[PK-9-3] 当院の認知症ケアチームにおける作業療法士の役割について
【はじめに】2016年診療報酬に認知症ケア加算が新設され,認知症ケアチームの設置が算定要件の一つとなった.しかし,2020年度の日本作業療法士協会のアンケート調査では,医療保険身体障害領域242施設のうち認知症ケアチームへの作業療法士(以下,OTR)の参加は52施設(21.5%)にとどまっている.また,厚生労働省より,認知症ケア加算の届出は急性期の大病院に多いことが報告されている.そのため,回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟において,OTRが参加している認知症ケアチームの報告は少ない.一方当院(全135床の回復期リハ病棟)では,2022年度より認知症ケアチームが設置され,OTRも参加している.そこで今回,当院における認知症ケアチームについて報告し,OTRの役割を考察する.なお,本報告は当院の倫理委員会の承認を得ている.
【当院の認知症ケアチームとOTRの役割について】医師1名,日本看護協会による認知症看護認定看護師2名,回復期リハ病棟協会による回復期リハ認定看護師1名,キャラバン・メイト連絡協議会が認定するキャラバン・メイトを取得するOTR2名で構成され,院内活動として,①認知症ケアラウンド(以下,ラウンド),②院内研修会を開催している.①ラウンドは週に一度,認知症高齢者日常生活自立度Ⅲ以上の患者を対象とし,当院独自の記録用紙を用い実施している.チームのOTRは患者の情報等を担当OTRから収集し,医師や看護師と事前情報を共有,チームで患者に直接介入し,関わり方や環境設定の看護計画等プランを検討する.実施後は担当OTRや理学療法士,言語聴覚士に情報を共有する.②院内研修会は,認知症サポーター養成講座の開催.多職種受講とし,事例を交え基礎知識や関わり方,地域支援について講義や,グループディスカッション等を実施した.さらに,リハ部内へラウンドの報告会を開催し,ラウンドの周知や認知症患者への介入について報告した.
【結果】①ラウンドでは,OTRは看護師から挙がった生活場面の問題点に対し,事前情報による個人因子や介入した際のコミュニケーション能力に応じ,関わり方や環境設定等を提案しプランに反映した.また,ラウンドの検討事項を担当OTRに伝える際は患者に対するチームの分析を伝え,認知症リハ・ケアの視点を共有した.②認知症サポーター養成講座では看護師,リハ職,社会福祉士,事務や栄養士等,61名の参加,アンケートでは「その人らしさを知ることが大切だと感じた」等,ラウンドの報告会では34名の参加,「報告会を定期的に実施して欲しい」等の感想を得た.
【考察】OTRは患者の心身機能や活動だけでなく,その人らしさといった個人因子を把握し,それらに応じた作業や関わり,環境設定の提案を得意とする.そのためラウンドでは,看護師の気が付かなかった視点を伝えることができる.一方,生活の様子は看護師が把握しやすく,双方の情報を共有し患者を分析することが,24時間その人らしく安心して入院生活を過ごす上で重要である.また,担当のOTRと情報を共有する過程は,職員教育の場となっている.研修会では,事例を通しOTRの視点を講義することで,その人らしさに焦点を当てたリハ・ケアの重要性を多職種に伝えることができた.山上らは認知症に配慮した回復期リハ・ケアを提供することで,認知症があってもFunction Independence Measureは改善し,軽度であれば認知症なし者と同等の効果が得られる可能性を示唆している.回復期リハ病棟にてOTRが認知症ケアチームに参加することは,患者の生活の質の向上に貢献できると考える.今後は研修会やラウンドの報告を定期的に実施し,院内の認知症ケアの啓発を図っていきたい.
【当院の認知症ケアチームとOTRの役割について】医師1名,日本看護協会による認知症看護認定看護師2名,回復期リハ病棟協会による回復期リハ認定看護師1名,キャラバン・メイト連絡協議会が認定するキャラバン・メイトを取得するOTR2名で構成され,院内活動として,①認知症ケアラウンド(以下,ラウンド),②院内研修会を開催している.①ラウンドは週に一度,認知症高齢者日常生活自立度Ⅲ以上の患者を対象とし,当院独自の記録用紙を用い実施している.チームのOTRは患者の情報等を担当OTRから収集し,医師や看護師と事前情報を共有,チームで患者に直接介入し,関わり方や環境設定の看護計画等プランを検討する.実施後は担当OTRや理学療法士,言語聴覚士に情報を共有する.②院内研修会は,認知症サポーター養成講座の開催.多職種受講とし,事例を交え基礎知識や関わり方,地域支援について講義や,グループディスカッション等を実施した.さらに,リハ部内へラウンドの報告会を開催し,ラウンドの周知や認知症患者への介入について報告した.
【結果】①ラウンドでは,OTRは看護師から挙がった生活場面の問題点に対し,事前情報による個人因子や介入した際のコミュニケーション能力に応じ,関わり方や環境設定等を提案しプランに反映した.また,ラウンドの検討事項を担当OTRに伝える際は患者に対するチームの分析を伝え,認知症リハ・ケアの視点を共有した.②認知症サポーター養成講座では看護師,リハ職,社会福祉士,事務や栄養士等,61名の参加,アンケートでは「その人らしさを知ることが大切だと感じた」等,ラウンドの報告会では34名の参加,「報告会を定期的に実施して欲しい」等の感想を得た.
【考察】OTRは患者の心身機能や活動だけでなく,その人らしさといった個人因子を把握し,それらに応じた作業や関わり,環境設定の提案を得意とする.そのためラウンドでは,看護師の気が付かなかった視点を伝えることができる.一方,生活の様子は看護師が把握しやすく,双方の情報を共有し患者を分析することが,24時間その人らしく安心して入院生活を過ごす上で重要である.また,担当のOTRと情報を共有する過程は,職員教育の場となっている.研修会では,事例を通しOTRの視点を講義することで,その人らしさに焦点を当てたリハ・ケアの重要性を多職種に伝えることができた.山上らは認知症に配慮した回復期リハ・ケアを提供することで,認知症があってもFunction Independence Measureは改善し,軽度であれば認知症なし者と同等の効果が得られる可能性を示唆している.回復期リハ病棟にてOTRが認知症ケアチームに参加することは,患者の生活の質の向上に貢献できると考える.今後は研修会やラウンドの報告を定期的に実施し,院内の認知症ケアの啓発を図っていきたい.