第57回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-9] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PK-9-1] 48時間以上の人工呼吸器管理患者の認知機能に対する作業療法士・理学療法士・言語聴覚士の介入の影響

駒場 一貴1, 青木 啓一郎1, 吉川 輝2, 田代 尚範3 (1.昭和大学 保健医療学部 作業療法学科, 2.昭和大学 保健医療学部 保健医療学教育学, 3.昭和大学 保健医療学部 理学療法学科)

【はじめに】
重症患者は認知機能障害を呈し, ADLやQOL低下に影響を与える(Hopkins RO.2006).重症患者における入院期間中の早期リハビリテーションは身体機能の改善に効果を認めたが,長期的に認知機能への効果は得られなかったとの報告がある(Fuke R.2018).現状,早期リハビリテーションの介入は理学療法士の運動療法が中心であり,作業療法士や言語聴覚士の介入を検討する報告は乏しい.そこで本研究の目的は,48時間以上の人工呼吸器管理患者に対して集中治療室(ICU)や救命救急センター(CCC)入室中に理学療法士に加えて作業療法士・言語聴覚士による多職種介入が認知機能に影響するのかを検討した.
【方法】
対象は,2022年1月から2022年12月において,A病院のICU,CCCに入室し,48時間以上の人工呼吸器管理となり,認知症,脳血管疾患,精神疾患を合併している患者を除いた33例を対象とした.理学療法士単独群(PT群,N=16)と理学療法士(運動療法)に加え,作業療法士(見当識訓練・ADL訓練),言語聴覚士(嚥下・言語訓練)介入群(POST群,N=17)に分類した.調査項目は,年齢,ICU・CCC在室日数,ICU・CCC退室時のMMSE,認知障害の有無(MMSE24点以上:有群,MMSE24点未満:無群に分類),せん妄期間,リハビリテーション時間(日/分),MRC score,FSS-ICU,Barthel Index,集中治療室活動度スケールとし,カルテより後方視的に収集した.2群間の比較では,Wilcoxonの順位和検定,Fisherの正確確率検定を用い,有意水準は 0.05 とした. 倫理的配慮として当該機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した.(承認番号:第535号,研究期間の変更申請中)
【結果】
 33症例のMMSEは20.6±5.55点であった.2群間の比較では,MMSE(POST群23.3±4.41点,PT群17.8±5.3点),認知障害の有無(POST群 有:6 例 無11例,PT群 有:13例 無3例),リハビリテーション時間(POST群19.3±5.0日/分,PT群11.8±6.4日/分)において有意差を認めた(P<0.05).一方,年齢,ICU・CCC在室日数,せん妄期間,MRC score,FSS-ICU,Barthel Index,集中治療室活動度スケールには有意差を認めなかった.
【考察】
本研究では,48時間以上の人工呼吸器管理患者に対して,ICUやCCC入室中のPOST群の認知機能障害は有意に少なかった.理学療法士に加え,作業療法士・言語聴覚士の介入はリハビリテーション時間の増加を促進し,離床に加え,生活に即した介入が認知機能に影響を及ぼす可能性が考えられた.人工呼吸器管理中から,人工呼吸器離脱しICUやCCC退室時までの作業療法士・言語聴覚士を加えた集中的な多職種の介入は,認知機能低下の予防を促すことが示唆された.