第57回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-5] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 5

Fri. Nov 10, 2023 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PK-5-1] コグニバイクが軽度認知障害及び認知症患者に与える効果

大谷 吏穂, 青柳 翔太, 黒飛 陽平, 山下 裕太郎, 蓮井 誠 (JA静岡厚生連遠州病院リハビリテーション科)

【はじめに】
コグニバイク(インターリハ社製)は,パソコン画面上の認知課題とペダリング運動を同時に行うことができる二重課題(Dual Task:以下,DT)方式のエルゴメーターである.
当院では2016年から回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)の入院患者にコグニバイクを開始し,認知機能が良好な患者がコグニバイク介入を実施することで注意機能が改善する可能性があることを報告してきた(山下,2021).しかし軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:以下,MCI)及び認知症患者に対するコグニバイクの身体機能及び神経心理学的検査の効果は不明であった.
【目的】
本研究の目的は,MCI及び認知症患者に対してコグニバイクの認知予防エクササイズが身体機能,神経心理学的検査に与える効果を後ろ向きコホート研究にて検討することである.
【方法】
対象は当院回復期リハ病棟に入棟しており,臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating:以下,CDR)0.5点以上,Mini Mental State Examination(以下,MMSE)が27点以下,10m以上の歩行が可能な者を対象とした.標準的リハビリテーションに加え,コグニバイクによる認知予防エクササイズを実施した群(以下,コグニバイク群)と標準的なリハビリテーションを実施した群(以下,対照群)を後ろ向きに調査した.両群共に週6回4週間の介入を実施し,各群の評価の前後比較を行った.評価項目は,MMSE,Trail Making Test日本語版(以下,TMT-J) ,Digit Span,認知症行動障害尺度(Dementia behavior disturbance scale:以下,DBD-13),老年期うつ病尺度(Geriatric depression scale 15:以下,GDS-15),快適歩行速度,最大歩行速度,DT歩行速度,Timed Up&Go test(以下,TUG)とした.統計解析は対応のあるT検定もしくはWilcoxon singed-rank testを用いて,有意水準は5%とした.尚,本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者の内訳は,コグニバイク群38名(疾患区分:脳血管疾患17名,運動器疾患20名,廃用症候群1名,性別:男性12名,女性26名,年齢:80.7±6.9歳),対象群32名(疾患区分:脳血管疾患3名,運動器疾患28名,廃用症候群1名,性別:男性8名,女性24名,年齢:83.5±6.6歳)であった.
介入前後で有意に差を認めた項目は,両群共に快適歩行速度,最大歩行速度,DT歩行速度,TUGであった.コグニバイク群でのみ改善を認めた項目としては,MMSE(22.7±3.8→24.0±4.0点),TMT-J partA(124.5±64.4→99.1±46.2秒),DBD-13(5.5±4.6→3.9±4.5点),GDS-15(6.7±3.8→5.4±3.6点)であった.
【考察】
本研究では,標準的リハビリテーションとコグニバイクによる介入がMCI及び認知症患者に対して,身体機能に加え,認知機能,注意機能,精神機能での改善を示した.認知課題とペダリング運動により前頭前野の活性化や身体機能が向上し認知機能やDTが改善した可能性があると示唆された.