第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-10] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PK-10-4] 活動の質評価法(A-QOA)の臨床での活用方法と課題

綾 里穂1, 西田 征治1, 齊藤 隆一2, 坂本 千晶3, 小川 真寛4 (1.県立広島大学院, 2.山口県済生会豊浦病院, 3.県立広島大学, 4.神戸学院大学)

【はじめに】活動の質評価法(Assessment of quality of activities;A-QOA)は,認知症の人が活動を行う際の活動の質を観察から評価するツールであり,認知症の人が活動を行う際に,活動から受ける影響や効果を言語化,数値化することが出来る.これまでに「意味のある活動の特定」と「介入の成果測定」といった臨床でのA-QOAの活用方法が報告されている.しかし,未だ臨床での活用方法や課題は十分に明らかになっていない.そこで本研究では,A-QOAを臨床現場で実際に活用している作業療法士に対してインタビュー調査を行い,臨床でのA-QOAの活用方法と,課題を明らかにすることを目的とした.
【方法】研究対象者は,A-QOA認定評価者であり,A-QOAの臨床で活用した経験を学会等で報告したことがある作業療法士5名(平均30±7.2歳,認知症治療病棟・通所・介護医療院・急性期・回復期各1名)だった.彼らに対して,ウェブ会議システムを用いてA-QOAを臨床でどのように活用しているか,また,どのような課題があるかについて,認知症の事例を挙げながら語ってもらった.分析には,オープンコーディングを用いた.まず,語りを逐語化し,「活用方法」と「課題」に関する語りを抜き出した.各語りを要約してコード化し,それらを内容の類似性に従い分類した.活用方法は「評価」「介入」「成果」の枠組みに沿ってカテゴリー化し,課題は枠組みを設けずに帰納的に分析していった.これらの分析は,共著者で同意が得られるまでクラッシュ&ビルドを繰り返した.本研究は所属大学研究倫理委員会の承認を受けて実施した.
【結果】A-QOAの臨床での活用方法に関するコードが98個,課題に関するコードが20個抽出され,それらはそれぞれ10個の活用方法と6個の課題に整理された.A-QOAの臨床での活用方法について,認知症の人に対して,評価の段階では「A-QOAの得点から取り組むべき活動を特定する」や「活動の質に影響を与えている要因を明らかにする」など4個の活用方法が挙がった.介入の段階では「A-QOAの項目の得点が上がるよう介入計画を立てて作業療法場面で支援する」や「A-QOAで分かった支援方法を日頃のケアに生かす」など3個の活用方法が挙がった.成果の段階では「活動に取り組んだ成果をA-QOAの得点から確認する」や「A-QOAの結果を基に新たな活動の展開を協議する」など3個の活用方法が挙がった.活用方法では,評価,介入,成果は一方向に流れるのではなく,行きつ戻りつ双方向のプロセスを経る中でA-QOAが活用されていた.A-QOAの臨床活用の課題では,保険制度上の問題などで「第三者的に評価する状況を設定することが難しい」や,A-QOAの評価特性として「介入しながら適切に評価することができない」,「プロビット値を算出するまでに時間がかかる」など6個の課題が挙がった.
【考察】A-QOAはこれまでに報告されている「意味のある活動の特定」と「介入の成果測定」の活用方法以外にも,A-QOAの評価結果をもとに「介入計画を考える」,「日頃のケアにも反映させる」,「活動内容を展開させていく」といった活用方法が明らかになったことは,今回特筆すべきことである.なぜなら自分の思いを言語化することが難しい認知症者に対してA-QOAは作業療法場面での活動の支援方法を明示するだけでなく,日ごろの生活でよい状態で過ごすための支援方法や,未来に意味のある作業と結びつくための手がかりを提供してくれることが明らかになったからである.評価に時間がかかる課題についてはモバイル版の解析アプリの開発を検討する余地があると考える.