[PK-3-3] 「自分らしい生活」を送るための回復期リハビリテーション病棟における支援
【はじめに】「回復期リハビリテーション病棟のあり方」において「在宅復帰支援では,家庭内及び地域生活における楽しみや役割など,生きがいのある居場所づくりを調整・支援することが重要である.」とされている.今回,脳出血を呈し多彩な高次脳機能障害を認めた症例に対し「その人らしい生き方」に着目して退院支援を行ったため以下に報告する.
【倫理的配慮】患者の個人情報とプライバシー保護に考慮し,口頭と書面で説明を行い本人・家族から同意を得た.
【症例紹介】60歳代女性.夫と2人暮らしで家事全般を担っていた.X日,自宅にて発症し急性期病院へ救急搬送.左頭頂葉皮質下出血と診断,保存加療にて経過.X+34日,当院回復期リハビリテーション病棟へ転院.
【作業療法評価】入院時,12段階グレードは右上肢11-手指11-下肢9 と運動麻痺は軽度.全般性注意機能障害や右側の認識低下,重度感覚性失語等の多彩な高次脳機能障害を認めた.生活内で活動時の注意散漫さや右上肢の動作時の忘れ,失語症による指示理解低下が見られた.病棟では車いす全介助,排泄は終日おむつ対応,体幹抑制使用.入院時の機能的自立度評価法(以下FIM)は48点(運動項目31点,認知項目17点).
【介入の基本方針】X+72日,多職種カンファレンスにおいて「積極的な運動リハでの生活の活性化」と「病棟での安全な日常生活動作(以下ADL)の獲得」を方針として決定した.
【経過】介入では課題に集中できる環境下にて右上肢の反復的な訓練を中心に実施した.ADL面は動作指導を中心に正しい動作の定着を促した.特に食事では右手で箸の訓練を行い日常での使用頻度の拡大を図った.カンファレンスより約1ヵ月継続し,徐々に注意散漫さの改善と右側への認識の向上が見られた.食事では右手で箸を意識的に使用できる,活動時も注意が逸れずに遂行できる場面が増えた.歩行訓練等も併行して進め,病棟内では車輪付き歩行器を使用し自立し,排泄や食事,入浴などのADLに関しても病棟内で安全に行うことが可能となった.
【介入の修正】病棟内のADL拡大に伴い退院後の生活に着目し介入の修正を図った.「これからの生活をどう過ごしたいか」を聴取するため作業選択意思決定支援ソフトADOCを使用し,家事活動を継続したいと強い希望が聞かれた.聴取した内容より,掃除や洗濯を安全に行えるよう模擬動作評価,特に強い希望が聞かれた料理は調理訓練を難易度を調整し実施した.家屋調査では自宅での家事動作評価と実動作確認を家族と共に行った.退院前の家族面談でも家事を行う際の注意点を調理訓練時の様子を含め説明し,自宅内で継続できるよう段階的な支援を行った.
【結果】X+120日に最終評価を実施.12段階グレードは右上肢11-手指11-下肢11.高次脳機能は配分性の注意機能障害が残存したため,家事は作業工程を分担して行うことで活動を安全に行いことが可能となった.言語機能は聞き手側の介助が必要となるものの,錯誤が減り周囲と円滑に意思疎通を行う場面が増えた.病棟内は一本杖を使用し自立,服薬や血圧も自主的に管理し,退院前のFIMは94点(運動項目73点,認知項目21点).X+125日,自宅退院となった.
【考察】今回,患者の希望の活動を明確にし,退院後の生活に焦点を当てたリハビリへ移行し,家族に対しても十分な働きかけを図ったことで「その人らしい生き方」に向けた切れ目のない支援が可能となった.生きがいのある居場所づくりの調整・支援のために,セラピストは患者の希望する生活を患者と相互に理解し明確化した上で,家族への共有など周囲の環境へのアプローチも併行して行うことが重要であると示唆された.
【倫理的配慮】患者の個人情報とプライバシー保護に考慮し,口頭と書面で説明を行い本人・家族から同意を得た.
【症例紹介】60歳代女性.夫と2人暮らしで家事全般を担っていた.X日,自宅にて発症し急性期病院へ救急搬送.左頭頂葉皮質下出血と診断,保存加療にて経過.X+34日,当院回復期リハビリテーション病棟へ転院.
【作業療法評価】入院時,12段階グレードは右上肢11-手指11-下肢9 と運動麻痺は軽度.全般性注意機能障害や右側の認識低下,重度感覚性失語等の多彩な高次脳機能障害を認めた.生活内で活動時の注意散漫さや右上肢の動作時の忘れ,失語症による指示理解低下が見られた.病棟では車いす全介助,排泄は終日おむつ対応,体幹抑制使用.入院時の機能的自立度評価法(以下FIM)は48点(運動項目31点,認知項目17点).
【介入の基本方針】X+72日,多職種カンファレンスにおいて「積極的な運動リハでの生活の活性化」と「病棟での安全な日常生活動作(以下ADL)の獲得」を方針として決定した.
【経過】介入では課題に集中できる環境下にて右上肢の反復的な訓練を中心に実施した.ADL面は動作指導を中心に正しい動作の定着を促した.特に食事では右手で箸の訓練を行い日常での使用頻度の拡大を図った.カンファレンスより約1ヵ月継続し,徐々に注意散漫さの改善と右側への認識の向上が見られた.食事では右手で箸を意識的に使用できる,活動時も注意が逸れずに遂行できる場面が増えた.歩行訓練等も併行して進め,病棟内では車輪付き歩行器を使用し自立し,排泄や食事,入浴などのADLに関しても病棟内で安全に行うことが可能となった.
【介入の修正】病棟内のADL拡大に伴い退院後の生活に着目し介入の修正を図った.「これからの生活をどう過ごしたいか」を聴取するため作業選択意思決定支援ソフトADOCを使用し,家事活動を継続したいと強い希望が聞かれた.聴取した内容より,掃除や洗濯を安全に行えるよう模擬動作評価,特に強い希望が聞かれた料理は調理訓練を難易度を調整し実施した.家屋調査では自宅での家事動作評価と実動作確認を家族と共に行った.退院前の家族面談でも家事を行う際の注意点を調理訓練時の様子を含め説明し,自宅内で継続できるよう段階的な支援を行った.
【結果】X+120日に最終評価を実施.12段階グレードは右上肢11-手指11-下肢11.高次脳機能は配分性の注意機能障害が残存したため,家事は作業工程を分担して行うことで活動を安全に行いことが可能となった.言語機能は聞き手側の介助が必要となるものの,錯誤が減り周囲と円滑に意思疎通を行う場面が増えた.病棟内は一本杖を使用し自立,服薬や血圧も自主的に管理し,退院前のFIMは94点(運動項目73点,認知項目21点).X+125日,自宅退院となった.
【考察】今回,患者の希望の活動を明確にし,退院後の生活に焦点を当てたリハビリへ移行し,家族に対しても十分な働きかけを図ったことで「その人らしい生き方」に向けた切れ目のない支援が可能となった.生きがいのある居場所づくりの調整・支援のために,セラピストは患者の希望する生活を患者と相互に理解し明確化した上で,家族への共有など周囲の環境へのアプローチも併行して行うことが重要であると示唆された.