目とし,有意水準は5%とした.倫理的配慮として当院倫理委員会の審査で承認を得て実施した.開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】
対象となった135名のうち,118名の研究参加が得られた(参加率87.4%).基本属性は女性86名(72.9%),年齢83.0±8.3歳,介護度なし:6名,要支援1:11名,要支援2:3名,要介護1:30名,要介護2:20名,要介護3:25名,要介護4:20名,要介護5:3名,MMSE:22.7±3.7点,QOL-D:100.9±10.7点,DQOL:2.9±0.6点,FIM-M:70.8±17.3点,FIM-C:27.1±6.3点,OSAは自己有能性:54.7±9.6点,自己価値:70.9±6.3点,環境有能性:23.0±4.9点,環境価値:28.1±3.7点であった.DQOLに関連する因子として,OSA有能性(β=0.02),FIM-M(β=0.01),介護度(β=0.08)が有意であり,調整済みR2は0.2734であった.QOL-Dに関連する因子として,FIM-C(β=0.53),MMSE(β=0.69)が有意であり,調整済みR2は0.3221であった.
【考察】
主観的QOLは作業有能性やADLの自立度,介護度が関連し,客観的QOLには認知機能に関する項目が関連していた.作業有能性やADLの自立や介護度は生活全般である活動・参加レベルを評価しており,認知機能は心身機能レベルを評価しているため,QOLによって異なる因子が関連していたと考えられる.以上のことから,認知機能障害者のQOL向上には心身機能・活動・参加の全ての改善に有効なリハ介入が望まれる.
認知症者のQOLにはADLやBPSDの重症度が関連し(中西,2017),認知症の進行によってQOLは低下する部分もあるが,維持・改善することも報告されている(鈴木,2006).また,高齢者のQOLには認知機能障害が影響を与え(Voros V,2020),客観的QOLに主観的QOLは関連しているが(竹之下,2019),主観的QOLと客観的QOLの因子については報告されていない.
【目的】
認知機能障害者の主観的なQOLと客観的なQOLの因子を検討することである.
【対象・方法】
対象は当院回復期リハ病棟に入院し,認知機能障害(MMSE27点以下)を認め,質問を理解できる者とした.基本属性として性別,年齢,介護度を調査した.さらに①QOL評価は主観的QOL評価として日本語版Dementia Quality of life Instrument(DQOL:1-5点),客観的QOL評価としてJapanese Quality of life inventory for elderly with dementia(QOL-D:31-124点),②ADLは機能的自立度評価法(FIM-M:13-91点,FIM-C:5-35点)③作業適応は作業に関する自己評価・改訂版(OSA:有能性21-84点,価値8-32点),④認知機能はMMSE(0-30点)で評価した.解析方法は各QOL関連因子の分析のため,重回帰分析(強制投入)を用いて,従属変数をDQOL,QOL-Dの2つに分けて,独立変数を性別,年齢,介護度,MMSE,FIM,OSA有能性,OSA価値の7項目とし,有意水準は5%とした.倫理的配慮として当院倫理委員会の審査で承認を得て実施した.開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】
対象となった135名のうち,118名の研究参加が得られた(参加率87.4%).基本属性は女性86名(72.9%),年齢83.0±8.3歳,介護度なし:6名,要支援1:11名,要支援2:3名,要介護1:30名,要介護2:20名,要介護3:25名,要介護4:20名,要介護5:3名,MMSE:22.7±3.7点,QOL-D:100.9±10.7点,DQOL:2.9±0.6点,FIM-M:70.8±17.3点,FIM-C:27.1±6.3点,OSAは自己有能性:54.7±9.6点,自己価値:70.9±6.3点,環境有能性:23.0±4.9点,環境価値:28.1±3.7点であった.DQOLに関連する因子として,OSA有能性(β=0.02),FIM-M(β=0.01),介護度(β=0.08)が有意であり,調整済みR2は0.2734であった.QOL-Dに関連する因子として,FIM-C(β=0.53),MMSE(β=0.69)が有意であり,調整済みR2は0.3221であった.
【考察】
主観的QOLは作業有能性やADLの自立度,介護度が関連し,客観的QOLには認知機能に関する項目が関連していた.作業有能性やADLの自立や介護度は生活全般である活動・参加レベルを評価しており,認知機能は心身機能レベルを評価しているため,QOLによって異なる因子が関連していたと考えられる.以上のことから,認知機能障害者のQOL向上には心身機能・活動・参加の全ての改善に有効なリハ介入が望まれる.