第57回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-4] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 4

Fri. Nov 10, 2023 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PK-4-5] 急性期病院において認知症患者の睡眠障害遷延はADL自立度改善に影響するか?

杉本 優輝1, 千田 茂1, 松本 泰子2 (1.石川県立中央病院医療技術部リハビリテーション室, 2.石川県立中央病院診療部)

【はじめに】
 睡眠障害の有病率は加齢とともに増加するが,認知症など脳器質障害を有する高齢者では睡眠障害の出現頻度が高いといわれている.認知症患者の増加に伴い,急性期病院においても身体疾患を罹患した認知症患者が増えており,入院中の昼夜逆転や夜間せん妄といった睡眠障害がみられることがある.これらの症状は本人の生活リズムの乱れを引き起こし,看護・介護のケア負担も増加する.また,急性期から早急なADL改善が求められる中で,これまで急性期における認知症患者の睡眠障害とADLに関する報告は少ない.そこで今回,急性期病院において認知症患者の睡眠障害遷延がADLの自立度改善に影響を与えているか調査したので報告する.
【方法】 
 対象は,2021年4月1日から2022年9月末日までに当院の認知症ケアチームに昼夜逆転・夜間せん妄といった睡眠障害で依頼・介入があり退院された者のうち,入院中に死亡,Covid-19等の者を除外し解析対象とした.後方視的調査研究とし,診療録から基本情報(年齢,性別,居住地,要介護認定の有無,手術の有無,診療科,在院日数, 介入期間等),臨床検査値(総蛋白,C反応性タンパク),認知症高齢者の日常生活自立度を調査した.また,介入開始時と介入終了時のADL(Barthel Index,以下BI),障害高齢者の日常生活自立度(以下,寝たきり度)を調査した.介入終了時の睡眠障害の有無から「改善群」「遷延群」の二群にわけ,上記調査項目を比較した.統計解析には,SPSSを用い,数量化データはMann-Whitney U 検定,カテゴリーデータはχ²検定,Fisherの直接確立法を実施した.有意水準は両側5%未満とした.本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施している.
【結果】
 全対象は133名,年齢81.2±8.0歳,性別(男/女)71/62名であった.そのうち108名が改善群,25名が遷延群に分類された.介入時の二群間の比較解析において,年齢,性別,要介護認定や居住地といった基本情報,臨床検査値,介入時のBI,寝たきり度,認知症高齢者の日常生活自立度に有意差はなかった.介入終了時の二群間の比較において,遷延群のBI合計得点(28.0±27.2点)は改善群(50.4±32.7)に比べ有意に低く(p=0.001),下位項目の食事(p=0.002),移乗(p=0.013), 排泄(p=0.002),移動(p=0.003), 更衣(p=0.002),排便コントロール(p=0.003), 排便コントロール(p=0.009)も有意に低かった.その他のBI下位項目,介入終了時の寝たきり度に有意差はみられなかった.
【考察】
 今回,睡眠障害は認知症ケアチームの標準的な治療やリハビリテーション介入で8割の患者に改善を認めた一方で,2割の患者に睡眠障害が遷延していた.介入時の二群間の比較で有意差は認められず,認知症患者の睡眠障害遷延はADL自立度改善の遅延に何らかの影響があると考えられた.しかし,睡眠障害が遷延するかどうかの判断は介入時の評価では困難と考えられる為,薬物治療下で睡眠障害やADLの状況を経時的におっていくことが必要と考える.また,急性期病院という制限のある中で,概日リズムを整えるための活動提供や生活リズムの構築,さらには睡眠の質を踏まえたチームアプローチにより睡眠障害やADL改善への介入の余地があるのではないかと考える.今後,作業療法での生活リズムや睡眠に配慮した介入方法を構築していきたい.なお,今回の調査では原疾患や薬物等の因子は調査しておらず,今後それらの因子を増やして検討していきたい.