第57回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-10] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 10

Sat. Nov 11, 2023 2:10 PM - 3:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PK-10-1] 当院における地域包括ケア病床患者の認知機能の特徴

太田 有人1, 浅井 慎也1, 山口 紀美子1, 保田 祥代2 (1.医療法人豊田会 高浜豊田病院リハビリテーション科, 2.刈谷豊田総合病院リハビリテーション科)

【はじめに】
当院は,2019年より療養病床の一部を地域包括ケア(地ケア)病床に転換し,2023年現在22床を有している.2021年の自験の先行研究において,当院の地ケア病床患者は平均年齢が80歳以上の高齢で,入院から退院にかけてFIM合計と運動項目(FIM-M)は有意な改善を示したが,認知項目(FIM-C)はなかった.この結果を踏まえ認知機能評価の見直しを行い,2022年度よりFIM-Cに加えて, HDS-R・MMSE・認知関連行動アセスメント(CBA)を実施している.また,「いきいき認知プロジェクト」として,認知カンファレンスや集団レクリエーションを開始した.認知カンファレンスは,CBAの5段階重症度に応じた対策を検討する.集団レクリエーションは,平日の午前午後(各1時間)に,患者の認知機能に合った塗り絵・計算問題やしりとり等を行っている.
【目的】当院地ケア病床患者の,認知機能の特徴を明らかにする.
【対象】
当院地ケア病床に2022年4月から10月に入退院した56名を対象とした.なお,死亡退院,眼科入院,レスパイト,状態悪化し搬送された患者は除外した.
【方法】
基本情報は年齢・疾患分類・在院日数・転帰先,ADLはFIM,認知機能はMMSE・HDS-R・CBAの評価を診療録より後方視的に抽出した.統計学的処理は,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較検討した.(有意水準5%)
【倫理的配慮】本研究は,後方視的研究のため対象者には入院時に包括同意を得ている.
【結果】
対象56名の平均年齢は81±10.3歳,疾患割合は整形疾患54%・脳血管疾患18%・循環器疾患14%・呼吸器疾患3%・その他11%,在院日数は平均49.7±15.8日,転帰先は自宅80%・老健13%・特養7%だった.FIMは,入院時合計平均67.3点(FIM-M 42.9/FIM-C 24.7点),退院時合計平均92.5点(FIM-M 66.7/FIM-C 25.8点)で,FIM合計・FIM-M・FIM-C共に有意な改善がみられた.MMSE・HDS-R・CBAは,入院時平均20/18.4/20.5点,退院時平均21.4/19.6/22.5点で,共に有意な改善があった.FIM-CとCBAの下位項目は,FIM-Cの理解・表出・記憶と,CBAは全ての下位項目(意識・感情・注意・記憶・判断・病識)に有意な改善があった.MMSE 23点以下,HDS-R 20点以下のカットオフ値以下の割合は,入院時59/52%,退院時46/46%だった.CBAの重症度は(入院時/退院時),良好14/20%・軽度27/35%・中等度22/25%・重度32/15%・最重度5/5%だった.
【考察】
当院地ケア病床患者は,年齢が80歳以上の高齢で整形疾患が5割を占め,8割が平均50日以内に自宅退院していた.運動機能は入院から退院にかけて有意な改善を示し,ADLは向上していた.一方,入院時の認知機能の特徴は,MMSEとHDS -Rのカットオフ値以下は5割で,CBA重症度は中等度以上が6割だった.退院時は,MMSEとHDS-Rのカットオフ値以下は4割で,CBA重症度は中等度以上が5割で若干の改善を認めた.また,退院時の認知機能が低下していても8割が自宅退院した.このことから,適切な退院支援を行なえば,認知機能低下者でも自宅退院が可能となることが示された.さらに,認知機能評価を組み合わせ,下位項目まで評価することで,改善が期待できる認知機能が推察された.特にCBAは,5段階の重症度を判定でき重症度に応じた対策が示されているため,カンファレンスでも有効に活用できる可能性がある.今後の課題は,「いきいき認知プロジェクト」として開始した,認知カンファレンスや集団レクリエーションが認知機能改善に与える影響を検証したい.