[PK-11-6] 生活上での体験から高次脳機能障害に対する気づきが得られ,復職・運転再開に至った一症例
【はじめに】
若年脳卒中者にとってのゴールは社会復帰であり,復職が重要とされている.高次脳機能障害は復職の阻害因子に挙げられており,高次脳機能障害者が社会復帰する際には,自身の障害にどの程度気づいているかが重要とされる.今回,若年脳卒中者に対し,生活上での体験に基づいた自身の気づきによって高次脳機能障害に対する理解が促進され,復職・運転再開に至った症例を報告する.
【倫理的配慮】症例に対し書面にて説明を行い,了承を得た.
【症例紹介】40歳代前半男性,電気関係の会社で管理職.X日に友人宅で飲酒し帰宅後,家族と会話中に身体不調を訴え呼吸停止.家族が救命措置をとり,近医へ救急搬送.心停止後に蘇生し,心筋梗塞と脳梗塞の診断.X+35日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院.
【初回評価】12段階片麻痺グレード(12段階Grade):右上肢12-手指12-下肢12,握力:36.5kg,Mini Mental State Examination(MMSE)27点,Trail Making Test(TMT)PartA:79秒,PartB:219秒,コース立方体組み合わせテスト(Kohs)IQ79,ワーキングメモリ,処理速度,全般性注意機能の低下を認めた.Functional Independence Measure(FIM)114点.本人Hopeは運転再開と早期の復職.
【経過】
①入院時期(X+35~49日)
病棟生活では,高次脳機能障害の影響はほとんどなく「俺はどこが悪いのかわからない」と発言あり.高次脳機能障害の説明と神経心理学検査の結果をフィードバックし,退院後の生活で起こり得ることを説明した.注意機能低下に対して,計算問題や間違い探しなどの机上課題を提供.間違いを全て見つけられず,計算ミスが多く見られた.「家族と話した内容が思い出せない」「考え事をしながら炭酸飲料を買ったら無意識に振っていた」など生活場面での課題や障害に対する気づきが増えた.行動の振り返りを行い,対処を伝えた.退院1週前に主治医より本人・家族へ病状説明し,高次脳機能障害の説明と就労再開時期の目安を共有した.
②外来リハとリハ出勤時期(X+49日〜92日)
退院後は週1回の外来リハビリにて生活の様子を聴取,注意課題を中心に提供した.活動範囲が広がり,エレベーターのボタンを探しに時間がかかる,電子マネーの決済方法がわからなかったなど,新たな課題も上がったため,1つ1つ周囲へ確認を薦めた.退院 1ヶ月後に産業医との面談を実施.主治医意見書の他,本人から注意障害と記憶低下を伝えていた.
【結果】12段階Grade:右上肢12-手指12-下肢12,握力:36.5kg,MMSE:28点,TMT:PartA:58秒,PartB:209秒,Kohs:IQ79,FIM:126点.運転は机上検査・実車教習を経て運転再開となった.復職は産業医と相談の元,週2回半日のリハ出勤を再開.業務は,休職中の会議録や書類の確認・会議が中心.部下がサポートとしてついており,会議内容や業務をすぐに確認できた.本人も周囲に確認する,メモをとる習慣をとり,部下へ聞く回数は徐々に減っていった.2ヶ月目以降は,産業医と相談しながら段階的に出勤回数を増やし,週3回のフルタイム出勤までに至った.今後,週5回フルタイムへ移行予定となり,外来リハビリ終了となった.
【考察】入院当初から,自身の行動に対する失敗体験を元に適切なフィードバックを行い,障害の認識が得られた上で,社会復帰に向けたアプローチを行ったことで運転・復職に至ったと考える.
若年脳卒中者にとってのゴールは社会復帰であり,復職が重要とされている.高次脳機能障害は復職の阻害因子に挙げられており,高次脳機能障害者が社会復帰する際には,自身の障害にどの程度気づいているかが重要とされる.今回,若年脳卒中者に対し,生活上での体験に基づいた自身の気づきによって高次脳機能障害に対する理解が促進され,復職・運転再開に至った症例を報告する.
【倫理的配慮】症例に対し書面にて説明を行い,了承を得た.
【症例紹介】40歳代前半男性,電気関係の会社で管理職.X日に友人宅で飲酒し帰宅後,家族と会話中に身体不調を訴え呼吸停止.家族が救命措置をとり,近医へ救急搬送.心停止後に蘇生し,心筋梗塞と脳梗塞の診断.X+35日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院.
【初回評価】12段階片麻痺グレード(12段階Grade):右上肢12-手指12-下肢12,握力:36.5kg,Mini Mental State Examination(MMSE)27点,Trail Making Test(TMT)PartA:79秒,PartB:219秒,コース立方体組み合わせテスト(Kohs)IQ79,ワーキングメモリ,処理速度,全般性注意機能の低下を認めた.Functional Independence Measure(FIM)114点.本人Hopeは運転再開と早期の復職.
【経過】
①入院時期(X+35~49日)
病棟生活では,高次脳機能障害の影響はほとんどなく「俺はどこが悪いのかわからない」と発言あり.高次脳機能障害の説明と神経心理学検査の結果をフィードバックし,退院後の生活で起こり得ることを説明した.注意機能低下に対して,計算問題や間違い探しなどの机上課題を提供.間違いを全て見つけられず,計算ミスが多く見られた.「家族と話した内容が思い出せない」「考え事をしながら炭酸飲料を買ったら無意識に振っていた」など生活場面での課題や障害に対する気づきが増えた.行動の振り返りを行い,対処を伝えた.退院1週前に主治医より本人・家族へ病状説明し,高次脳機能障害の説明と就労再開時期の目安を共有した.
②外来リハとリハ出勤時期(X+49日〜92日)
退院後は週1回の外来リハビリにて生活の様子を聴取,注意課題を中心に提供した.活動範囲が広がり,エレベーターのボタンを探しに時間がかかる,電子マネーの決済方法がわからなかったなど,新たな課題も上がったため,1つ1つ周囲へ確認を薦めた.退院 1ヶ月後に産業医との面談を実施.主治医意見書の他,本人から注意障害と記憶低下を伝えていた.
【結果】12段階Grade:右上肢12-手指12-下肢12,握力:36.5kg,MMSE:28点,TMT:PartA:58秒,PartB:209秒,Kohs:IQ79,FIM:126点.運転は机上検査・実車教習を経て運転再開となった.復職は産業医と相談の元,週2回半日のリハ出勤を再開.業務は,休職中の会議録や書類の確認・会議が中心.部下がサポートとしてついており,会議内容や業務をすぐに確認できた.本人も周囲に確認する,メモをとる習慣をとり,部下へ聞く回数は徐々に減っていった.2ヶ月目以降は,産業医と相談しながら段階的に出勤回数を増やし,週3回のフルタイム出勤までに至った.今後,週5回フルタイムへ移行予定となり,外来リハビリ終了となった.
【考察】入院当初から,自身の行動に対する失敗体験を元に適切なフィードバックを行い,障害の認識が得られた上で,社会復帰に向けたアプローチを行ったことで運転・復職に至ったと考える.