[PK-2-1] 最重度期の認知症に対してプール活動レベルを使用した支援が落ち着いた生活に繋がった事例
【はじめに】
認知症患者に対し,音楽療法や感覚刺激療法等の本人の特徴に合わせた援助をする心理社会的アプローチが有効とされているが,重度認知症患者に対しての適応は難しく,アプローチに関する報告は少ない.今回,重度認知症患者に対して, 認知症をもつ人の活動能力の評価と作業の支援に有効であるプール活動レベル(以下PAL)を用いて,能力の強みを把握し,補助の方法,環境設定を明確にして活動を提供した.その結果,周辺症状の軽減がみられた為,以下に報告する.
【症例紹介・評価】
A氏80代女性.肺炎を呈し,約1ヶ月半の臥床期間後,療養病棟へ入院.既往歴:アルツハイマー型認知症
CD-R:3 MMSE:0点 CTSD:6点(挨拶,自己紹介で加点)FIM:運動13点・認知5点
DBD:36点 NPIーQ:重症度14点・負担度20点 観察:声掛けに対して時折「こんにちは」と挨拶等の有意味語があるが,ほとんどはジャーゴンや保続がありコミュケーションは困難だった.また普段より興奮性が高い場合は,単語での指示が入らず,「らーらー」と大きな声出しが多く,有意味語はみられなかった.その際には常に人や物を叩き,引っ張る動作があった.
PAL生活歴プロフィール:音楽を聴くのが好きであった.また中でも民謡を好んでいた.
PALチェックリスト:全面的な介助を必要としており,直接的な刺激のみ反応.また物品の使用も困難であった.観察を基に身体的感覚刺激に反応できる「反射レベル」と判定した.
【方法・介入】
期間16日間 回数:14回 時間:20分
環境: 反射レベルでは,過剰な刺激は苦痛を生じさせる可能性がある為,カーテンで仕切り,静かで人の出入りが少ない環境で実施.
介入: A氏が好んで行った音楽鑑賞(民謡)を実施.また興奮性が高い場合は,聴覚刺激が入力されていない事が多かった.しかし人を見つけると腕等を掴もうとする様子があり,視覚刺激で反応があった.その為,興奮の軽減に有効とされおり,視覚から情報を取り入れやすいスヌーズレンを実施した.
【経過】
音楽鑑賞では,A氏の反応を見ながら音量の調整や単語での声掛けを行った.普段はジャーゴン様な発言が多いが,鑑賞中は時折,歌に合わせ歌う様子が見られ,挨拶や調子を聞くと「ありがとう」や「いいですよ」等の反応が増加した.スヌーズレン開始時は,使用する物品を叩きつつ大声をあげていたが,10~20分程度で叩く様子や大声がみられなくなり,落ち着いて過す様子が増えていった.
【結果】変化点のみ記載
FIM:13・7点 CTSD:9点 NPIーQ:7点・10点DBD:24点
観察:病棟生活では,落ち着いて過ごせる時間が増加した.発熱や吸引等に興奮性が高い場合に人を引っ張る動作や叩く動作があったが,保続はなくなり,「そうですか」「いきましょう」等の意思を伝える有意味語が増加した.また物を叩く,大声をあげる等は減少しOTや看護師等のスタッフの声掛けに対して「ありがとう」と返答するようになった.
【考察】
先行研究では,重度認知症患者へのアプローチが難しいが,PALは人の活動を促進でき周辺症状に対して有効性が報告されている.今回, PALを用いた事で,落ち着いた病棟生活が過ごせるようになり,DBDおよびNPIーQの改善がみられた.本実践は 重度認知症患者のPALを用いた評価から治療の一例を示し,PALは重度認知症患者の能力の強みを生かし,周辺症状の軽減に繋がる事が示唆された.
認知症患者に対し,音楽療法や感覚刺激療法等の本人の特徴に合わせた援助をする心理社会的アプローチが有効とされているが,重度認知症患者に対しての適応は難しく,アプローチに関する報告は少ない.今回,重度認知症患者に対して, 認知症をもつ人の活動能力の評価と作業の支援に有効であるプール活動レベル(以下PAL)を用いて,能力の強みを把握し,補助の方法,環境設定を明確にして活動を提供した.その結果,周辺症状の軽減がみられた為,以下に報告する.
【症例紹介・評価】
A氏80代女性.肺炎を呈し,約1ヶ月半の臥床期間後,療養病棟へ入院.既往歴:アルツハイマー型認知症
CD-R:3 MMSE:0点 CTSD:6点(挨拶,自己紹介で加点)FIM:運動13点・認知5点
DBD:36点 NPIーQ:重症度14点・負担度20点 観察:声掛けに対して時折「こんにちは」と挨拶等の有意味語があるが,ほとんどはジャーゴンや保続がありコミュケーションは困難だった.また普段より興奮性が高い場合は,単語での指示が入らず,「らーらー」と大きな声出しが多く,有意味語はみられなかった.その際には常に人や物を叩き,引っ張る動作があった.
PAL生活歴プロフィール:音楽を聴くのが好きであった.また中でも民謡を好んでいた.
PALチェックリスト:全面的な介助を必要としており,直接的な刺激のみ反応.また物品の使用も困難であった.観察を基に身体的感覚刺激に反応できる「反射レベル」と判定した.
【方法・介入】
期間16日間 回数:14回 時間:20分
環境: 反射レベルでは,過剰な刺激は苦痛を生じさせる可能性がある為,カーテンで仕切り,静かで人の出入りが少ない環境で実施.
介入: A氏が好んで行った音楽鑑賞(民謡)を実施.また興奮性が高い場合は,聴覚刺激が入力されていない事が多かった.しかし人を見つけると腕等を掴もうとする様子があり,視覚刺激で反応があった.その為,興奮の軽減に有効とされおり,視覚から情報を取り入れやすいスヌーズレンを実施した.
【経過】
音楽鑑賞では,A氏の反応を見ながら音量の調整や単語での声掛けを行った.普段はジャーゴン様な発言が多いが,鑑賞中は時折,歌に合わせ歌う様子が見られ,挨拶や調子を聞くと「ありがとう」や「いいですよ」等の反応が増加した.スヌーズレン開始時は,使用する物品を叩きつつ大声をあげていたが,10~20分程度で叩く様子や大声がみられなくなり,落ち着いて過す様子が増えていった.
【結果】変化点のみ記載
FIM:13・7点 CTSD:9点 NPIーQ:7点・10点DBD:24点
観察:病棟生活では,落ち着いて過ごせる時間が増加した.発熱や吸引等に興奮性が高い場合に人を引っ張る動作や叩く動作があったが,保続はなくなり,「そうですか」「いきましょう」等の意思を伝える有意味語が増加した.また物を叩く,大声をあげる等は減少しOTや看護師等のスタッフの声掛けに対して「ありがとう」と返答するようになった.
【考察】
先行研究では,重度認知症患者へのアプローチが難しいが,PALは人の活動を促進でき周辺症状に対して有効性が報告されている.今回, PALを用いた事で,落ち着いた病棟生活が過ごせるようになり,DBDおよびNPIーQの改善がみられた.本実践は 重度認知症患者のPALを用いた評価から治療の一例を示し,PALは重度認知症患者の能力の強みを生かし,周辺症状の軽減に繋がる事が示唆された.