第57回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-10] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 10

Sat. Nov 11, 2023 2:10 PM - 3:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PK-10-6] 認知症患者へのタブレット型認知機能検査NCGG-FATの適用可能性の予備的検討

石田 敦子1, 岡橋 さやか2, 植田 郁恵2, 李 相侖2, 斎藤 民2 (1.学校法人たちばな学園 理学・作業名古屋専門学校, 2.国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)

【はじめに】近年,認知リハビリテーションの分野においてデジタル技術の活用が広がっている.その一つに,タブレット端末を用いて行う認知機能検査National Center for Geriatrics and Gerontology functional assessment tool(NCGG-FAT)がある.認知機能障害リスク等の早期発見を補助する包括的ツールとして開発されたものであるが,これを用いて健常~認知症発症後まで長期の経過を観察できれば有用と考えられる.しかし,本ツールを認知症患者に適用できるかについてはまだ明らかでない.
【目的】本研究は,認知症患者に対するNCGG-FATの適用可能性について,各課題の遂行可否や遂行中の言動を基に検討することを目的とした.
【方法】対象は,国立長寿医療研究センター脳・身体賦活リハビリテーションに参加中の65~84歳の軽度認知障害患者5名(MCI群),アルツハイマー型認知症患者10名(軽度AD群6名,中等度AD群4名)であった.ADの重症度区分はMMSE-Jで21点以上を軽度,11~20点を中等度とした.対象者には書面と口頭での研究説明を行い,同意を得た.対象者は検査者の指示のもと,iPadを用いてNCGG-FATの7課題に30分程度取り組んだ.課題の実施順は,物語の即時記憶,単語の即時記憶,注意機能(TMT-A),遂行機能(TMT-B),情報処理速度(Symbol Digit Substitution Test; SDST),単語の遅延記憶(再生・再認),物語の遅延記憶であった.評価項目は,各課題遂行の可否,遂行時の発言や行動の観察評価とした.遂行可否については,回答の正誤によらず,理解して実施できることを遂行可能と判定した.なお,本研究は当センター倫理・利益相反委員会の承認を得ている(No.1583-4).
【結果】物語の即時・遅延記憶課題については,全対象者が遂行可能であった.単語の遅延記憶の遂行可能率は,再生・再認の順にMCI群では60%・80%,軽度AD群では67%・83%,中等度AD群では0%・75%であった.ここには無回答のため不可と判定された者が含まれる.他の課題の遂行可能率は,MCI群では全て100%であったが,軽度AD群では単語の即時記憶100%,注意機能83%,遂行機能100%,情報処理速度83%,中等度AD群では単語の即時記憶75%,注意機能100%,遂行機能75%,情報処理速度75%であった.AD群においては,注意機能課題で練習課題を理解して施行できても,本番課題ではルール理解の保持困難な者や,情報処理速度課題で練習・本番ともに画面上での操作場所を誤り,追加説明を要する者がいた.
【考察】物語の記憶課題では,「わからない」を含む5選択肢から1つ選ぶと次の設問へ進める仕様であったため比較的容易に遂行できた一方,単語の遅延記憶課題では,自由記述や多数の単語群から選択する必要があり,かつ「わからない」という選択肢がなかったことが,低い遂行可能率となった要因と考えられた.遅延記憶課題においては遂行可否の判定が容易ではなかったため,今後は検査冒頭で課題を行ったこと自体の記憶と,想起内容の記憶を丁寧に区別して評価することが必要と思われた.また,AD群ではいくつかの課題で練習課題であっても遂行困難な者がいたため,練習の遂行状況のログ分析やより易しい本番課題の設定が求められる.この結果を踏まえて,認知症患者においてもより円滑に取り組めるツールとなるようアプリ改良案を設計していきたい.