[PK-8-6] 社会的行動障害者の復職支援におけるOSA-ⅡとOPH-Ⅱに基づく相互的環境調整
【はじめに】高次脳機能障害者の復職で課題となるものに社会的行動障害がある.病識欠如や自発性低下,情動障害,対人関係の障害などが挙げられ約半数の対象者に認められている.復職には環境要因や自己の気づき等が重要になり,実用的な意味を持つ訓練が求められる.早期より就労を意識した支援が必要とされるが,自発性の低下した対象者に対して,早期から復職に有効な作業療法介入手段を検討した報告は少ない.本研究の目的は,社会的行動障害者の復職支援を通して,作業に関する自己評価・改訂版(以下OSA-Ⅱ)と作業遂行歴面接第2版(以下OPHI -Ⅱ)に基づく作業の解釈と,早期からの実践的に作業を用いた環境調整が齎す行動変容の効果を検討することにある.尚発表に際して書面にて同意を得ている.
【事例紹介】40歳代独身男性.独居.KP:妹.職業:ゲームプログラマー.趣味:ゲーム.
令和X年に泥酔でホテルに入り,意識障害の状態で発見され救急要請.右急性硬膜外血腫,外傷性くも膜下出血と診断.X +20病日当院へ入院.
【初期評価】FIM 51/126点.MMSE 27/30点.Brs(L)上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅳ.STEF (R /L)83/68.WAIS -Ⅲ:VIQ101,PIQ86,FIQ94,VC111,PO95,WM79,PS81.WMS -R言語性記憶指標66,視覚性記憶指標99,一般的記憶指標72,遅延再生指標69.BADS 109点.CAT(PASAT 2秒条件)60%.面接:無表情で反応乏しく「はい,いいえ」で返答.HOPE :早く帰りたい.終始臥床傾向.作業状態を探る為OSA -Ⅱを実施.
【経過】OSA-Ⅱは,交流技能,処理技能,習慣,個人的原因帰属で作業有能性が低下.変化を求める内容は交流技能.必要な物にはPCとゲーム.規則的なADL訓練と,PCやゲームへの活動環境を整え訓練を開始.数日はゲームに触れたが直ぐに臥床生活へ立ち戻った.生活史を知る為OPH-Ⅱを実施.簡素な返答の中,作業役割の内容で「仕事に貢献できず空白の期間が心配」と心情を語られた.訓練にゲーム制作を取り入れ定期的なプレゼンを設定.「仕事の訓練は有難い」と話されたが意欲は続かず,生活習慣は変わらなかった.そこで,協業での高齢者や初心者向けゲーム制作での実践課題を提案した.介入職員にはゲームの感想を伝えて貰った.すると翌日には感想を反映させた進捗を報告して下さるようになり,空き時間は制作に取り組まれるようになった.自ら意見を出して完成期限を目指した行動変容がみられた.
【最終評価】FIM125/126点.MMSE 30/30点.Brs(L)上肢Ⅵ手指Ⅵ下肢Ⅳ.STEF (R /L ) 100/97.WAIS -Ⅲ:VIQ128,PIQ105,FIQ120,VC126,PO108,WM117,PS124.WMS -R 言語性記憶指標95,視覚性記憶指標110,一般的記憶指標99,遅延再生指標98. BADS:109点.CAT(PASAT 2秒条件)90%.IADL自立.規則正しい生活習慣と日課の獲得.OSA-Ⅱ:交流技能と役割にやや問題.ブランクを心配された.復職へ向けた企業面談では,冗談も交えて自身の状態を伝え.退院時には笑顔で「ゲームを役立てて下さい」と語られた.
【考察】White(1959)は,環境との相互交渉による効力感を求める動機付けは学習が生起するとしている.価値を置く作業を汲み取り,その作業を通して受け手の生身の声が届く環境で実践的訓練を用いたことは,対象者の作業に意味を見出し,効力感の充足を求める能動的な行動変容へと繋がったのではないかと思われる.責任と役割を感じられる作業は日課となり,作業有能性の改善に働いた.本事例により,OSA-ⅡとOPH−Ⅱに基づき意味のある作業を理解し,早期より効果的な相互交流が図れる環境調整を施した実践的介入は,自発性の低下した社会的行動障害者の復職支援に有効な作業療法介入の一助となる可能性が示唆された.
【事例紹介】40歳代独身男性.独居.KP:妹.職業:ゲームプログラマー.趣味:ゲーム.
令和X年に泥酔でホテルに入り,意識障害の状態で発見され救急要請.右急性硬膜外血腫,外傷性くも膜下出血と診断.X +20病日当院へ入院.
【初期評価】FIM 51/126点.MMSE 27/30点.Brs(L)上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅳ.STEF (R /L)83/68.WAIS -Ⅲ:VIQ101,PIQ86,FIQ94,VC111,PO95,WM79,PS81.WMS -R言語性記憶指標66,視覚性記憶指標99,一般的記憶指標72,遅延再生指標69.BADS 109点.CAT(PASAT 2秒条件)60%.面接:無表情で反応乏しく「はい,いいえ」で返答.HOPE :早く帰りたい.終始臥床傾向.作業状態を探る為OSA -Ⅱを実施.
【経過】OSA-Ⅱは,交流技能,処理技能,習慣,個人的原因帰属で作業有能性が低下.変化を求める内容は交流技能.必要な物にはPCとゲーム.規則的なADL訓練と,PCやゲームへの活動環境を整え訓練を開始.数日はゲームに触れたが直ぐに臥床生活へ立ち戻った.生活史を知る為OPH-Ⅱを実施.簡素な返答の中,作業役割の内容で「仕事に貢献できず空白の期間が心配」と心情を語られた.訓練にゲーム制作を取り入れ定期的なプレゼンを設定.「仕事の訓練は有難い」と話されたが意欲は続かず,生活習慣は変わらなかった.そこで,協業での高齢者や初心者向けゲーム制作での実践課題を提案した.介入職員にはゲームの感想を伝えて貰った.すると翌日には感想を反映させた進捗を報告して下さるようになり,空き時間は制作に取り組まれるようになった.自ら意見を出して完成期限を目指した行動変容がみられた.
【最終評価】FIM125/126点.MMSE 30/30点.Brs(L)上肢Ⅵ手指Ⅵ下肢Ⅳ.STEF (R /L ) 100/97.WAIS -Ⅲ:VIQ128,PIQ105,FIQ120,VC126,PO108,WM117,PS124.WMS -R 言語性記憶指標95,視覚性記憶指標110,一般的記憶指標99,遅延再生指標98. BADS:109点.CAT(PASAT 2秒条件)90%.IADL自立.規則正しい生活習慣と日課の獲得.OSA-Ⅱ:交流技能と役割にやや問題.ブランクを心配された.復職へ向けた企業面談では,冗談も交えて自身の状態を伝え.退院時には笑顔で「ゲームを役立てて下さい」と語られた.
【考察】White(1959)は,環境との相互交渉による効力感を求める動機付けは学習が生起するとしている.価値を置く作業を汲み取り,その作業を通して受け手の生身の声が届く環境で実践的訓練を用いたことは,対象者の作業に意味を見出し,効力感の充足を求める能動的な行動変容へと繋がったのではないかと思われる.責任と役割を感じられる作業は日課となり,作業有能性の改善に働いた.本事例により,OSA-ⅡとOPH−Ⅱに基づき意味のある作業を理解し,早期より効果的な相互交流が図れる環境調整を施した実践的介入は,自発性の低下した社会的行動障害者の復職支援に有効な作業療法介入の一助となる可能性が示唆された.